【毎週ショートショートnote裏】ドジ修行
「お客さんにお茶、お願いね」
湯呑みを三つ、お盆にのせてドアを開ける。
座っている三人の男性のうち、中央の人がとくに偉そうだった。
一歩踏み出した瞬間、足がもつれ、倒れ込む。
ぐらついたお盆から茶碗が飛び、中央の男性に命中した。
「し、失礼しました!」
立ち上がって頭を下げると、男は無言で頭に手をやりーーーするりとカツラを外して、濡れた顔を拭った。
その瞬間、心臓が跳ねた。
真っ正面から見たのに、全く気づかなかった。
気づけていれば、茶碗の角度を変えたのに。
「七十点」
男の声は冷静だった。
「悪くはないが、カツラに気づけなきゃメダルは遠い。上位勢なら、吹っ飛ばした上で落ちたカツラで茶を吹いてる」
わたしは黙って割れた茶碗を拾った。
初歩的なミスをした恥ずかしさ。不甲斐ない自分への悔しさで、顔がカッと熱くなる。
ーーーまだまだだ。
ドアの向こうから声が飛んだ。
「次、階段落ちの第四セット、準備できました」
気を取り直して背筋を正し、一礼する。
ドジっ子世界大会まで、あと三週間だった。
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