大学院に戻るかもヴィーガンになるかも決められない人
むかしむかし、ある街に、あかりという名の母親が住んでいました。あかりは愛する家族と過ごす日々に幸せを感じながらも、心に大きな葛藤を抱えていました。
ある日、あかりは公園のベンチで一人、思いを巡らせていました。そこへ、勇気(ゆうき)という老人が隣に座りました。 「あなたの心には、二つの灯火(ともしび)が見えますな。一つは暖かく、もう一つは熱い。何に心を悩ませておられるのですか?」
あかりは驚きましたが、正直に打ち明けました。 「私は、今のまま仕事と子育てに励む『普通の母親』でいるべきか、もう一つの道に進むべきか決められないのです」
勇気は優しく聞きました。「もう一つの道、とは?」
「それは大学院に入り直し、ヴィーガンとして動物たちのための声を上げる『学者や活動家である母親』です。でもその道を選べば、穏やかで満たされた日常は失われるかもしれない。日常を犠牲にしてまで、追いかける道なのでしょうか…」
すると勇気は、二本のロウソクを取り出しました。一本は食卓を優しく照らす短いもの。もう一本は、遠くの道を照らす背の高い松明(たいまつ)のようでした。
勇気は言いました。「ご覧なさい。食卓を照らす灯りは近くの人々を笑顔にし、松明の灯りはまだ誰も知らない道を照らす。どちらの光が、より尊いと思いますか?」
あかりは答えられませんでした。「どちらも…大切な光です」
「その通り」と勇気は深く頷きました。「どちらが正しいか、ではありません。大切なのは、あなたが『どんな光で、誰を照らしたいのか』です。あなたの心は、どちらの灯火を掲げたいと願っていますか?」
その言葉はあかりの心の奥深くに響き、自分が本当に照らしたいものは何か、もう一度見つめ直そうと思いました。
後に人々は「灯火に優劣なし、ただ照らす場所が違うのみ」ということわざを語り継ぐようになったとさ。 めでたし、めでたし。
と思う2025年08月14日08時24分に書く無名人インタビュー1145回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】
今回ご参加いただいたのは tapi / shiori さんです!
年齢:20代後半
性別:身体的には女性。精神的には両性・中立であろうと心がけています。
職業:大学院生 / 会社員 / 母親
現在:子育ては癒しというか、人生の軸足を置いて全振りするぐらいでもいいのかなと思う
qbc:
今何をしている人でしょうか。
tapi:
AI系のスタートアップで営業や新規事業の開発をやっております。
qbc:
お仕事自体はどうですか?
tapi:
実は仕事自体も結構難航していて。もともと去年の11月が出産なので、10月までは、決まった商材というか、売れ筋のAIの商材があるんですね。それを売っていく業務を中心にやってたんですけれども。
ただ私が産休に入るにあたって別の方に引き継ぎをしたんです。それで半年ほど産休育休を取って復帰すると、せっかくtapiさんはパートタイムではなく正社員メンバーなのだから、新しいサービスを立ち上げて、新規事業の開発をしましょうというミッションが改めて降ってきて。
育休明けから育児や家事をしながら、もともとやっていた定型的な営業業務ではなく、新規事業のアイデアを考えるところからやらなきゃいけないのか、みたいな感じで、パニックになっていたここ数ヶ月なんですが、若干落ち着いてきたという感じです。
qbc:
新規事業は、プロダクトがない状態ですか。
tapi:
そうですね。過去やってみて、失敗というかお客さんがあんまり増えなかったねっていうのはいくつかありまして。
その辺を一通り見直して。で、これ復活させたらいいんじゃないかなとか、もしくは展示会に行ったりとか、セミナーに出たりとかして、これが次来るんじゃないかなっていう。過去のアセットの見直しと最近のものの情報収集をするという感じで動いてます。
qbc:
そのほか、現時点で何かされていることって言ったら?
tapi:
今年の3月まで大学院に入っていまして。MBAとかではなく、本当に純粋な学術の大学院です。
それに絡むんですけれども、新規事業のテーマというのが気候変動とか脱炭素で、同じようなテーマで修士課程を、社会人大学院として2025年の3月まで2年間通ってました。
今一応博士課程にも在籍してるんですけど、割と仕事の方がハードモードであるっていうのと、子どもも活発になってきて、あ、これは自分の研究をしてる場合でもないぞってなってきたので、博士課程は、そろそろこの下半期からお休みをしようかなという感じです。
qbc:
子育てはどういう状況ですか?
