私の鬱を救った「レンタルぶさいく」への取材から見えた生き方|文学フリマインタビュー
この記事は、文学フリマに参加する人たちのためのインタビュー。
今回参加いただいたのは、やまがみ さんです!
グループ名:編集ライター養成講座50期有志
作者名:やまがみ ひろみ
近刊本:「その漢、レンタルぶさいくにつき」(ノンフィクション)
「締め切り間際」(アンソロジー)
参加イベント・ブース:文学フリマ東京41・K-85〜86
HPなど:
【カタログ】
「その漢、『レンタルぶさいく』につき」
https://c.bunfree.net/p/tokyo41/55472
「締め切り間際」
https://c.bunfree.net/c/tokyo41/1F/K/85
【やまがみ note】
https://note.com/h_yamagami/n/n3611c465137f
どんな本を出されているんでしょうか?
まりはな:グループ名と作者名を教えていただけますか?
やまがみ:「編集ライター養成講座50期有志」というグループ名です。これは、「編集ライター養成講座」の同期で作った集まりです。みんなで作ったアンソロジーと、個人の制作、両方を頒布予定です。
まりはな:今回出された本は、どのような内容でしょうか?
やまがみ:私が書いたのは『その漢、「レンタルぶさいく」につき』という本です。
「レンタルぶさいく」という職業をされている、篠原塁さんという方に取材をして、一冊のノンフィクションにしました。
この方は「レンタルぶさいく」と名乗って、自分を1回3時間3万円で貸し出しているんです。
興味を持ったきっかけは、2年くらい前です。
その頃私は、出産や育児、仕事が重なり体調を崩して、鬱状態で布団に寝たきりになっていました。その時に、YouTubeで「レンタルぶさいく」の動画が流れてきたんです。
篠原さんも、人生でいっぱい挫折を経験されている方なんですよ。
ずっと夢だった芸人を挫折して、「レンタルぶさいく」を始めた。最初はバズって依頼がすごくあったんですけど、コロナになって依頼が激減して…最終的には、労働力だけを目的にした、長距離の布団運びをさせられて、挫折してしまった。
その後は、日本から距離を置くために、フィリピンで就職したんですけど、月収10万円で残業も200時間くらいあって…本当にひどい環境でボロボロになって働いていたんです。
そこで、芸人仲間たちが、篠原さんを現地まで助けに行った。
私が一番最初に見たのが、その救出の様子を映したYouTube動画だったんです。笑ったけど、涙も出た。感情がよみがえった感じです。それで、篠原さんに興味を持つようになったんです。
実際に、お金を払ってレンタルしてみたら、考え方が自分と真逆だったので、惹きつけられました。私は人目を気にしてしまったり、小さいことで悩んでしまうんですけど、篠原さんは一切人目を気にしないし、世間体にもとらわれない。とにかく堂々としている。
自分が「ブサイクに生まれてよかった。俺が一番いい。」と言い切っていて、自信満々なんです。
なぜそんな自信満々なのか、どうして「レンタルぶさいく」になったのか。
そういうことを取材して、2万字、40ページの本にしています。

まりはな:興味を持ったところから、詳しく取材したいと思ったのはどうしてですか?
やまがみ:通っていた「編集ライター講座」の卒業制作で、誰でも好きな人に取材していいというのがあって。
一番最初に、篠原さんが浮かんできました。
私は30代半ばなんですけど、最近20代の若い方と話していても、「自分に自信がない」という人が多いなと思っていて。素敵だし、頑張って生きているのに、自信がないという人が、すごく多いんです。
篠原さんは色んな挫折を経験しているし、自分のことをブサイクと言っているのに、堂々としていて、自信満々。
こういう人がいるということを皆さんに知ってほしいなと思って。篠原さんの生き方や考え方が、ちょっとでも生きやすくなるための、ヒントになったりするんじゃないかなって。
結局、取材して6000字の卒業制作を書いたんですけど、取材のボリュームがかなりあったので、全部載せられなくて。それで、書籍にしたいなと思って今回書きました。
まりはな:実際取材してみてどうでしたか?
やまがみ:すごく面白かったです。
取材の録音も、何度聞き返しても元気をもらえるし、勇気づけられるんです。
常識を全て覆されるというか。
いい会社に就職して、見た目もよくて、SNS映えするような、人から羨ましがられる生き方が幸せだ、と思っている人が多いと思うんですけど、それを全部覆してくるんです。
「レンタルぶさいく」の場合は、「自分の弱みを出す」ことがコンテンツになっている。ぶさいくを名乗るのもそうですし、芸人に挫折したこと、フィリピンに就職してうまくいかなかったこと、自分の弱みもすべて出した上で、だからこそ仲間に愛されているし、面白いとファンになる人たちがいるんです。
結局、自分にとって何が幸せかを見つめて、軸をもって生きること。ありのままの自分を出して自信を持って生きていくこと。
それが、大事なんだなと思いました。
まりはな:どんな方に読んで欲しいですか?
