塀の中から届く言葉——現役長期受刑者5名の声を集めたアンソロジー『ねこの森』編集長に聞く|文学フリマインタビュー
この記事は、文学フリマに参加する人たちのためのインタビュー。
今回参加いただいたのは エイドリアン さんです!
ブース名:ねこの森
作者名:エイドリアン
近刊本:『受刑者アンソロジー』
参加イベント・ブース:文学フリマ東京41・し-91〜92
文学フリマカタログ:https://c.bunfree.net/c/tokyo41/4F/%E3%81%97/91
Webサイトなど:
どんな本を出されているんでしょうか?
qbc:ブース名と作者の名前を教えてください。
エイドリアン:ブース名はねこの森です。書いてる人の名前は本には書いてはいないんですけど、現役受刑者5名に寄稿をお願いしました。
qbc:どんな内容の本を出されるんですか?
エイドリアン:現役長期受刑者5名による手記、エッセイ、短歌、俳句、イラストなどを集めたアンソロジー本となります。それぞれ5名の受刑者の方々からは手紙のやり取りで原稿をいただきました。
文学フリマというものに出るので作品を描いてほしいとお願いをして、獄中生活で今考えていることだったり、刑務作業だったり、迷惑をかけた方に対する想いなんかを書いていただきました。
qbc:おお。もうちょっと具体的には、どんな感じの?
エイドリアン:それぞれ5人とも長期受刑者なんですね。
罪名は私、聞いてないんですけれども、長期や無期の方がほとんどです。ということは凶悪犯罪をおかしたんだろうな、と思います。私はそんな受刑者の人達って、塀の中で何やって過ごしてるんだろうと思っていたので、どんな作業をされてるのか、どんな生活をされてるのか、そして一番興味があったのは、本を読んでらっしゃるのかをきいてみました。
文学フリマなので、やっぱり文学でどう変わってらっしゃったのかとかっていうのは一番聞きたかったんですね。それは5名全員に聞いてます。好きな作家さんは誰なのか、どの作品に影響を受けて、どんな言葉に勇気づけられたのかとか。
qbc:刑務所に入られて何年ぐらいの方とかっていうデータはあるんですか。
エイドリアン:私が寄稿をお願いした5名はたまたま無期懲役、長期でした。それは皆さん原稿に書いてきてくれてまして、長いと、もう30年以上。短くて19年ですね。
qbc:実際にそういう文章とか、内面に触れてみてどうでした?
エイドリアン:やり取りをさせてもらって、最初の頃はみんなちょっとお利口さんな文章を書かれてきたんです。手紙って検閲があるので、それを意識してなのか、私との信頼関係がまだそんなにできてない頃だったからなのか分からないんですが、結構皆さん真面目に刑務作業をして、特に不満もないですよ、みたいな感じで書いてきたんです。
でも私はこれ絶対違うって思ったので、これ面白くないんでって言って返したんですね。(笑)本音を聞きたいんです、と。どんなところに不満があったり、どういう想いで今刑務所に入ってらっしゃるのか、そして、どういう贖罪の気持ちを持ちながら生きてらっしゃるのか。そういうところを聞きたかった。
私としては、やはり印刷代とかかかるじゃないですか。私は遊びでやってるわけじゃないので、受刑者に対しての興味本位だけでもやってるわけでもないので、お願いだから本当のことを書いてほしいと。それで、何回か書き直していただきましたね。5人全員に。
qbc:そもそもどうやってコンタクトがとれたんですか?
エイドリアン:実は受刑者支援団体っていうのが何個かあるんですが、文通や本の差し入れをしているボランティア団体さんに間に入っていただき、コンタクトをとりました。
SNSで受刑者の書いたものを定期的にあげてらっしゃる団体さんで、プリズンライターズといいます。ほんにかえるプロジェクトという団体さんの中のボランティアさんが定期的にSNSで発信していて、受刑者の方々の作品が読めるんですね。もちろん名前とかはなしで、番号で書いてあるだけなんです。それのファンというか、私は結構読むのが好きで、何十名かずっと追ってたんですね。2年ぐらい前から。その中から私がこの人の文章好きだな、と選ばせていただいたって感じです。
qbc:そもそも興味を持ったきっかけみたいなのってあったんですか?
エイドリアン:もともと私、20代の頃に犯罪にあってて犯罪被害者なんですね。プラス犯罪被害者でありながら、少年院みたいな所でも勤めてたことがあって。それで犯罪心理みたいな所に興味がもともとあった。若い頃から犯罪を犯してしまうのはどうしてなんだろうかというところから始まってて。
そして、刑務所って、更生施設でもあると思ってるんですが、そこでちゃんと罪を償って、そして社会に出て行くっていう大事なところだと思っているんですね。でも、日本の刑務所って再犯率が5割なんですよ。半分がまた戻るわけですよね。それを考えた時に、どうしてなんだろうというのを考えるきっかけを作れたらな、と思ってました。自分もまだまだ勉強中ですが。
qbc:今このタイミングでっていう意味ではどういうきっかけがあったんですか?
