選挙制度試案②-衆議院議員選挙制度試案-
衆議院議員選挙、参議院議員選挙、公職選挙法に関する選挙制度試案に関する考察です。今回は衆議院議員選挙に関する考察になりますが、選挙制度の試案にあたっての私のスタンスがありますので、そちらにまず御目通しください。
衆議院と参議院の違いに関する見解
選挙における民意のあり方については、前回のイントロダクションで説明したように、衆議院、参議院とも、投票率に応じた価値観、政策のスタンスの多様性を反映させやすい少数代表制にすることが望ましいと記したところである。ただし、衆議院と参議院とではそれぞれの性質が異なることも事実である。
衆議院は任期を4年としつつ、解散によって任期途中でその資格を失う意味では、その時々の民意の情勢を問うことが求められている。これに対し、参議院は、任期を衆議院より長めの6年とし、かつ任期中の身分は原則として保障されるとともに、半数を3年ごとに改選をするという形を採っており、その時々の民意の情勢ではなく、中長期的な視野で政策のあり方を問うという俗に言う「良識の府」としてのあり方が求められている。
衆議院に求められる選挙区単位
以上の違いを踏まえると、衆議院の選挙制度において、その時々の民意を反映させるかという形を踏まえたものにするためには、地域性のあり方を反映させることが参議院よりも重要であり、選挙区は原則として都道府県を単位とし、東京都については特別区、多摩・島しょと分離することとした。その上で、2020年国勢調査を基にした人口分布において、(※1)東京特別区・多摩・島しょ、道府県のうち人口が最も少ない鳥取県(553,407人)よりも、人口が多い市区町村については都道府県より独立した一つの選挙区とした。独立させた選挙区は、以下のとおりである。
1.政令指定都市
札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市
新潟市、静岡市、浜松市、京都市、大阪市、堺市、岡山市、広島市
福岡市、北九州市、熊本市
2.政令指定都市以外の自治体(特別区)
板橋区、杉並区、世田谷区、足立区、江戸川区、大田区、練馬区
3.政令指定都市以外の自治体(特別区以外)
川口市、船橋市、八王子市、鹿児島市
モデルは1902年から1917年において行われた、原則都道府県単位を選挙区としつつ、市部を都道府県から分離し、独立選挙区とした大選挙区制である。理論的にも都道府県単位を原則としつつ、人口最小県である鳥取県よりも人口が多く、都道府県に準ずべき権限を持つ政令指定都市、その候補たる自治体、都区制度の抜本的是正を前提が求められている中、都道府県以上の人口を持つ特別区は都道府県から分離するのが望ましいと判断した。
選挙区一覧
衆議院の選挙区一覧試案を以下の通り提示する。なお、定数は現行の465を基準とし、定数配分は最大剰余法に基づいている。
北海道・東北

関東(除く東京)

東京

甲信越・北陸・東海

近畿

中国・四国

九州・沖縄

最大の定数は埼玉選挙区の20と人口の多い都市部では大選挙区の傾向となるが、最小の定数は都道府県では鳥取選挙区、島根選挙区の2と旧中選挙区制度の傾向がある意味では中選挙区制度と大選挙区制度の混合の様相を呈していると考える。
中選挙区制による選挙区単位を採用しなかった理由
現行の小選挙区比例代表並立制の前に導入されていた選挙区である中選挙区制度は、護憲三派内閣の時代に導入された都道府県単位を原則とする大選挙区制度と1人のみを選出する小選挙区制度の中間としてという意味である。この制度は、そもそも護憲三派を構成する政党のすべてが議席を獲得できるように定数を3~5としたという政治的な妥協の産物であり、(※2)きちんとした理論的根拠に基づいていない選挙制度であると判断したことによる。
立候補要件及び選出方法
選挙区単位は都道府県原則としているが、立候補は政党単位による届け出を原則とする。そのうち、国会に議席を持ちかつ直近の衆議院・参議院の両選挙において全国単位で総得票数3%以上の得票数がある政党についてはすべての選挙区において政党単位による届け出を認め、それ以外の政党、政治団体については立候補を予定する選挙区の有権者の2%以上の署名を選挙管理委員会に届け出た場合に限り政党での届け出を認めることとする。無所属候補についての立候補は認めるものの、無所属候補の立候補についても、立候補を予定する選挙区の有権者の2%以上の署名を選挙管理委員会に届け出た場合に限り立候補を認めることとする。政党要件、有権者の署名要件の導入に伴い供託金制度を廃止する。
投票は一人一票制とし、政党による比例代表ドント式を原則としつつ、無所属での立候補を認めることとする。また、投票用紙には、政党名、候補者名どちらを選択してもよいことする。比例名簿の順位は政党が順位を同列にするか、順位をつけるかを決める単純拘束名簿式とする。(※3)政党に所属する候補者は候補者の名前の得票数による当選ではなく、所属する政党の得票順位に基づく得票数によって当落を決めることとする。無所属による立候補者は、総得票数において比例代表で届け出た政党による得票数と比較考量の上、獲得した得票数が政党での最低得票獲得数を上回った場合に限り当選を認めることとし、無所属候補が当選ラインに達した場合には、無所属候補が出なかった場合の比例の議席を無所属候補の数ごとに移動させることとする。以下に具体的な事例を挙げたい。
選出方法の具体例

上記の図では、定数10の選挙区において、政党として、A党、B党が立候補し、無所属候補として、C候補、D候補が立候補をしている。なお、単純拘束名簿式では、順位は政党が同列とするか順位を変えるかを決められるが、わかりやすくするためにすべて同一順位で届け出たものと仮定する。
A党は、〇~凹までが候補者名で1000票を獲得、政党名で1500票を獲得し、合計2500票を獲得している。ドント式により、A党は1位の〇から凸までの6名の候補を当選者とする。
B党は、■~◎までが候補者名で670票を獲得、政党名では800票を獲得し、合計1470票を獲得している。ドント式により、B党は本来であれば■~●の4名の候補が当選者であるはずだが、無所属候補のCが600票を獲得しているため、1議席分がCに移り、そのため、当選者は■~★までの3名が当選者となる。
無所属候補のDは120票と、A党で当選をした△の60票やB党で当選した★の100票よりも得票数としては多い。ただし、Dは政党ではなく無所属での立候補であるため、政党の得票数の数には及ばず 落選となる。
以上からすると、参議院の比例代表における非拘束名簿方式による逆転現象が起きる点と共通しているところが論争となるところではある。ただし、衆議院においては政党本位の政治であることが望ましいと考え、無所属候補についてはハンディキャップをつける形での立候補を認めるに留めた。
その他
投票用紙を現在の自書式を改め、候補者の名前を記載したリスト方式とし、政党名の欄ないし候補者の欄に〇を書く形とする。電子投票が行われている自治体もあり(※4)、将来的には電子投票のあり方も踏まえ検討をすることとする。
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いかがだったでしょうか。次回は、参議院の選挙制度に関する考察になります。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。
脚注
(※2) 中選挙区制(ちゅうせんきょくせい)|Historist(ヒストリスト)
(※3) 単純拘束式では、党が順位を決める要素があるため、非民主的な要素があるが、非民主的な要素をどう判断するかは有権者の判断に任せることとした。
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