tapi:
子育てはですね、結構祖母が手伝ってはくれてますが、絵に書いたような育児ノイローゼだとか産後鬱っていうのはあんまりないですね。
子どもはすごく可愛いですし、あんまり機嫌の波とか夜泣きしまくって寝れないっていうことはないです。子育てはむしろなんだろう、癒しというか。こっちに人生の軸足を置いて全振りするぐらいでもいいのかなと。
スタートアップとかにもともといたのは、大企業とか、こう一般的なレールに乗ったキャリアに疑問を覚えていたからではあるんですけど、そういう反骨心も消えてしまって...全然子育て楽しいなっていう感じです。
qbc:
お子さんは今どんな感じなんですか?
tapi:
子どもは今生後8ヶ月ですね。なのでまだわかんないんですけどね。こっから皆さんがおっしゃるような、その2歳とかのイヤイヤ時期でもうダメだってなるのかもしれないですし、小学校、中学校で塾とかお受験みたいなイベントが待ち構えてるのかもしれませんが、現時点では割と、その子育てに関しては満足度120%みたいな感じです。
qbc:
その他は何をしていますかね? さっきお話しいただいたこと以外で。
tapi:
もう一つ、私のそのアイデンティティ的なところで言うと、2021年から動物福祉・動物解放、畜産業の環境改善などを謳っている日本のNPOに毎月ずっと寄付をしています。
結構、気候変動にも関係があって、牛のゲップや土地の利用ですよね。森林を伐採して家畜の牧場にしたりとか、工業式の畜産が環境に悪い、気候変動の悪化に寄与しているという絡みもあります。
ただ、もともと環境問題から入ればこういう動物の問題を解決すべきだという主張は多くの人が賛同してくれると思ってたんですが、子育てをしていると、根源的な部分で疑問が湧いてきて。
赤ちゃんって全然意思疎通できてるかわかんないですし、言葉を喋らないですし、うんちもおしっこも垂れ流しで、動物と人間の境界がさっぱりわからない、というのがここ半年実感していることです。
なので子育てをしながら「ああ私は人間と動物の境目や、人間社会での動物搾取についてずっと深層心理で気になってたんだな」とようやく伏線回収された実感があります。ゆくゆくは、活動家まではいかないんですけど、ビジネスなり研究なりで動物の問題にアプローチできればいいなぁと思ってるんですが、仕事やお金稼ぎにはなりづらい領域ですよね... 本当にそこはこう、ぼんやりとした感じです。
子ども生まれて育休中にその本格的にその動物搾取の話とか、動物利用の話とかを仕事始まる前に勉強するかと思って本をたくさん買ったんですけど、もう読んでいるうちにもう気がめいっちゃって、今は距離を置いてるというか。
忘れて、もう目の前の仕事とか育児とか健康に日常生活を送るっていうことに注力しようと、今、私の人間力じゃ立ち向かえる問題ではないなというのがあります。いろいろ話が行ったり来たりして申し訳ございません、そういう感じです。
qbc:
大学院では何を勉強されていたんでしたっけ?
tapi:
大学院では気候変動政策を勉強していました。
qbc:
政策というのはどういうことでしょうか?どういうモチベーションで?
tapi:
あ、そうですね。多分、思考回路としては、その気候変動の政策をしたら、その中の一分野として畜産業を減らそうとかっていうふうに、そういう専門家になれるのかなってぼんやり思ってたんですけど、気候変動とか脱炭素の領域って勉強すればするほど、エネルギーの問題ですね。太陽光がどうとか、風力がどうとか。
まあ、今所属している会社で検討する新規事業も、そういうエネルギー領域が近かったりするんですけど。あと最近だと核融合がどうとか、かなりそういう技術論的な部分に寄っていってしまうので、私がうっすら感じてた違和感、動物の搾取や利用と環境問題の間が、距離が遠いなぁと修士の2年間でようやくわかりました。
qbc:
生活時間、ご飯食べたりお風呂入ったりみたいなのあると思いますけど、移動とか。その他の時間で何かやっていますか。
tapi:
起きてからどう過ごすか、一日の流れを話せばいいですか?
qbc:
それでもいいですし、普通に、趣味とかテレビ見るとか、その雑誌見るとか、インターネットの何々見るとか、そういうのも含めてですね。
tapi:
なるほど。それで言うともっぱら読書ですね。そうですね。小説も読むんですけど、大学院も文系の環境社会学って領域に行ったんですけれども、基本的にそのジャンルの読書です。家にもう、多分普通の人の家ではないレベルの本がたくさん積み重なっていて、夫も結構そういう人ですね、すぐに買っちゃう人ですね。
映画も好きで、映画といってもなんだろう。ドキュメンタリーとか社会派の映画なんですよね。たくさん見たりしてたんですが、最近は時間がなくて、でも割とその読書をするとですね、精神が良くなるという風に気づいたので、今、一応その大学院の身分は持っているので、大学院の図書館で、10冊ぐらい借りて、それで空いた時間はそういうのを読んでいますね。
qbc:
どんな本?具体的にタイトルどんな本を?