エイドリアン:今年3回目が開催された刑務所に入ってらっしゃる方の受刑者の方の作品を1ヶ月間、刑務所アート展というものを今年観に行きましてね。東京へ。アートギャラリーみたいな感じでやってらっしゃる団体があるんですね。受刑者の方の、やっぱり同じようにエッセイだとか詩だとか短歌とか絵画、イラスト、そういうところにも行ってて。
その中に、受刑者からの願いを書いた手紙を展示してました。自分の作品を発表する場が欲しいっていう声が多かったんですよ。でも基本的に塀の中にいらっしゃる方はそれができない。発表できる場をちょっと設けないといけない時に、文学フリマとはすごく親和性が高いんじゃないかと思ったのがこの文学フリマのタイミングとあいました。
私がその場をもうけようじゃないの、と。
qbc:どの辺に親和性を感じたんでしょう?
エイドリアン:まず、受刑者の方って、本をものすごく読んでる人が多いっていうのが分かったんです。何冊ぐらい読んでらっしゃるか。実は最低でも2000冊くらい読まれているんですよ。
qbc:すごい。図書館があるんですか?
エイドリアン:図書館はないみたいです。貸し出しの菅本は各刑務所にあるようです。受刑者は少ない刑務作業の報奨金で自分で買う(差し入れしてもらう)本を送ってもらうしかないんですけど、読めば読むほど多分文章力がついてるのか分からないんですけど、皆さん、すごい上手ですね、文章が。嫉妬するほどうまいです。
qbc:今回、本を作ってみてどんな気持ちになりましたか?
エイドリアン:まずですね、今年の夏ってすごく暑かったじゃないですか。私知らなかったんですけど、全国の刑務所って全然エアコンないんですって。全国でもう40℃近い災害級の暑さだったわけじゃないですか。今年の夏。
その中で相当大変だよな、考え事もできなくないかな?このエアコンのない状態は、受刑者にとってもしんどいし、反省するような時間も取れないし、人権的にどうなのかなって思ったんですね。
どんな悪いことをした人であっても、最低限の人権っていうのは私はあると思ってます。
実際今回作品の中でもやっぱりちょっと書いてあって、暑いときは暑い。で、冬は寒いと。暖房なしでもうほとんど防寒着もないんですって。
これはちょっと酷いなというところで、ちょっと伝えたいなあと思ってたっていうのが、今回文学フリマに出たきっかけかもしれないですね。受刑者が置かれている現状をもっと塀の外の人も考える時じゃないのかなぁ、と。
これまではどんな活動をされていたのですか?
qbc:これまでどんな本を出されていたんですか?
エイドリアン:前は一冊目、二冊目って二回出してるんですけど、一冊目は沖縄の食に関する同人誌を原稿を寄稿してもらって出してました。あまり悩まないで見れるような本ですね。
qbc:寄稿いただいた方たちってどのような人たちなんですか?
エイドリアン:不思議なご縁なんですけど、全部当時のツイッターですね。一番最初、5年前に出したんですけど、ツイッターで文学フリマに出たいって呟きをしたんですよ。それをたまたま見てた人が、沖縄の食っていうテーマも何も決まってない時に、自分もちょっと出てみたいです、協力しますよって集まってくれて。全然見知らぬ人、フォロワーさんでもない人だったりするんですよ。仲間八人で最初作りました。
qbc:二冊目はどんな本だったんですか?
エイドリアン:二冊目は沖縄の本繋がりから派生して、ほとんどメンバー同じなんですけども、ガラスの仮面っていう漫画をいじってみたっていう同人誌なんです。ご存知の通り、本家のガラスの仮面、はまだ完結してなくて、美内すずえ先生はご健在なんですけど、49巻からもう12年経っちゃってて。(笑)
qbc:紅天女が描けないっていう噂ですよね。
エイドリアン:そうなんです。美内先生自身でハードル上げすぎて。(笑)
私なんかは、小学生の頃に読んでるわけですよ、ガラスの仮面。北島マヤとかあゆみさんどうなるんだろうって追いかけてきて、もうこっちとしてはいつ何があってもおかしくないぐらいの年齢になってきちゃってるから、もうこれは自分たちで完結を書こうみたいになったんです。実際、先生はご主人の介護が大変らしくて。ツィッターもとまってるし。
スタジオも見学に行ったんですよ、私。東京都の三鷹にレストランがあって、二階が先生の書いてる事務所なんです。そこまで行って確かめて、多分先生悩んでらっしゃるんだなと。
先生って単行本にする時と週刊誌に出した時の話、全然違うんですよ。書き下ろしにしちゃってるっていうか。それで辻褄合わなくなるじゃないですか。完璧主義だから面白いものか、思いすぎて書けないのかちょっとよくわかんないんですけど。じゃあ自分たちで完結決めようとか、あゆみさんとマヤは実はユリだったんだみたいな関係だったんだよとか、そういうのを書いたみたいな感じですね。
qbc:可能性は一個だけですか?いくつかパターンを出してるんですか?
