50代の日常に潤いを見つける——エッセイ集『深煎りのモカを片手に』作者に聞く|文学フリマインタビュー
この記事は、文学フリマに参加する人たちのためのインタビュー。
今回参加いただいたのは 御手洗 育 さんです!
屋号:御手洗 育
作者名:御手洗 育
近刊本:「深煎りのモカを片手に」
参加イベント・ブース:文学フリマ東京41 南0ホール・せ-91
文学フリマカタログ:https://c.bunfree.net/c/tokyo41/4F/%E3%81%9B/91
Webサイトなど:
どんな本を出されているんでしょうか?
諧謔:屋号と作者名を教えていただけますか?
御手洗:ペンネームで御手洗育です。屋号は同じです。
諧謔:これから出す本はどんな本なんでしょうか?
御手洗:タイトルが『深煎りのモカを片手に』です。モカって普通は浅煎りなんですけど、たまに深煎りで飲む人いるらしくて、こっそりそのひねりを入れたタイトルなんですけど。
本体のエッセイの方は特にひねりがあるわけでもなく、淡々と書いてる感じです。タイトル決めるときに、私いつもスタバとかカフェでコーヒー飲みながら書いてたので、コーヒーをタイトルに入れたかったんです。ちょっと語呂が合わなくて、コーヒーの代わりに変わる言葉ないかなあと思って、モカって言っちゃおうってことで。ちょうど深煎りのモカも好きだしって感じでそんなタイトルにしました。
諧謔:どんなことが書いてあるんですか?
御手洗:この本、今年の夏に出版したんですけど、だいたい私が50代の間の、仕事をして、家庭では子育てをして、女性として考えたこと、思ったこととか書いてるんです。
例えば、勤務先が大学の研究室っていうちょっと変わった、あまりないかなっていうことで、そこの研究室での仕事の事とかも。カウンセリングも学んでたりするので、カウンセリングのこと。あとは同年代の主婦で、結婚して家庭を持ってる人だとあるあるなんですけれど、子供が働き始めたとか、子供のキャリアのこととか。まあ、日常のことを淡々と書いています。
もう20年以上前からエッセイ書くのが趣味で、当時エッセイ教室に通ってた時に原稿用紙三枚から五枚ぐらい書くっていう課題を毎月書いていて、流れでずっとエッセイは原稿用紙三枚程度書いてきたので。教室行かなくなってからも自分でずっと書いてきて、そんなエッセイを、私が50代で経験したことをギュッとまとめて書き溜めたものを、ちょっとカテゴリー分けして本にしたという感じですかね。
諧謔:研究室ではどんな仕事をされてたんですか?
御手洗:研究室では、研究者の事務的なことをサポートする秘書業務です。国立大学なので、例えば出張の手続きとか、研究会があったらそれの準備。そして一番日々あるのは研究者が買った試薬の支払い。DNAの解析をやっている部門だったので、サンプルを業者に送ったり結果をもらったり。大体研究室のお金の管理っていう感じですかね。大抵出張や物を買えばお金が動くので、それの対応をしてきたっていう感じですね。
諧謔:お知り合いの方から仕事を紹介されたのってなんでなんでしょう。
御手洗:共通の友人というか、仕事をする前に——22年働いてきたんですけど——25年程前にまだ子供が小さくて、子供の通っていた幼稚園の先生が学会の大会の事務局をやるので手伝って欲しいって言われて。じゃあやりますよとかって言って手伝ったことから、ちょっと、あなた大学とかで働けばみたいなこと言われて、いやそうですねとか適当に答えてたんですけど、いや、頼んでおくからみたいに言われて、そして共通の知り合いの人からこんな研究室あるんだけど、どうとかって言われて。私も社会に出たいと思っていたので——専業主婦だったので当時——じゃあ、ちょっと自分、社会に出てママとかだけじゃなくて出たいじゃないですか。40歳のころだったと思いますけど、じゃあやりますってことで、最初はちょっとだけ、ちょっと覗いてみたいなっていう好奇心。そんな長くやるつもりは全然なかったんですけど、通り過ぎてみたら22年経っていたって感じですね。
諧謔:社会に出たいと思ってたっていうのはどういう感情なんですか?