tapi:
有名なものでいうと『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』っていう本ですね。有名とか言ったけど、ご存知ですか?
qbc:
タイトルは見かけた気がしますけど、本は読んだことはないです。
tapi:
そうですよね。要は会社員とか組織で働く人たちが、自分の仕事は意味がない、なんなら社会にとって有害ですらあるって思いながらも仕事をやり続ける人を集めて、いろんな業種ですね、金融機関とか公務員とか、会社員含めてインタビューしています。アメリカの人類学者の本ですね。
あとは『2050年 世界人口大減少』っていう本も面白かったです。私、子どもを産んだ時に「この時代に子どもを産むことの倫理的是非」についてすごく考えまして。この本によると、環境問題や食料問題解決の一番の近道は人口が減ることだっていうんですね。で、概ね私も賛同をしてしまってます。新興国では、まだアフリカとかインドって子どもたくさん産むイメージがあるけど、実際にインタビューをすると「欲しい子どもの数は二人ぐらいかな」みたいな女性が多いみたいです。インドの結構出身階層の低い貧しい村の女性でも、スマートフォンとか見ながら現代的な価値観がインプットされてて、これは国連とかが予測しているスピードよりもっと早く、人口が減るだろうって予想をしている本ですね。
そういう本を読んで、自分の子ども、今0歳で、自分が死んだ後も生きるわけですから、なんとか、特に気候変動とか世界的な情勢不安とかについて、見通しは悪くないんだよっていうのを示すというか、そのうち「どうして自分を産んだの?」って質問された時に、説明(言い訳)するための材料を集めている感じですね。漠然としていてすみません。そういう感じで本を読んでます。
ただ、材料を集めつつも、自分自身の仕事や研究成果が結びつくかというと、かなり微妙で。さっきお伝えしたとおり、大学院で気候変動政策の研究をしてたんですけど、かなりマクロな研究をしてたんです。日本とアメリカとヨーロッパと新興国と、政策がどう違うか、みたいな、比較研究をしていて。ただ比較してどっかの国がうまくいってるねってわかったとて、それを日本に輸入するというか、日本でやるにはハードルが高すぎて、ここが問題そうだっていうのがわかったとしても、結局得られるのって無力感ぐらいしかないんですね。
大きな地球レベルでの、グローバルな比較をするんですけれども、それに興味がもともと知的好奇心でそういう気持ちがあってやったんですけど。やったとしても結果が分かって別に変えられなくないか?とかいう感想しか得られませんでした。日々の仕事にどう生きるの?とか、政策提言?意味ある?それとも学者を目指す?とか、自分の書いた論文とかやったことと、実生活でやれることが距離が遠すぎるなみたいなことがあって病みました。
qbc:
一通り、今されていることをお話しいただきましたが、今ベースとなっている気分とか、情緒ってどんな感じなんですか?
tapi:
かなり綱渡りって感じですかね。
qbc:
その綱渡りってどんな気分なんですか?
tapi:
それですよね。さっきお話ししたように、もう子どもがですね、すごいかわいいですし、夫と三人でお出かけしたりするのが本当にすごい楽しかったりとかするんですよ。なんていうか、いわゆるママ友とかもいるんで、一般的な家族に軸足を置いた幸せな生活というか。
あんまりそういう本とかも読まずにですね、休みの日はワイドショーを見て、お菓子を食べて、夕方になったら遊びに行ってみたいな、本当に絵に描いたような幸せな家庭、人生っていうのがあると思うんですけど。もうそっちでいいじゃんっていう心の声が聞こえるんですね。
なんですけれども、さっきいろいろ紹介した本みたいに、私も仕事やってて、これやって何の意味になるの?とか考えてしまうし、スタートアップなんで上場を目指して売上売上とか、しかもAIの会社なんでもうすごい変化が早くてキャッチアップもしなきゃいけないんですよ。もう、要はすごく加速してる、という用語が適切か分かんないんですけど、すごいしんどい時があるんですよね。
これ結構同じ大学の友人とか大学院の友達と喋ってても、働いてみて会社員っていう生き方なのかな、官僚とか公務員の友人もいるんですけど、これ週5日、こんなに虚無なんだみたいな話もするんですよね。
qbc:
なにが虚無か教えていただけますか?
