【連載小説】第20話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』
※暴力的描写を含みます。
心身の状態に留意してお読み下さい。
春分のお祭りに 悲劇が起きた
血に塗れたその手は何処の者か
東方諸国④ 宵の惨劇
百人隊長は一報を受けて
ご遺族に哀悼を捧げる
幻想と現実が交わる祈りと魂の叙事詩
銃剣の先の刃は容赦なく二人の防人の身体を串刺しにした。
確認するまでもなく滅多刺しの二人の生命が絶えて、ゆっくりとそれらは引き抜かれていく。
崩れ落ちる防人たち。
大男の足元に倒れ込んだ防人も同様である。
何もないように見える闇の空間から銃剣を構えた黒い鎧兜の兵たちが姿を現した。
先だっての海の向こうからの侵入者たちである。
詰所の前に現れた士官風の大男は防人の遺体をつまみ上げるとヒョイッと投げ棄てた。
まるでゴミのように。
そのまま黒い兵たちに命令する。
「あの出入り口では吾輩の身体は通れない。中を家探ししろ」
兵たちは素直に従った。
「書状や文書は捨て置け。
どうせ吾らに読めるものでもない。
地図を探せ。武具は要らぬ。
火薬はいちおう持って行く。
あと金目のものだ。
身元が知れるものは捨て置け」
家探しを始める兵たち。
夜はだいぶ更けていた。他の防人に気づかれることなく、異国の兵たちは任務を遂行した。
今頃は、山倉が云ってたように城下の祭りも佳境を迎えているだろう。
だが、この夜の惨劇が市中に知れるのは翌日以降――そしてその頃には異国の兵たちは行方を晦ませていた。
お祭り騒ぎの後に残るのは、意気消沈と不安の影。それは後々まで語り継がれる話しとなった。
百人隊長、南波貢に一報が入ったのはその日の朝早くである。国境の警備にあたる彼の下へ、遣いの者が駆け込んだ。
南波は職掌の報告を済ませて現場に赴き、それぞれの遺体を部下とともに確認して、上司にことの次第を注進した。
どうなるかは、いずれお沙汰もあろうというもの。
全て為すべきを終え屋敷に戻った頃には、既に日は暮れ、月は夜空にあったが、その姿は雲間に隠れてしまった。
風は冷たく湿り、馥郁たる春のにおいというには翳り憂いを帯びていた。