エイドリアン:一応私ともう一人が可能性を出してて、ほかは演劇論から見てみるとか、アニメの観点から、名場面イラスト集とかもあります。(笑)イラストとエッセイ、小説、評論みたいな感じですね。
イベントへの意気込みをお願いします!
qbc:今回の文学フリマ参加への意気込みをお教えてください。
エイドリアン:無名中の無名で、実は一冊目も二冊目もそんなに売れなかったんですよ。(笑)残念ながら。私のブース、暇な時間が結構多くて、いつも両隣がすごい列作ってるのに、うちの前は誰もいないなぁみたいな地獄の時間で。(笑)なので、私はもう立ち読みでも何でもいいし、冷やかしでもいいから皆さん是非立ち寄ってくださいみたいな意気込みです。(笑)
このインタビューにも応募したのは、私が本当に広告とか広報とかがすごい下手くそなので。基本、そんな友達も多くないし、文学フリマで人間関係をすごく広げるタイプでもないし、でも、苦手だからと逃げていたら売れないんですと思ったんです。
今回は四ヶ月もすごい暑い中、書いてくださった受刑者の方々に、私はその努力に報いなければ!と思ったんです。この本はなにがなんでも読んでもらわないとダメだと思った。読んでもらわないと始まらないので、そのためには、私はバンバン宣伝していくよというスタンスです。なので、本当に立ち読みでももうなんでもいいから、うちのブースに寄ってください。感想が欲しいんです、私は。
qbc:文学フリマ自体の魅力はどういう風に思われてますか?
エイドリアン:どなたかもインタビューでお話されていたんですけれども、やっぱり自由。文学だと思うものは何でも売っていいっていうのはなかなかないので。私は一番最初は文学フリマにはお客さんとしてずっと行ってたんですけど、石を売ってる人とかいたんですよ、河原の。なんてことない普通の石を結構な値段で売ってたりとかして、面白いなあと思ったんですね。年齢とかもバラバラだったし、ご高齢者の方の短歌の会みたいな所もあったり。何でもありだなって。エログロもオッケーじゃないですか、文学フリマは多分。普通の文学イベントや古本市やZINEフェスティバルみたいな所はダメなところも多いので。ちょっときわどいのも。子供たちが来るような場所だったりするわけですから、ダメな理由はわかります。政治的なもの、宗教に関するものはダメですよとか、そういうのが最近ちょっと多くなったので、そういうところに出店できない人にとっては、やっぱり自由。
自分も今回はやっぱりスレスレだと思ってるというか、他のイベントだったら受刑者って引っかかる可能性あるので。文学フリマだったらまあ基本大丈夫だろうと。魅力はそこだし。
あとはですね、文学フリマからやっぱり賞を取る人が多いなあって思ってるんです。直木賞芥川賞を取ってる方もいらっしゃる。他の著名な賞があると思うんですけど、文学フリマから出てきてる人って本当に多いし、それってすごい可能性を感じるんです、私。
例えば、今回の私の出した受刑者アンソロジーの中から、ちょっと抜群にうまい方が一人いらっしゃるんですよ。商業出版社からお声がかかったという方なんですが、います。私、塀の中から賞が出る人が誕生したら面白いよねって思ってるんです。可能性っていうか希望だよねって思って。なので、広がりっていうのが文学フリマにはあるのが魅力だと思います。
qbc:最後に読者へのメッセージをお願いします。
エイドリアン:まずは五人がどんな思いで長期刑務所受刑者として刑期を務めているか知って欲しい。受刑者の人権になるとちょっと堅苦しいんですけど、いわゆる刑務所に入ってる受刑者は自業自得で、不自由な思いは仕方ないと思う人が多いとおもいます。私も以前はそうでしたから。懲役なので懲らしめてやろうというか懲らしめは当たり前であって、じゃあ果たして本当にそうなのか。3食ついて、雨露しのげる場所がありだけありがたいと思えなのか。食事は満足に食べられない。普段の刑務所の生活全てに厳しい規則があって、それって本当に更生に繋がるんですかね?っていうところを考えるきっかけになったらなと思ってます。
受刑者の方々、それぞれやっぱり好きな作家さんと影響を受けた本っていうのは書いてもらってるので、もしかしたら「ああ、同じ」ってなるかもしれないし、今読んでるんだってなるかもしれないし。文学の力っていうのを考えるきっかけにしてもらったらなあと思います。
インタビューを終えて
世の中面白い人いるんだなっと。
インタビュー担当・制作:栗林康弘・qbc(無名人インタビュー主催・作家)
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