第2回|なぜ、上流工程が開発費用を左右するのか
こんにちは、臼木香代です。
前回は、システム開発で起きやすい失敗の背景に、定義不足があるという話を書きました。
今回はその続きとして、開発費用や見積もりのブレが、なぜ上流工程の決め方に左右されるのかについて書いていきます。
開発会社に見積もりを頼む前に、何を決めておく必要があるのか。
そして、なぜ上流設計と開発を分けて考えると、見積もりや開発が進めやすくなるのかを整理します。
開発費用は、見積もり前の決め方で変わる
「要件定義は開発会社にお願いすればいい。」
そう思っていませんか。
もちろん、それが悪いわけではありません。
実際、開発会社が上流から入るプロジェクトもあります。
ただ、そこで一度立ち止まって考えたいことがあります。
それは、
「誰に頼むか」より先に、「何を決めるか」がある
ということです。
この順番が曖昧なまま見積もりを依頼すると、金額も進め方も、どうしても揺れやすくなります。
上流設計とは何か
開発プロジェクトには、大きく2つの工程があります。
ひとつは、
何を作るかを決める工程。
もうひとつは、
決めたものを作る工程です。
上流設計とは、前者にあたります。
たとえば、こんなことを決めていく工程です。
このシステムで、誰の何を解決するのか
どんな機能が必要で、どんな機能は不要か
画面はどう動き、どの状態で何が起きるのか
誰が何を承認し、どこに何が保存されるのか
こうしたことが決まって、はじめて
開発会社は「何をどう作ればいいか」を明確に把握できます。
逆に言うと、これが決まっていない状態で発注すると、現場はどうしても「想定」で動き始めます。
その想定がずれたときに、第1回で書いたような、定義不足から始まる崩れ方が起きやすくなります。上流で定義や判断材料が置かれていないと、後工程で手戻りや摩擦が増える構造は、アンチパターン事例でも明確に確認されています。
なぜ、上流設計と開発は分けて考えられるのか
開発会社の強みは、技術力、実装力、品質管理です。
一方で、上流設計で求められるのは、
発注者の言葉を整理すること
前提や定義をそろえること
判断材料を整えること
開発者が実装できる形に構造化すること
です。
つまり、必要な専門性が少し違います。
作る力と、決める力。
どちらも大事ですが、同じではありません。
だからこそ、
上流設計は開発と切り離して考えることができる
のです。
もちろん、開発会社が上流を担うケースもあります。
ただ、発注者側で何を決めるべきかが整理されないまま、「作る人」に「何を作るかも決めてください」と委ねると、役割が曖昧になりやすいのも事実です。
コルテクネでも、要件定義、機能一覧、機能仕様、画面仕様を分断せず、構造的につなげて設計することを商品の中核に置いています。これは、上流が単なる前置きではなく、後工程の精度を左右する土台だからです。
見積もりのブレはなぜ起きるのか
開発会社に見積もりを依頼したとき、
想定より高かった
追加費用が何度も発生した
最初の金額と最終的な費用がかなり違った
そんな経験はないでしょうか。
これは、開発会社が悪いという話ではありません。
仕様が曖昧な状態で見積もりを出すと、どうしても
「おそらくこういう仕様だろう」
という想定が入ります。
その想定が外れれば、追加費用が発生します。
つまり、
見積もりのブレは、仕様のブレです。
だから見積もりの問題に見えていても、本当の原因はもっと前にあります。
何を作るのか、どこまで作るのか、どういう条件で動くのか。
そこが決まっていないまま見積もると、金額も進め方も揺れやすくなります。
上流設計を先にやると何が変わるか
仕様が固まった状態で開発会社に発注すると、少なくとも3つのことが変わります。
1. 見積もりの精度が上がる
開発会社が「想定」ではなく、「決まった条件」をもとに見積もりを出せます。
そのため、追加費用が発生しにくくなります。
2. 複数社で比較しやすくなる
仕様書があれば、同じ条件で複数の開発会社に見積もりを依頼できます。
何をどこまで作るのかが明確なので、比較の軸がそろいます。
3. 開発がスムーズに進む
開発会社が迷わず動けます。
「これはどういう仕様ですか」という確認が減り、手戻りや現場の疲弊も減ります。
前提をそろえ、構造図や仕様整理を入れたことで、画面仕様段階での大きな手戻りはほとんど起きませんでした。発注者・開発側ともにスムーズに合意形成して、開発に進むことができました。

「上流設計だけ外部に頼んでいいのか」
これは、よく聞かれます。
答えはシンプルです。
むしろ、分けた方がそれぞれの質が上がることがあります。
上流設計の役割は、判断できる状態をつくること。
開発の役割は、決まったものを正しく作ること。
役割が明確になると、プロジェクト全体が動きやすくなります。
コルテクネの本質も、「判断できない状態を、安心して判断できる状態に整えること」にあります。技術・AI・外注・業務が絡む複雑な状況で、判断材料を構造として設計することが価値だと整理されています。
つまり、上流設計を先に整えることは、
開発会社の仕事を奪うことではありません。
むしろ、開発会社が本来の力を発揮しやすい状態をつくることでもあります。
まとめ
上流設計でやるべきことは、
何を作るのか。
どこまで決めるのか。
何を前提に見積もるのか。
を整理することです。
ここが曖昧なままでは、開発費用も、見積もりの前提も、開発の進め方も揺れやすくなります。
逆に、ここが固まると、見積もりも、比較も、開発の進み方も変わります。
次回は、私たちが実践している
「構造思考ディレクション」
という考え方と、実際に何をどう整えているのかについて書いてみます。
要件定義・機能仕様・画面仕様など上流工程について、お気軽にご相談ください。
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