御手洗:ずっと家にいて、子供や夫が帰ってくるのを待つ日々って、多少は、子供の父母会の役員をやったりとか、単発の派遣で働いたりはしてたんですけど、正規の職員として常勤で働いたことはなかったので。ずっと家にいるのもちょっとつまんなくなったというか、社会へ出てちょっと自分の力を試したいなっていう感じで。
今から30年ぐらい前って今より専業主婦は多かったと思いますけど、本のまえがきでも書いたんですけど、結婚して夫を支えて家庭を——当時の言葉で言ったら——家庭を守っていくみたいな。それが普通と思ってたんですけど、それをずっとやっていくのって、やっぱりちょっときついというか、飽きるというか、毎日はちょっと耐えられないなって感じで。子育ても手が離れつつあって、子供が小学生とかになれば、ちょっと外へ出たいなってことになって。ちょうどそんなときに仕事の話をいただいて、じゃあやりますって感じで。
諧謔:家庭に入る前はどんな感じだったんですか。
御手洗:私、ちゃんと働いたことがないというか、色んな仕事を若い時から、パートだったりアルバイトだったり、非常勤のような形で働いてきて、独身の時は博物館の案内をやったり、お役所で働いたり、結婚してからはスイミングスクールの体操のお姉さんみたいなことをやってたり。そんな色んな職種、職業を、頼まれたり、あとは自分でやろうと思ったりで、一応期限——二年間だけやってくださいとか——そういう刻みで派遣でも働いてたんですけど、一個の仕事をずっとやってきたってことがなくて。で、結婚して専業主婦になって。なので、何か自分ができるっていうものは全然なくて、基本的なことだったらできるだろうなっていう程度だったんですけど、研究室の仕事はちょっとハードル高いなと思ったんですけど。研究室っていうのも、特に理系だしイメージできなかったんですけれども、やってみようかなっていう。もともと好奇心もあったので、やってみるかって感じで。
諧謔:大学の事務サポートで長く続いてると思いますけど、一方で前はそうじゃなかった、いろんなことをやってみたって言ってたんですけれど、それってどんな違いがあるんですかね?
御手洗:若い時は色々な仕事したっていうと、長続きしなかったっていうわけではなくて、ステップアップっていうのとも違って。期限が切られた——二年間の雇用ですとか——当時お役所の臨時雇用は、五年を限度に雇いますとかそういう感じだったので、博物館の職員もお役所の仕事も、最長二年までとか最長五年とかって言われて雇われていたので、期限が来てやめてって感じだったんですけど。この20数年やってきた仕事はそれが無かったので、特に辞める大きな理由もなく、割と自由の利く仕事でもあったので、辞める機会のないまま。人間関係も特に難しいわけでもなくて、人にはすごく恵まれて気付けば22年とかたって感じですかね。
諧謔:今回出される『深煎りのモカを片手に』には大学の事務サポートの中でも、どんなことが書かれてるんですか?
御手洗:そうですね。例えば、明日、国際学会があります、っていう日の夕方にいきなりお饅頭を買ってきてほしいって言われて。ちょっと今からお饅頭売ってるお店ないんですけど、どうするって秘書同士で困って。今からデパート行けないしみたいな感じでいたら、先輩秘書に、薄皮あんぱん、もうあれでいっちゃおうって言われて。それをもう——私車で通勤してたんですけど——近くのスーパーを二人の秘書で三、四軒ずつ回って薄皮あんぱんを買い占めて、そして次の日の国際学会に。ちょっとお饅頭ないんですけど先生、薄皮あんぱんでって感じでお出しして。結構外国人に好評だったってあとから聞いて、閉店前のスーパーを走り回ったけど、ああ、頑張ってよかったなあ、みたいな。
諧謔:他にはどんな話が?
御手洗:そうですね、広く色んなこと書いてます。夫の実家との関係とか。あとは子供が突然大学やめるって言いだしたとか。
カテゴリー分けると、秘書の仕事がまず最初にあって、日々の暮らしについて——例えば義理の父が残したボコボコの軽自動車に乗って出勤した時の話とか。あとはキャリアについて——子どもが就活してるのを見ながら、自分の仕事とちょっと重ねたりとか。家族については、亡くなった父や母の思い出のことを書いたり、娘が海外に行くっていう時に見送りの空港で一人大泣きした話とか。あとはカウンセリングをちょっと学んでいて、ちょっとまだ未熟者なんですけど、カウンセリング目線で世の中を見た時の話。あとは最後は夫婦について——夫は、ほとんど寝に帰るだけのような生活をしてきたので、その夫に対する思いなどを書いています。
大体の枠で言うと、秘書の仕事、暮らしについて、キャリアについて、家族について、女の仕事、カウンセラーの仕事、夫婦についてというカテゴリーで書いています。今までにnoteなどで書いてきたことを、本にするためにエッセイに仕立てて、60作あまり貯まって、じゃあそれを本にしようかってことで。編集者と相談して、ざっくりそんなカテゴリーに分けますか?って感じで、広く浅く色んな話を入れてるって感じですね。
諧謔:どんな軸でお話を選んでいるんですか?
