【毎週ショートショートnote裏】無限の尾
ふかふかの尾と出会ったのは、森のはずれの散歩道だった。
夕暮れどき、小さな祠の脇を通ると、木陰にひらひらと白いなにかが揺れていた。
近づいてみると、それは動物の尾だった。けれど、なんの動物かは見えない。
ただ尾だけが、空気をふるわせるように揺れていた。
そっと触れてみると、信じられないくらい柔らかくて、あたたかくて、すっぽりと心が包まれるような気持ちになった。
それからわたしは、毎日のようにその尾を撫でに通った。
一度触れると忘れられない手ざわり。まるで、わたしのためにそこにいてくれるみたいだった。
ある日、尾はくるりと動いて森の奥へと進んでいった。
わたしは、ためらいながらもついていった。
尾はときおりこちらを振り返るようにふるえて、暗い森の奥へ奥へと進んでいった。
そして、見つけた。
暗い森の奥、しんとした地面の上に、それは果てしなく折り重なっていた。
尾。尾。尾ーーー。
ふかふかの尾が、無限に連なってどこまでも続いていた。
どこからどこまでが一匹なのかわからなかった。けれど、不思議と怖くはなかった。
そのとき、わたしはようやく気づいた。
自分の指先が、腕が、背中が、ふわりと毛深く、やわらかくなっていることに。
もう言葉は出せなかったけれど、なんだか心は穏やかだった。
わたしも尾の一部として、静かに次の誰かを待つことにした。
ふかふかの手ざわりに、つい誘われてしまう誰かを。
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