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お金と信用の“裏側“にある、生々しい現実 — 600億円を調達しても、僕たちはまだ支えきれない

執筆者:株式会社UPSIDER VP of Growth 米田陽介


「挑戦者を支える」の現実

5,000万円貸した会社のオフィスが、もぬけの殻だった。
電話はつながらない。メールも返ってこない。
嫌な予感がして現地まで足を運んだ。
そして、その予感は、当たっていた。

エントランスにはちゃんと社名のネームプレートがかかっていた。
中をのぞけば、机も椅子も、書類棚もそのままだ。
ただ、“人”だけが、綺麗に消えていた。
まるで、誰かがドラマのセットからキャストだけを抜き取ったように。

これが、今の僕の仕事の一部だ。
そして、UPSIDERという会社が背負っている、“挑戦者を支える”という言葉のもう一つの現実だ。

楽天では、挑戦の機会にあふれた、恵まれた環境にいた。
仲間にも、上司にも、成長にも恵まれていた。
自分は役職には無頓着だったけれど、ありがたいことに、
最年少執行役員という肩書きも与えてもらった。
ただ、どこかで「登る山をいつも与えてもらっている」という感覚があった。
三木谷さんのように、自ら登る山を決め、切り拓く背中を見ながら、
「自分の人生に本当の意味で責任を持てているか?」と、問い直す瞬間が何度もあった。
40歳を迎えたとき、安定や感謝だけでは埋められない「物足りなさ」が残っていた。

挑戦しよう。
そう思って、UPSIDERという選択をした。

成長の全責任を負うプレッシャーと転機

「好きにやっていいよ」
そう言われて始まった、UPSIDERでの日々。

VP of Growthという立場で、UPSIDERの成長に関する権限も責任も全て、任せてもらった。
求めていた環境で、同時に、大きなプレッシャーだった。
金融のことも知らない、法人カードのこともわからない。
そんな中で、すべてを自分で決められる自由に、
決めなくてはいけない重責に、僕は少し戸惑った。

しかも、僕が入ったポジションには、前任者がいた。
創業者兼、共同代表であり、強烈な価値観を持つTomo(水野)が。

「僕のやり方ではこの先はないから、米田さんのやりたいようにやってください」 と言ってもらえているのに、17年間の自分のやり方があるはずなのに、「何が正解なのか?」「Tomoならどうするか?」をどうしても考えてしまう。

「自分のやり方をそのまま押し通しても、この文化には合わないんじゃないか」
そう思うと、手が止まった。

「米田さんって、何ができる人なんですか?」
——そんな声をかけられたわけではない。
でも、勝手に自分の中で、そう聞こえる気がした。

転機は、ある日起きた、支払い遅延のトラブルだった。
それなりの金額だった。連絡はつかない。
誰に言われたわけでもなく、自然と足が動いた。
「ただ、必要だったから」「自分が行かなくちゃと思ったから」
その会社のオフィスまで向かった。

相手が来るかもわからない中、僕は数時間、会社の前で待ち続けた。
ようやく現れた担当者に、僕は怒りをぶつけるのではなく、事情を丁寧に聞いた。
「どうすれば払えるか、一緒に考えましょう」と。
その方は約束を守ってくれた。
今でもUPSIDERの大切なお客様だ。


その一件をきっかけに、少しずつ周りからの信頼が芽生えた気がした。
「言葉や経歴じゃなく、行動で信頼される」
——そう実感した。

元々僕は頭が良いタイプじゃない。 泥臭く目の前の課題に向き合い続ける人間だった。 楽天での数々の経験が僕に勇気を与えてくれた。

「スーパーマンだけ」から「みんな」が活躍できる組織へ

前任者のTomoが作ったGrowth組織は「スーパーマンに最適化した」チームだった。

優秀なメンバーが、「挑戦者を支える」という言葉を自由に解釈し KPIも、型も、管理もほとんどないまま、思い思いに挑戦していた。
迷ったら自分で考える。
成功の仕方は自分で決める。
そのやり方は熱狂を生み、確かに成果も出していた。

けれど、同時に「限られた人にしか許されない組織」でもあった。
どうしたらいいかわからない。
迷っても、相談する相手がいない。
みんながスーパーマンじゃない。

UPSIDERが、本気で「世界的な金融プラットフォーム」を目指すなら。
挑戦者だけでなく、
挑戦する“すべての人”を支える組織
になるなら。
このままではいけないと感じた。


派手な制度をつくったわけじゃない。
一つひとつの定例を見直した。
Slackの小さな質問にも、全部目を通した。
誰がどこで、何につまずいているのか。
会議で言えなかった違和感も、できるだけ聞きにいった。
少しずつ、何度も、確認しながら、決定を共有するようにした。

遠回りだと思うこともあった。
でも、遠回りじゃなければ、みんなでは辿り着けない

「米田さんなら、大丈夫だと思って言いました」
ある日、メンバーがそう言ってくれた。
それは成果でも、肩書きでもなく、 “言ってもいいと思ってもらえた”という、小さな信頼の証だった。

派手なストーリーじゃない。
でも、自分の意志で声を上げ、動き出す人が増えてきた。
神話ではなく、血の通った「チーム」になってきた。
そう、静かに実感している。


インフラの重さに潰されそうになる夜

木曜の夜だった。静かなはずのSlackに、異変が走った。
「支払い.comが使えません」
「売上が全部止まりました」
「至急、確認お願いします」

——全国的に、多くのクレジットカードが障害で使えなくなった。
多くの顧客にとって、支払い.comは最後の手段だった。
明日までに支払えなければ、支払い期限に間に合わず、取引先に迷惑がかかる。