やまがみ:自分を好きになれないとか、周りに自分を出せないと思っている人です。
実際に、「レンタルぶさいく」の依頼者は、若い女性が多いらしくて、友達や周りの人に「本当の自分を出せない」と思っている人が、本音とか悩みを言いに来るらしいんです。
まりはな:グループで出される本についても教えてください。
やまがみ:「締め切り間際」というアンソロジーを8人で出します。
「編集ライター養成講座」を卒業する時に6000字の取材ルポの課題があって、その「締め切り間際の23時」にみんなが何をしていたかをエッセイにしてまとめました。
離婚の危機、失恋、これがきっかけで編集者になる夢がかなった人、突発性難聴になったり足がつっちゃったり…
「締め切り」を通じて、いろんな人の人生の物語を書いているアンソロジーです。こちらもかなり読みごたえがあると思います!
あなたにとって書くこととは?
まりはな:やまがみさんにとって書くことってどんなことですか?
やまがみ:自分のことより、人のことを書く方が面白いなと思っています。
書くことで取材対象の方の考え方が自分に浸透してくるというか、別の人生を生きられることが醍醐味です。
まりはな:それは話すことではなくて、書くことで別の人生を生きられるんですか?
やまがみ:話すと一回で終わるし、言葉が全部消えていくんです。
でも書くときは、最初に書いて、それを何十回とか書き直していくうちに、自分の中で理解や解釈が深まってくる。だから、話すよりも書く方がより深まる感じがします。
人の人生を追体験させてもらえている。
誰にでも人生の物語があるし、普通に話しているだけでも面白いのに、取材ってなると合法的に話を深堀させてもらえるのが嬉しいです。話しているうちに、いつもリスペクトの気持ちがわいてきます。
まりはな:ライターでどういうことを書きたいですか?
やまがみ:取材が好きなので取材記事を書きたいです。テーマでいくと、自己肯定感とか、いかに生きていくか。どうやったら幸せに生きられるか、みたいなところが、うっすらテーマとしてあります。この「レンタルぶさいく」もそうですね。
アルバイトで取材ライティングをしているんですけど、もっとたくさん書いて、もっと深くもっと伝わる文章を書きたいので、みっちり修行したいです。
まりはな:ライターを目指したきっかけは?
やまがみ:ずっと文章を書く仕事がしたい、と思っていたんです。10年とか20年とかレベルで思っていたんですけど、怖かった。自分にはできないかもとか、本気を出して取り組んでもダメだった時にもう立ち直れないという気持ちがあったので、挑戦ができなかったんです。サラリーマンとしていい会社で働いているみたいな状況に甘んじていました。
でも身近な人が亡くなってしまったりとか、自分が出産で体調が悪くなって今の会社で働けなくなったりとか、色んなことが重なって、もうやらざるを得ない、挑戦からもう逃げないでやるしかない、という気持ちになって。絶対に仕事にしたい、という気持ちでライターを目指しました。
イベントへの意気込みをお願いします!
まりはな:文学フリマの魅力は?
やまがみ:前回の文学フリマはお客さんとして参加しました。下調べせずに行って、面白そうな本を何冊か買いました。無名人インタビューの本も、そこで初めて知りましたね。
文フリならではの、偶然の出会いがいいですよね。普段興味がないジャンル、ラッパーの方の人生とか、おじさんがカブで一人日本一周した話とか…普段出会えない偶然の出会いがあって、書いてる人ともお話ができたりして。
世界が広がる感じがします。いろんな世界があの空間に凝縮されているんだなと思うと、めちゃくちゃ楽しいです。
手売りならではの魅力がやっぱりあるんですよね。作った人と喋れるから熱意を感じることもできますし。今回、自分で作った本を自分で売るというのは、原始的な感じで、とても楽しみです。
まりはな:初めての文学フリマ出店への意気込みは?
やまがみ:現状できる限り最高のものを仕上げて持っていきたいですし、それを手に取ってもらえたら嬉しいです。あとは単純にお祭りとして楽しみにしていて。いろんな人と話しできたらいいなと思っています。
まりはな:最後に読者へのメッセージをお願いします。
やまがみ:無名人インタビューの、「人は誰でも面白い」というテーマに共感しています。本当に今日はありがとうございました。
インタビューを終えて
レンタルぶさいくの篠原さんをたくさんの方に知ってほしい!という、やまがみさんの強い思いを感じるインタビューでした。篠原さんのことは全く知らなかったのですが、インタビューをしていく中でかっこいい方だと思いました。
やまがみさんは、取材内容を書くことで、その方の人生を追体験できるとお話しされていました。それが、書く面白さだと。書くことは、考えて、選んで、読み返して、直して、とたくさんの過程が含まれる、時間と手間のかかる行為。だからこそ、取材した方の人生を追体験できる程の力が生まれるんだろうなぁ、と思います。
私自身、あとがきを書いていると聞いておけばよかった…と思うことが多々あるのですが(未熟)、それも書くからこそ生まれる後悔なのだと思います。書くまでの過程が、話している時には気付けなかったことを思いつかせてくれるような気がします。それが、書く力。とかっこよくまとめたいところですが、書かずとも、インタビュー中に聞きたいことを聞ける脳の思考回路に成長していきたいです。
やまがみさんにとって文学フリマは、様々な世界が凝縮されている場所。素敵なキャッチフレーズ…!聞いただけでワクワクします。いよいよ今月、文学フリマ東京41開催です!!
【インタビュー・あとがき:まりはな】
制作:栗林康弘・qbc(無名人インタビュー主催・作家)
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