tapi:
競争社会というか、常にお金になる知識って言ったらいいのかな?短期的で、お金になることをひたすら組織としても個人としても追い求めるように駆り立てられる感覚です。加速する資本主義とでも言うのがいいんでしょうか。
要はよくSNSとかで出てくる、スキルアップみたいなあれ系の知識ですよね。あとは転職とかですかね。転職でもっとキャリアを上げて、みたいな。すごい煽ってくるじゃないですか。
しかも今その子どもが大きくなった時にこう、私自身が今30近くで、仕事をする上で感じている、競争社会的な、もっとこう急いで生きなさいみたいな、ちゃんとスキルをつけて勉強して遅れないように競争を勝ち抜いて、会社自体も自分自身も成長してもっといい環境があればそっちに移りなさいとか、圧ですね。
おんなじ気持ちを子どもに味わわせたくないなぁと切実に思います。育児をしてこう嬉しいね、ハッピーだねっていう気持ちと、子どもが向かう先が、私が今感じているような、常になんだろうな、焦りを感じる精神状態というか、そういう同じ思いをさせたくと強く思います。
ハッピーな気持ちと、子どもも自分が今苦しんでる感覚に向かっていくのかなという絶望や不安と、そういう綱渡りですね。うまく言葉にできてる気がしないんですが...
qbc:
その時にもたらされている感情っていうのはどんな感じですか?
tapi:
感情……そうですね。そのつらつらと話した後者の方ですね。今、その自分がスキルアップだとか転職だとかそういうIT業界で煽られてるなって感じる時は本当に鬱というかどんよりします。
そのどんよりが子どもにも、子どもは別の生き方をして欲しいというか。多分いっぱいいると思うんですよ、同じように、鬱病の友人とかたくさんいるので、競争に疲れちゃって、子どものためにも、そういう人のためにも、そこにもう競争から降りてもいいんだよみたいな。そこに一石を投じるような。
要は社畜ですよね。社畜をやめたってこんな風に生きれるんじゃない?みたいな。そういう生き方を示してみたいなって思うんですけど、その前に自分が鬱で潰れそうですね。
qbc:
その気分はいつごろから始まっていますか。
tapi:
どうだろう、大学の学部時代でも社会学の勉強していたんですけど。社会学は、社会のあり方に疑問を呈するような、会社員とか普通の生き方とは相性が悪い学問ですよね。2019年に卒業したんですけど、卒業後は最初は金融機関に入ったんですけど、そこでいきなり感じましたね。最初の1週間とか1ヶ月とかで、なんだこの、茶番というとあれですが、こんな感じなんだ、手のひらを返されたじゃないけど、蓋を開けてみたら、これなの?ホワイトカラーと呼ばれる仕事って、と。
そこではパワハラ的な環境もあり、配属運も悪く。30代や40代が十人近く辞めてって、じゃあ私もやめようと。もうちょっと手応えがありそうなベンチャー企業に移ったりしたんですけど。その時の感覚はずっと残っていますね。
経済学部や法学部出身で、そのまま競争を走り切れちゃう人もいる。すごいな、と思います。インストールされているOSが違う感じなんですよね。そっちでは無理だったんだな、て思いますね。
qbc:
性格は人からなんて言われたりします?
tapi:
性格かぁ。なんて言われるかなあ……。でも、いや、自分で言うのもあれですが優しいって基本的に言われますね。優しいっていうのと大阪出身なんですけど、突飛なことをすると言われます。中学時代のあだ名がレディーガガでしたね。
qbc:
なんでレディーガガなんですか。
tapi:
多分中学の廊下とかで歌を歌ってたからだと思います。よくわかんないんですけど。一緒に歌ってくれる友人もいたんですけれども、芸術系の中高に通っていたので、簡単なパフォーマンス的なことをしたりとか、絵を描いたりとかはやってはいましたね。
qbc:
パフォーマンス。
tapi:
パフォーマンスは大したことではないんですけれども、それこそ歌を歌って楽器を演奏して。今思えばそうか、詩を書いたりもしてましたね。だから今感じている違和感が、答え合わせができた感じなのかな?
中学とか高校の時から、このまま会社員で大人になってこれ大丈夫なのかな?みたいな気持ちが多分常にあって。親が不仲とかではないんですけれども、このシステムってやっぱり電車で通勤通学をしていたので、ぐったりしてるサラリーマンとか駅で飲んだくれて寝てる人とか見るわけじゃないですか。これやっぱやばくね?みたいな、これおかしくない?って。将来の私の姿がこれか、もしくは旦那さんがこれか。もしくは、自分の両親みたいに私自身が母親になってパートで働いてみたいなのが将来向かう先だったら、とんでもなくない?それって、って多分思ってて、その違和感をいろいろ、当時はまだエネルギーとか時間があったので表現しようとしてたんだと思います。今からやっても遅くないのかな?そんな感じですね。
qbc:
自分自身でどんな性格だと思いますか。
tapi:
生きづらい性格ですね。生きづらい。そんなこと考えたって仕方ないのにとか考えたってしゃーなくない?って言われることをどんどん調べて本とか買って読んで、やっぱり知らなきゃよかったっていうのを繰り返している性格ですね。
qbc:
好きな食べ物なんですか?
