【連載小説】第21話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』
いつも気楽な三人組
今日も今日とて仲がいい
勅① 郷の村
三人集えば風も緩み
相槌打って言の葉巡る
幻想と現実が交わる祈りと魂の叙事詩
二日後、その日は朝からどんよりとした空模様で巳の刻には雨が降り出した。
吾作は雨に濡れるのを嫌い早々に畑仕事を終えて自宅に帰った。
することもないので、また獨酒をひっかけるつもりでウキウキして鼻唄を口ずさんでいた。
すると吾作の家の前で村人が三人、井戸端会議をして待っていたので首を捻る。
「おう。吾作、帰ったけ」
声をかけてきたのは留蔵夫婦である。
留蔵と女房のヨネ、そして平吉がいた。
「おう」
返事をする吾作。
「なんね? どうした? 留も平吉も」
「んだば、あれ見ろ、あれ」
と、平吉が指差した方を見ると中門造りの平吉の家の厩の柵に二頭の馬とその手綱が引っ掛けてある。
なかなか目にすることのない馬で立派な鞍が備え付けてあった。
「あらぁ何だべ?
ずいぶんと大きな馬っ子だなぁ。
どこから持ってきた? 平吉」
「なぁに云っとるだか。
あれはオラのでなくて乗ってきたんだ。お侍が」
「お侍? 武士?」
「んだ」
留蔵が吾作に尋ねる。
「吾作よぉ。
お前、最近はチョウマさんとこよく行くだろ?」
「んだね。よくでもねぇけど」
持っていた農具をほっぽり出して井戸端会議に参加する吾作。
「それとお侍が何か? どしたの?」
「いやぁ。今しがたお侍が二人訪ねてきて、チョウマさんって知っとるケって」
「チョウマさん?」
「んだ。
それで何処にいるって、尋ねてきたんよ。
だから村外れの森の奥の川の畔の家にいますよって」
「そしたら馬で行こうってするから。
いやぁ、あの道は馬では無理だぁって。
山道だからって云って。
そしたら預かってくれないかって、金子を渡されて置いてったの」
「へぇ。どんな人?」
「ん。お侍の恰好してたけど。
訊いたら都の役人だって」
「へぇ。都? どの辺の?」
「アホぉ!
都つったら帝さまのおわします帝都に決まってるべさ」
「どへぇ! 帝さまぁ?」
「んだ。
んで、チョウマさんに何のご用って、訊いたら『ちょっとな』ってそのまま行っちまったよ」
そこまで吾作は興味津々で、留蔵と平吉の話を聞いていた。小雨が降り続くなか三人の言の葉はなおも綴る。
防人たちに起こった不穏な出来事。
だがその報せもこの郷には届いていなかった。
