パティ・スミスに学ぶ「後悔のない言葉」の大切さ|名曲『レドンド・ビーチ』の歌詞が教えてくれたこと
はじめに
僕が地元でよく通っていた喫茶店。
そこのマスターは無類のレコード好き。
洋楽なんて全く知らなかった僕に、
マスターはたくさんのレコードを見せては、
その針を落として聴かせてくれました。
レコード特有の、
パチパチというノイズ混じりの
アナログな音。
それに包まれながら飲むコーヒーは格別で、
今でも目を瞑るだけで、
あの芳醇な香りと温かな空気感が
脳裏を駆け巡ります。
ある日、マスターが僕にこう言いました。
「この世の中に、音楽は無数にあるけれど、
一生大切にしたいと思う一曲には、
そうそう出会えない。
僕は、そういう音楽と出会いたくて、
ずっと音楽を聴き続けているよ。
だから、僕にとって音楽は『宝探し』なんだ。」
そして…その言葉に感銘を受けた僕には、
「一生大切にしたい宝物」のような曲が
いくつか存在します。
今日は、その中でも大好きな一曲
パティ・スミス
『Redondo Beach(レドンド・ビーチ)』
についてご紹介します。
軽快なレゲエのリズムに乗せて
歌われるその曲は、
一見すると陽気で心地よいものに聞こえます。
しかし、その歌詞の内容を深く知ったとき、
私は言葉を失いました。
描かれているのは、
激しい喧嘩別れをした「君」を必死に探す姿。
そして、浜辺で突きつけられる冷酷な現実。
あまりに壮絶な物語が、
あの跳ねるようなリズムの裏側に
隠されていたのです。
【あらかじめお伝えしたいこと】
本記事は、筆者(田端うつ郎)による
個人的な考察・見解を多分に含みます。
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純粋に
『アーティスト』『楽曲』の魅力を伝えたい、
その一心で執筆しています。
1. 曲に隠された切実な物語
この
『Redondo Beach(レドンド・ビーチ)』が
描いているのは、ある残酷な喪失の物語です。
激しい喧嘩をして部屋を飛び出した
「彼女」を追いかけて、
主人公はレドンド・ビーチへと向かいます。
しかし、そこで目にしたのは、
海から引き上げられた、
命を失った一人の女性の姿でした。
歌詞の中で、
主人公は広大な砂浜を歩き回り、
すれ違う人々に
「小さな女の子を見なかったか」と
問いかけます。
しかし、
その必死な問いに対して返ってくるのは、
愛する人を失ったという、
あまりに冷酷で受け入れがたい現実でした。
絶望のあまり顔を上げることもできず、
ただ足元の砂粒や、
寄せては返す波の泡を見つめ続けるしかない…。
そんな閉塞感のある情景が、
この曲には滲んでいます。
2. モデルになった人物とその背景
実はこの歌詞には、
モデルとなった人物がいます。
パティ・スミスの実の妹、リンダ・スミスです。
ある日、
パティとリンダは
激しい姉妹喧嘩をしてしまいました。
怒ったリンダがそのまま家を飛び出し、
一晩中帰ってこなかった際、
心配と罪悪感に苛まれたパティが
ノートに書き留めた詩が、
この曲のベースになっています。
現実の妹さんは無事でした。
しかし、パティはあえてその瞬間に感じた
「もし、自分の放った言葉のせいで、
もう二度と彼女に会えなくなってしまったら…」
という底知れない後悔と恐怖を突き詰め、
歌詞の中では
「最愛の人の死」
という残酷な結末として描き切ったようです。
3. なぜ、あえて明るいメロディなのか
人生で起きた最悪の出来事を、
そのまま暗く、
重い旋律で歌うこともできたはずです。
しかし、
彼女はそれをあえて軽快なリズムに乗せて
世界に放ちました。
そこに僕は、
表現者としての「凄み」を感じます。
どんなに辛い経験や物語であっても、
それを自分なりの形に変え、
外へと解放すること。
それが、
悲劇を悲劇のまま終わらせないための、
彼女なりの「表現」だったのではないでしょうか。
さいごに
私たちの日常のすぐ隣には、
時として救いようのない喪失が潜んでいます。
パティ・スミスが感じたあの恐怖は、
決して他人事ではない。
大切な人と過ごす当たり前の毎日の中でも、
明日何が起きるかは誰にも分からないのです。
だからこそ、
突然の別れが訪れたときに
悔やんでも悔やみきれないような言葉を、
僕たちは大切に伝えるべきなのだと痛感します。
今、目の前にいる人、
関わってくれる人たちを心から思いやり、
できるだけ後悔のないように声をかけていきたい。
パティ・スミスの歌声は、
そんな「些細な日常の言葉」でも、
大切にすることを、
この『レドンド・ビーチ』という曲に乗せて
伝えてくれていると思います。
あなたが聴いて、
「日常を見つめ直した」大切な曲はありますか?
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