社内は即座に対応モードに入った。
一緒に事業を作っていた大企業の担当者とも電話をつなぎ、
北海道に出張していた僕は状況確認に奔走していた。

原因は?どこまで顧客に伝えるべきか?
「復旧が遅れたら、何人の事業が止まるだろう」
普段の意思決定より、何倍も重たい問いが、呼吸のたびに胸を圧迫してくる。

深夜に、ようやく復旧の目処が立った。
顧客への連絡を一斉に始める。

怒られても仕方のない中で
「御社の対応に救われました。これからも、頼りにしています。」
という言葉は涙が出るほど、嬉しかった。

でもその裏には、背負いきれないほどの重さがあることも、改めて実感した。


支えきれなかった、という悔恨

毎日、胸が苦しくなることがある。
「UPSIDERのことは好きだけど、他のサービスに乗り換えるね」
そう言われたことを思い出す。

機能が足りなかった。
プロダクトも、仕組みも、力も、足りなかった。
本当は出せるはずだった与信枠を、
自分たちの力不足で出せなかったときもある。

そんな経験の中で、UPSIDERに入社を決めた思いの1つが頭をよぎった。
そして、「結局、自分の悔恨は克服できないのか」
という気持ちになってしまった。

僕の「原体験」となっているのは楽天市場の事業だ。 新卒で入社した楽天で一番最初に携わったビジネスで、
楽天市場に出店していただいている企業の担当をした。

担当企業のECの売上を伸ばしていくというミッションで、 成長する会社にたくさん出会えた一方、自分の力不足で縮小や倒産する会社もあった。
インターネット黎明期。
ECの売上を伸ばすことで、挑戦している方々を応援することはできたとしても、 お金でつまずいた時に何もできなかった自分がいた。

ずっと思っていた事がある。
「自分がもし、お金の悩みを解決できていたら、お世話になったあの社長さんは、今も元気に商売を続けていたかもしれない」と。

そんな悔恨が、17年経っても消えていない。

このUPSIDERという会社の掲げている世界観が 日本という国の金融インフラの基準をアップデートすることができたら、 自分が感じた問題はもっと少なくなる。
もっと挑戦できる人が増える国になる。

そう思いながら、この会社の掲げるミッションの実現に心を燃やしている。

ただ、現実はそんなに甘くはなかった。
お金の悩みを解決できるはずの環境に身を置いたのに、
結局、解決できない自分に苛立ちを感じた。

そして今、僕はまだそのフラストレーションと戦っている。
UPSIDERは「挑戦者を支える会社」だ。
誰かがやらないといけないと思う。

そして、その誰かは、僕たちだと思っている。
目指している理想にはまだ全く至っていない。

今の僕たちには、未完成な部分がたくさんある。
プロダクトの開発スピード、与信判断の限界、チームの体力。
全部が、支える/支えられないの境目を決めてしまう。
本当は、もっと役に立てるはずだ。
でも、僕たちには、できなかった。

「あのとき、支えられなかった」
この悔しさだけは、絶対に忘れないと決めている。


未来へ:日本を再び強くするために。

楽天の話ばかりしてしまうが、僕はキャリアの最初の10年を 楽天市場というプラットフォームに費やした。
正直、10年もやるなんて思ってもいなかったけど、夢中になっていた。

でも、夢中になる理由があった。
それは、「日本を元気にする」という”大義名分”に心を突き動かされていたからだ。

インターネットは時間と場所という制限をなくしてくれるから、 どんなに人口の少ない町にある会社であろうと、努力さえすれば、 場所のハンデを背負うことなく成果を出す事ができる。

挑戦する人たちが希望を持って同じ土俵で戦えるという革命に没頭していた。
月商100万円の夫婦2人でやっているお店が、月商1億円まで伸びることもあった。
そして、雇用が生まれ、地域が元気になっていく。
そんな光景を目の当たりにしていた。

そして、今、UPSIDERでまた、同じ情熱を感じている。
もちろん、僕たちは「世界的な金融プラットフォーム」を目指し、世界目線で挑戦する。

楽天で三木谷さんがモバイル事業を立ち上げる時に言っていた
「日本はもっと国力をあげなきゃいかん」と。

そうじゃないと、この大好きな国は、元気がなくなっていく。
会社規模の大小は関係なく、志を持って挑戦している日本中の 「会社」がもっともっと元気になる必要がある。

そのために僕は、「日本創生」をしなければいけないと思う。
そして、実現する為に必要な1つの方法として、 「お金や人の悩みでつまずかない社会」にアップデートする必要がある。

金融は、インフラだ。

インフラは、あって当たり前のもので、無くなると命に関わるものだ。
だからこそ、誰にとっても必要で、安心できなければいけない。

楽天モバイルという携帯ビジネスに携わらせてもらって、 僕は初めて、このインフラというものの尊さと難しさを経験した。
でも、まだ金融インフラは、誰にとっても安心できるものになっていないと思う。

安心の上に大胆な挑戦が成り立つのだとしたら、その支えとなる土台はもっと強固にしなければならないと感じている。

だから、僕たちは、一昨日宮城が書いたように20億円の投資をする。
UPSIDER AI経理も、累計243億円のベンチャーデットファンド「UPSIDER BLUE DREAM Growth Fund」も、法人カード基盤の外部提供もやっていく。

これまで僕たちが作ってきた仕組みをどんどん外部に提供して、金融インフラをもっと速く、もっと広くアップデートして、日本中の会社を元気にしていく。

そのための勝負を、UPSIDER全体で始めている。
それでも足りないときもある。
支えられないお客様は絶対に存在する。
でも、地球上の全ての挑戦者を支えられるようになるまで、僕たちは諦めない。

何度でも挑戦する。
そして、挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る



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