tapi:
好きな食べ物、わー。
食べ物か、好きな食べ物。ここでもうスッと出てこないのがやばいですよね。一旦その家畜とかがどう作られるかっていうのを割としっかり直視して勉強してしまったので、肉とかスッと言えないんですよね。そうなんだよな、好きな食べ物……なんだろう。納豆ですかね。
チョコレートとかもやっぱりスッと言えないんですよ。気になっちゃったら、その食べ物がどっから来るのかとか、どういう産業でとか……有名なのはファストファッションですよね。児童労働で途上国で作られてたりとか、考えたって仕方ないんですけどね。
過去:一般的な家族に軸足を置いた幸せな家庭・人生っていうのがあると思うんですけど、もうそっちでいいじゃんっていう心の声が聞こえる
qbc:
過去について聞いていきたいんですけども、子どもの頃はどんな子どもだったんですかね?
tapi:
子どもの頃はそうですね。さっき話したように、その中高時代はどうだろうな……その、いろいろ社会の違和感を抱きながらも、ただ優等生的というか先生に言われたことをきちんとやる子どもではありました。勉強はやってましたし、できましたね。
qbc:
幼稚園の頃とか、どんな子どもだったか覚えてます?
tapi:
幼稚園は人気者だったらしいです。よくわかんないんですけど。
どこかに出かけるよってなったら、他の子も「あ、tapiちゃんについていきたい」みたいな感じで何人かグループになって一緒に行動するとか、そういうことがあったみたいです。
qbc:
好きだった遊びは?
tapi:
遊びのなかで好きだったのは、絵を描くことでした。絵を描いたり、あと、あやとりをしたりしてました。
qbc:
全般的な質問になっちゃいますけど、絵ってどんな絵を書くんですか?
tapi:
一個覚えてるのは遺伝子の配列とか、二重螺旋の構造とかがあると思うんですけど、その生物学的なその模様っていうのですかね?黄金比的なものがあると思うんですけど、それをモチーフに、たくさん組み合わせてクレヨンとかで抽象画みたいなのを描いてましたね。だから自然とか規則性があるものが好きなのかもしれないです。
qbc:
小学校の時はどんな子だったんですか?
tapi:
小学校、小学校の時も引き続き絵が好きで、小学校も幼稚園の延長みたいな感じだったと思います。私が昼休み終わった後にゴミ捨てに行くよって言ったら「一緒に行く」って言ってついてきて、5、6年になると結構突出して勉強ができるなみたいな感じで、そのカーストの外にいるような感じでしたね。そのカーストがあって、tapiさんは勉強ができるので別枠みたいな。そういうタイプの子でしたね。
qbc:
どれぐらい勉強ができたのか、表現できますか。
tapi:
どうだろう。テストの点は、90点から100点しか取ったことがなかったかもしれないです。
qbc:
どの分野が一番優れていましたか。
tapi:
英語と国語ですかね......?
qbc:
そのことに関して、感じること、思うことってありましたか?
tapi:
あ、小学校の時でいいですか。その頃から、本は読んでましたし。その時は小説かな?小説を読んでたかな?ただ、難しめの中学、高校の現代文の本とかも手を出して、読むのも早かったですね。どんどん読んでました。
qbc:
大学はどういう選択で、選ばれたんですかね?
tapi:
大学はですね、私が入学した公立の中高一貫校だったんですけど、新しい学校で二期生だったんですね。二年目だったんですよ。割と新しいんで、進学実績を作らなきゃっていうことで、一番難しい大学に入学しました。
qbc:
専攻は?
tapi:
そこなんですよね、専攻が経済にはあんまり興味が持てなくて、法律もやっぱり興味が持てなかったんですよ。文学部だったんですけど。
でも、文学部の中でも、例えばイギリス文学がどうとか中国文学がどうとか、個別の分野についてはあんまり興味が持てなくて、もっと大枠のというか。こう根本的なことを考えたいなと思ってしたんですね。その私がずっと生きてて感じてた違和感。
哲学はこう形而上学的というか抽象的すぎるなと思って、社会学に流れ着いたんですけれども、社会学って本当にいろんな分野があって。で、一通り自分が感じてる違和感って社会学の言葉で結構説明されるんだっていう風に思って、その選択は全然間違いじゃなかったなと思ってますね。
qbc:
ご両親からはどのように育てられたのでしょうか。
tapi:
そうだなぁ。両親は放任主義ですね。本当に。でも本を買うことについては制限はなかったです。この本が欲しいとか、こういう勉強をしたいとか、こういうことを知りたいということについては、惜しみなくお金を出してくれましたね。あんまり世帯年収が高い家庭ではなかったと思いますけど、すごく惜しみなく。
qbc:
生まれ育った場所はどこですか?
