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【毎週ショートショートnote】誤字集合

SNSで人の誤字を拾っては晒し、笑いものにするのが日課だった。
朝も昼も夜も、タイムラインを血眼で探し回っては、打ち間違いを切り抜いて嘲笑の種にする。
誤字は滑稽で、誤字をする人間は怠惰で無知で、自分だけが正しい言葉を操れると思っていた。

ある朝、いつものように誤字を指摘しようとして、指が止まった。
「おはよう」が出てこない。
打ってみる。「起葉用」。いや違う。でも、なにが?
頭を抱えている間に、ほかの言葉も形を失っていく。
簡単な漢字が書けない。打てない。わからない。
いままで論ってきた文字たちが、頭の中をぐるぐる回る。
なにが正しくて、なにが間違いなのか。
文字の、言葉の輪郭が溶けていく。

スマホを握りしめる手が震えた。
声を出してみる。喉から漏れたのは、音だけの、意味を失った言葉だった。
助けを求めようにも、なんて言えばいいのかわからない。
SNSを開くと、誰かの誤字がずらりと並んでいた。
すべてが正しい気がした。正しくて、完璧で、美しく見えた。

集めて論ってきた誤字たちが、頭の中で整列して、僕を見て笑っている。
もう自分の名前さえ、思い出せなかった。

(469文字)

前回のお題はこちら⇩


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