御手洗:どんなことを書こうかっていうのは、もともと私、自分の目の前で起きた出来事を誰かに伝えたいってことが多くて。で、更にそれで相手が喜んでくれたり、それ面白いねって言ってくれたりとか、悲しかったねとかって言ってくれるのも嬉しくて。この間こんなことあってさ、っていうのを誰かに伝えたい気持ちが強くて、かといって、じゃあ誰か捕まえていつも話せるわけではないので、多分それがエッセイっていう形で自分にしっくりきて書いているのかな。
なので、自分の目の前で起きたことを話すんじゃなくて、こんなふうに書いて伝えたいっていう。泥棒に入られたことあるんですけど、警察の人が来て現場を調べている様子を、どういう風に文章に書いたらわかりやすいかなとか、泥棒に入られたショックより、この状態を誰かに書いて伝えたいっていう。もう一人の自分がいるような、俯瞰するというか、多分それは誰かに伝えたいと思ってるからなんだと思います。
諧謔:もう一人の自分って何ですか?
御手洗:今私があなたと話しているのを、ちょっと高いとこから見てるもう一人の自分みたいな。人というか目線というかですか。そういう目線を、多分エッセイを書く人って多かれ少なかれ持っているんじゃないかなと思いますけど。その目線で見てると自分がこう笑ったり悲しんだりしてることって、ロールプレイングゲームのキャラクターを見てるような。人生って悲しいこともあるけど、結構面白いし、思わぬことが起きたりするし。自分は日々平凡に生きてるんですけれど、それを高いところから、見てはいないんですけど見る目を持ってる、そんな感じですかね。
これまではどんな活動をされていたのですか?
諧謔:これまでどんなことを書いてたのかなっていうことをお伺いしたいです。
御手洗:エッセイ教室に10数年通っていたので、その間に仲間と一緒に自費出版を三冊ぐらい書いて。一番最初に出したのが40代前半だったと思いますけど、飼っていたペットのラブラドールの事とか、仕事をやり始めたとか、その年代だからこそ感じることを書いていましたね。
諧謔:どんなこと感じられてたんですか?
御手洗:私さっき家にいるの耐えられなくなってって言ってたんですけど、結構家にいるのも好きで。かといって、じゃあ家事が好きかって言ったら、そうでもなくて。趣味のパッチワークやってみたり、ジムに行ったりっていう日々だったんですけど、多分エッセイを書こうってなったのは、何をやってても「ちょっとこの状態って面白い」とか。「これ文章に書きたい」っていう気持ちをいつも持っていて、なので、仕事をしてても家で子供と接しててもあ、今起きてることをどういう組み立てにしたら面白いかなとか。どんな文章になるかなとか、それをいつも考えてるみたいな。そういう癖があったように思います。なので、具体的に何っていうのはないんですけど、その時々の話を書いていました。
イベントへの意気込みをお願いします!
諧謔:文学フリマ参加への意気込みをお教えてください。
御手洗:一人でも多くの人に手に取っていただきたいです。自分のブースだけ誰も来ないのは寂しいので。夫が荷物持ちでついていくと言うのが、ちょっと優しくもあり面倒でもあり。二人で対応しようと思っています。Noteのフォロワーさんが三、四人は来てくれるって言ってくれてて、それは心強いです。たくさん売りたいっていうよりも、お祭り的に楽しみたいなと思っています。たくさん売れた方が嬉しいんですけど、何冊売れたっていうことよりも、交流が出来たら楽しいかな。そういう場になればいいなと思ってます。
諧謔:どんな人に読んでほしいですか?
御手洗:それはやっぱり40代後半から50代。私のエッセイを書いたのがほぼ50代でのことなので、同年代か、少し若い人にまあこんな感じなのよって感じで。そんなに全部ハッピーでもないし、かといって凄い暗いわけでもなくて、あんまり振り幅ないと思いますけど、でもそれでも中でもちっちゃい感動を見つけたり、ちょっと潤いのある生活できたらいいなとは思ってるので、そんなようなことをちょっと一緒に感じてもらえたら嬉しいかなと思ってます。
諧謔:御手洗さんにとって潤いのある生活ってどんなことをイメージされてますか?
御手洗:例えば同じ出来事が起きても、人によって受け止め方きっと違うと思いますけど、全部ハッピーじゃなくても、それをちょっとネタでもない、楽しんじゃおう、っていうか、人生味わっちゃえば——悲しいことも楽しいことも味わったもん勝ちというか——それでいいんじゃないかなって思ってます。
諧謔:最後に読者へのメッセージをお願いします。
御手洗:本当に、一人でも多くの方に手に取っていただけたら嬉しいです。同じ出来事でも、それをどう受け止めるかで人生の色合いは変わってくると思います。全部がハッピーじゃなくても、その中にちっちゃい感動や潤いを見つけられたら、それが豊かな人生なんじゃないかな、と。そんなことを一緒に感じていただけたら、とても嬉しいです。当日はお祭り気分で楽しみたいと思っていますので、ぜひブースに遊びに来てください。
インタビューを終えて
インタビュー担当:諧謔
制作:栗林康弘・qbc(無名人インタビュー主催・作家)
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