tapi:
大阪市内なので都市部ですね。なんだろう、ファミリー層が多い場所ですね。これが田舎とかだったらまた違ったのかもしれないんですけど、都市の生活しか経験してないんですよ。
大阪で生まれて、その後大学で東京にいて7年間東京に住んで、その後夫の仕事の都合で名古屋に来て、出産してまた大阪......という感じなんですけど。
ひょっとしたらこの閉塞感というか、競争競争みたいな駆り立てられる感覚は、東京離れたことでだいぶ正気を保ててる気はするんですが、都市部しか生活した経験がないっていうのはあるのかもしれないですね。
qbc:
大学卒業後、その金融機関に就職された理由って何だったんですかね?
tapi:
これもまた、変な理由ですね。大学の時の卒業論文で貯蓄から投資へが、なんでこんなに言われてるのかっていうのが不思議に思って、それを一生懸命研究してたんですよね。
で、一旦官僚もいいかなと思ったんですけど、勉強に着手しただけで、お金の面もあって、民間企業に行こうと思って、そういう本当に年金の運用とか、個人向けの金融商品を売るような会社に入りました。で、そこでESG投資とか環境問題みたいなところに接続されて、そっちにどんどん興味が移っていくっていう流れだったんですよね。
qbc:
金融機関が自分にフィットしてないだろうっていう予測はついてなかったんですか?
tapi:
そこは一旦その入ってみようっていう気持ちが勝ちましたね。多分「お金とは何か」を知りたかったんだと思います。あと就活がフィットしてなかったんですよ......。就活がもう全然フィットしてなくて。とりあえず一番自分を偽って偽って最初に早く内定が出たところで、もう決めちゃおうっていうことで、そこで飛び込んでみたら案の定こんなだったんだ、みたいな蓋を開けたらっていう感覚でしたね。浅はかでした。
qbc:
パートナーさんとの出会いっていうのはどうなったんですか?
tapi:
彼も大学の同期です。その社会学をやってて。もうちょっとミクロな関心があるのかな?私は結構大きい社会構造の問題とかの本をよく読んでますけど、彼はメンタルヘルスとか。今彼も会社員をやってはいるんですけど、精神科医にやっぱりなりたいみたいで、医学部を受け直す勉強をしてますね。
qbc:
自分の人生に転換点があるとしたら、どこに置きます?
tapi:
一つはめちゃくちゃありがちですけど、子どもを産んでみたことですね。
これだいたい、多分私みたいな考え方や価値観の人間が子どもを産むと、めっちゃ多分しんどいんだろうなっていうのは予測はついてたんですよ。ついてるんですけど、一回ぐらいは経験してみるかと思って、案の定、今綱渡りの状態になっているということで、これは死ぬまで続くなーっていうのと。
二つ目は動物の問題ですね。
いろいろ考えちゃうって話をさっきしたと思うんですけど、チョコレートの生産現場とかファーストファッションとか、その中で一番やばい問題が動物なんじゃないかって思ってるんですよ。絶対見たくないじゃないですか。多くの人が、一度疑問に思っても多分見て見ぬふりして過ごしてると思うんですよね。
で、私も完全にヴィーガンではないし、その思想を全員に強要することは絶対に無理だと思ってます。
じゃあどうしたらいいんだって話は、それは本当にしっかりもう死ぬまで考え続けなきゃいけないなと思ってるんですけど、がっつり動物の問題、畜産業の中で起こっていることとか、動物園のこととか、魚の養殖のこととかを全部映像にしているドキュメンタリーを見たのが2021年で。この二つかな。この二つが結構決定的ですね。
未来:死ぬ時には分厚い本、アート作品でもいいんですけれども、そういったものを残して、次世代に託して死にたい
qbc:
未来についてお伺いしていて。最後自分が死ぬっていうところまでイメージしていただいて。今、どんな未来を思い描けますかね。
tapi:
難しいですね、そうだなぁ。とりあえず今は会社員をやってますけれども、育児で目の前のことで手一杯、目の前の仕事をやることで、一旦考えすぎる自分の悪い癖は置いておこうと思っているんです。
とはいえ、多分人生の30代40代とかその時間軸で、どこかではまた大学院に戻るなり、何らかの研究活動を再開したいと思っているんですね。なので、死ぬ時には、分厚い本なのかな...... アート作品でもいいんですけれども、そういったものを残して、次世代に託して死にたいなっていうのは思いますね。むずかしいですねー。
qbc:
「考えても仕方なくない」っていう考え方についてですが、考えても仕方のあるものっていうのはイメージされてるんですか?何に対して言っているのか。
tapi:
えーと、どうなんだろう。
例えば、その、なんだろうな。私が動物の搾取の問題がどうしても許せないんだっていうことであれば、代替肉や培養肉とかそういう方向に会社員としてはキャリアチェンジをするとかは「考えても仕方のある」方向性かなとか思ったりします。気候変動の問題であれば、本当に小さな抵抗にはなるとは思いますけど、再生可能エネルギーの会社に転職するとか、そういうことですね。そういう小さい抵抗であればできるのかなと思います。こういう回答であってますかね?
