あなたは路地裏を歩いています
予定よりも打ち合わせが早く終わったあなたは、昼食抜きも覚悟していたから、なんだか得した気分で歩いていた。
朝晩はすっかり寒くなり、冬が近付いてきているのを実感できるけど、こんな晴れた昼下がりはイチョウの黄色が眩しく、その背景には青空が広がっている。
秋晴れだ。
長く厳しい暑い日々がやっと過ぎ去ったかと思うと、秋は駆け足で通り過ぎ、あっという間に冬がやって来てしまう。
秋を捕まえた。
そんな気分のあなたは、せっかくなら初めて訪れたこの街を散策してみよう。オシャレなカフェでも見つけて、ゆっくり読書するのも悪くない。夕食の支度が間に合うように帰宅すればいいかな。そんなことを考えながら自然と足は人通りの少ない方へ向く。
メインの通りから二本も裏通りに入ると、すっかり喧騒は遠のき、穏やかな午後が広がっている。
歯医者や小学校、昔ながらの文房具屋さんや畳屋さんが住宅と共に点在している。いい雰囲気だ。
いい雰囲気なのだけれど、一際異彩を放っているビルがある。いや、いたって普通のビルで変わったところはない。ただ、おそらく低層住宅地であろうと思われる場所に一棟だけ聳え立っているのが違和感しかない。
特に興味を覚えた訳でもないけれど、ビルのある方向へと角を曲がって路地裏に進む。
美味しそうなきんつばを横目に和菓子屋さんを通り過ぎ、少し歩くと落ち着いた感じのする、あなた好みの喫茶店を見つけた。ここでお昼ご飯にしよう。
入り口の少し古びた木製のドアを押して中に入る。
カランコロン…
なんとも言えない懐かしい音が響く。
店内はコーヒーの香りに包まれていた。
午後の中途半端な時間帯ということもあって、店内は空いている。
パリッとしたスーツを着た男性がソファ席でコーヒーを飲んでいる他は、テーブル席でパソコンを広げつつオムライスを食べている若い女性が居るだけだ。
「いらっしゃいませ」
20代と思われる女性店員が案内してくれた。
窓際の明るい席に腰を落ち着かせ、備え付けのメニュー表を手に取ると『喫茶花』と書かれている。特に店名は見ないで入ってしまったな。
さて、何にしようかな…
あのお客さんが食べているオムライスが美味しそうだけど…トーストにあんこのトッピングも捨て難い…
お昼ご飯には少し遅くなっちゃったから、トーストにあんこにしよう。
甘いあんことバターの塩味が絶妙なバランスのトーストは、あっという間に平らげてしまい、バッグから文庫本を取り出す。
しばらくページをめくっていたが、視界の先に見えるさっきのビルがなぜか気になる。
…行ってみようかな。
お会計を済ませ店を出ると、まっすぐビルへと向かった。
近づくにつれて、ビルの場違い感が際立ってきた。周りに公園や月極駐車場があるものの、それ以外は二階建ての住宅やアパート。その中で見上げるようなビルが一棟だけ。

「ワールドブルー…」会社だったんだ。見上げたままつぶやいた。
どこかで聞いたことがある様な…
まぁ、会社には用はないし戻ろうかな。視線を下に戻した時、一階部分に書店があるのに気が付いた。
書店を見つけると、あなたは何か面白そうな本に出会えるかもと、ついつい入ってしまう。
広さはコンビニくらいだろうか。雑誌の類は置いていない。文庫や単行本がほとんど。
いわゆるベストセラーや人気作家の本も見当たらない。
店主のこだわりのラインナップといったところなのだろうけど、やたらと『なんのはなしですか』と『ワールドブルー物語』と付いたタイトルが目立つ。
『ワールドブルー』ってこのビルの会社だよね?会社の物語って、ちっともそそられないんですけど。
もうひとつの『なんのはなしですか』ってのもおびただしい量が並んでる。
試しに一冊手に取ってめくってみる。エッセイの短編集だった。短いものだと1ページにも満たない。これは……なんのはなしですか?
分からない。
いくつか読んでみたけれど、どれもこれも一体なんのはなしですか?
気が付くと一冊まるまる読み終えていた。
ひとつ分かったことがある。
それは、中毒性があること。かなり危険な本なのかも知れない。
なかでも、大量に平積みされている『三年間。no+eの街の路地裏で「なんのはなしですか」と叫んでいた。』 これはじっくり読んでみたくなっている。
よし、買って帰ろう。レジへと向かう。
レジでは、にこやかだけれどもヨレヨレのおじさんが対応してくれた。

名札には『蒼 広樹』とある。『あお』かな?『そう』かな?
ネガネにネクタイも青。ワールドブルーの会社。
これで『あお』じゃなかったら納得いかない。
「いらっしゃいませ。お買い上げありがとうございます。ご一緒に『ワールドブルー物語』はいかがですか」にこやかに言う。
ハンバーガーショップか!って思わずツッコミたくなったけど、ギリこらえて「いえ、大丈夫です」とだけ言う。
途端におじさん顔が寂しげになる。おいおい…そんな顔されても困るよ。それとも買わせにかかってる?
「そうですか。きっと面白いと思うんだけどなぁ」
いや、出されても要らないって。
「今日はいいです。また今度にします」
「そうですか…残念だなぁ…」
ちょっと可哀想な気もした。
その時あなたは
→買う
→買わない
「カバーはおかけしますか?」
「はい。お願いします」

あ、ここは『なんのはなしですか書店』て言うんだ。納得出来たような出来ないような微妙な気持ちになった。
「このブックカバーいいでしょう?インターネットでも買えるからね!」
「あ…はい」
「他にも路地裏にはたくさんのお店があるから、散策してみてね!」
「あ…はい」
「ありがとうございました。また来てね~」
なんだかよく分からないまま店を出た。
#なんのはなしですか
#なんのはなしです革
#ワールドブルー物語
338話目。
どうも、あおです😄
楽しく書ければいいじゃない!と自分に言い聞かせている今日この頃……皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
と言うことで今回は、
新しくブックカバーを作ったから買ってね!ってお話です。
あからさま過ぎるだろ…
作品に物語を付けたいなと思って、書き始めたらなんだか楽しくなっちゃって、こんな感じになりました。
一部の方には懐かしく感じられるんじゃないでしょうか。
改めて、今回作ったブックカバーなんですけど、路地裏で盛り上がっている『#なんのはなしですか』で書店を出したら、こんなカバーを付けて欲しいな。というのをイメージしたレザーのブックカバーです。
お店は架空ですが、ブックカバーは実際にBASEで販売していますので、ぜひ。
早いもの勝ちですよ~
他にもユニークなブックカバーを販売しているので覗いて(そして買って)ください。
もし、こんなブックカバーが欲しい!というものがあればお作りします。
また、こんな革小物欲しい!というお声かけもお待ちしてます。
あなた専属のレザークラフト作家 蒼広樹がお手伝いします。
他にもこんなものを作っています。
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あおでした😄
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