qbc:
何を考えてるのかなと思って。今、ちゃんと実行すべき考え方があるでしょう、っていうのは多分頭の中にはあると思うんですよね。それって何を考えたのかな?と。
考えても仕方なくない?という時には、対比される考え方があったんじゃないですか。これだったら考える意味があるのに、というのはあるんですか。
tapi:
あぁー、そうですね。例えば「そんなん考えても仕方がないな」って思ったり人から言われたりする問題は、規模が大きすぎたり手遅れ感が強かったり、はたまたシステムとして堅牢すぎたりという意味で、動物搾取や気候変動といった問題があると思います。
それに対して、対比されるものとして「考えて仕方ありそう」な問題としては、例えば男女共働きで、女性が働きながら子どもを育てるとか、そういう政策をどうするかだったりとか、ですかね...... あとはあれかな?障害者雇用の問題であったりとかなのかな。そういうもっと手応えのある、仕方があるテーマっていうのは結構いろいろありますよね。
qbc:
その手応えがあるのを、実際にはやらないじゃないですか。
tapi:
そうなんですよ。やらないんですよ。
qbc:
その存在に対してどう思ってるんですか?
tapi:
やるべき、めっちゃやってほしいと思ってますし、もうやってる人がたくさんいますよね。大学院の同級生なり、研究者になった人なり、あとは会社の人事なり、国もそういう制度を出したりとかしているので。
qbc:
じゃあ仮に、それをみんながまだやってなくて、自分が第一発見者だったらやるんですか?
tapi:
あ、その……なんだろう。ジェンダーの問題とかそういう、さっき話した仕方がありそうな問題で自分が第一発見者だった場合ってことですか。
qbc:
そうそう。
tapi:
多分やると思いますし、それをやることでいろんな人が、助かったとか、こういう考えが広がって、めっちゃ気が楽になったって言ってくれそうであればなおのことやると思います。
qbc:
もしもの未来の質問をしていて。別に特に求められていることもやらなくてもいいし、地球もほとんど気にしなくてもいいと。マイクロプラスチックの問題も環境の問題も……そしたら何してますかね?
tapi:
そうですよね、めっちゃいい質問ですね。何するかな?
食べ物を作るとか農業にずっと興味がありますね。
あとは登山とかかな。森林の中を散策したりとかするかな?精神的に参っていた時に癒される行動として残ったのが、自然の中で過ごす、みたいなことだったんです。
あとはそうですね。何も考えなくていいんですよね、気候変動とか社会問題とかも。あと子どもと、もう子どもとひたすら遊ぶとかかもしれないですね。
qbc:
お子さんがいらっしゃらなかったら、どういうことするんですか?
tapi:
それで一人ぼっちですか。
qbc:
パートナーもいて暮らしているという想定で。
tapi:
パートナーがいるか……どうだろう。
qbc:
世界に大阪府しかなかったら、みたいな感じでいいですよ。食糧問題もないみたいな。
tapi:
映画とかはあります?
qbc:
よくわからないけど、世界の才能が全て大阪に集結してて、バランスのいい人口で。土地も広げられて、一概に土地は残ってるみたいなSF環境にいたとしたら?
tapi:
最近、車の運転が楽しいってことに気づいたんですよ。ずっと苦手意識あったんですけど。なので、一通りドライブするかもしれないですね。
qbc:
ドライブの、何が楽しいんですか?
tapi:
ドライブは、特に夜とかが楽しいですね。「移動してる」ってことが楽しいのかもしれないです。
育休中とかもYouTubeなんですけど、海外だとか日本の都市部の街中をずっとドライブをする、2時間ぐらいの動画を見てたんです。子どもと一緒に。すごい癒されるんですよね。
で、山の中もあれば都市部もあって、本当にもういろいろもう無理になったら論文書きながらタクシーかトラックの運転手、父親がトラックの運転手だったんですけど、そういう仕事が精神的にはいいのかなとか最近は思ってるんです。なので、車の運転をする気がします。
qbc:
あれ、飛行機とか新幹線は好きですか?
tapi:
好きですね。
qbc:
どっちが好きですかね?
tapi:
わーどっちだろうなあ。でも新幹線かな。外見れるから。
qbc:
自分で運転するしないはあまり関係ないですかね?自動車との大きな違いは、運転するかどうかですよね。
tapi:
どうだろう……そうですね。楽しさに違いはないです。得られている充実感としては両方感じますね。
qbc:
じゃあ助手席でもいいんですか?
tapi:
助手席でも最悪いいですね。でも運転した方が多少楽しいかな、1.2倍楽しいみたいな。
qbc:
インタビューしてみて、どんな感じになりましたか。
tapi:
ありがとうございます。聞いていて楽しい話は少なくなかったですか?
qbc:
どうだろう。そもそもファニーな話をする人はあんま多くないかな。
tapi:
そもそもそっか、この企画自体がですね。インタレスティングではありましたか。
qbc:
インタレスティングという意味では、一つはもう単純にこういう興味持ってる方がいらっしゃるんだっていう意味でインタレスティングなのと、あとは実は多少類型化しているところがあって、高学歴の女性のキャリアっていうのも多分難しいんだろうなというふうに思いながら聞いてました。
tapi:
やっぱり他の方も全く同じとは違うと思いますけど、こういうのを感じている方っていらっしゃるんですかね。逆質問になるんですけど。似たようなこと感じてる方っていますか?
qbc:
います。
tapi:
やっぱりいるんだ。
qbc:
ユニークな、象徴的な大学なので、そこから官僚はさすがに嫌だけど、そんな働きたくない人がいるんでね。行けたから行けてしまった人たちっていうのは、やっぱり一定数いて。
後で、別に官僚になりたくないし、ってなった時に、金融機関みたいなもの、ある程度社会的地位もあるので、周りの後押しもあって入ったりするんですけど、ギャップを感じてやめるっていうのは初めてのパターンではないですね。
tapi:
やめて、皆さんどうしてるんですかね。
qbc:
皆さんっていうほどの母数はないですけども。学部によると思うんですけども。大学院に戻ることが多いですね。
tapi:
やっぱそっちなんですね。そうか、そのクラスターがあるんですね。
qbc:
研究やっている人というのは、それを利用して開発することにはあまり興味がないんですよ。それを売上に変えたりするというのは、研究から外れていると思います。だから、最初開発と言われたときに、システムの開発をするのかと思ったんですよ。
tapi:
ああ、違います。全然事業開発です。大学院に戻られた方は基本研究者なんでしょうか?どうなんですかね。
qbc:
いやー、今の日本の社会には研究者のポストがないっていう状態になっていますよね。
最後の質問をさせてください。遺言でも、見ている人・読んでいる人へのメッセージでもいいですし、独り言みたいなものでもいいですけど、最後に言い残したことがあればお伺いしています。
tapi:
あ、準備してたはずなんですけど、飛んじゃって……笑
難しいですね。いろいろ考えすぎる性格の人にとっては、出産、子育てってもう一番カオスで、もうずっと苦しい綱渡りになってしまうと思います。もちろん、楽しく幸せなことも大いにありますが。
宇多田ヒカルの「あなた」という曲の歌詞に、おそらく息子に対して作った曲だと思うんですけど、「終わらない苦しみを享受しよう」みたいなフレーズがあったと思います。もうこどもは作りません、と決めている人はその選択も素晴らしいですし、作るかどうか悩んでいるという方は、より一層人生の悩みが深くなるかもしれないんですけれども......やってみる価値はなくはないなって自分自身すごく思っているので、これは女性だけではないですね。男女へのエールとして、そんな感じのことをまとめていただければと思います。
qbc:
ありがとうございます。
あとがき(編集)
かくいう私も、「あんたは考えすぎだよ」と言われる機会がまあまあ多いのですが、大抵はその先に「もうさ、考えたって仕方ないじゃん」と言われることもまあまあ多い。
それにちょっとばかりうんざりしていたこの頃、とある仕事先の人に「考えすぎ、とよく言われてしまうんです」と(愚痴に近い)相談をしたところ、その方から「でも、そうやって言ってきている人たちは、過去に考えすぎた挙句に投げ出してしまったのかもしれない」と言われたんです。たしかに、人間生きていて、一度でも考えすぎることはあって然るべきだとは思います。哲学者・数学者のパスカルも「人間は考える葦である」という名言を残しているくらいですし。そして、考えすぎた挙句に投げ出すのも、自分が築き上げた思考のシワを手放す行為でもあるので、一つの勇気でもあると思うのです。
でも、考えすぎた先人のおかげで、こうして現代になってさまざまな問題が浮き彫りになっている、という側面もあるかもしれません。その考えすぎた人たちというのは学者もそうですが、表現者など何かしらの形で出力し、それを生業としている人なのだろうか。そんなことを、私も考えています。
【インタビュー:qbc】
【編集:一休誰絵】
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