【毎週ショートショートnote】予言の魚
婚約者にフラれた夜。
まっすぐ帰る気になれず、知らない街をふらふらと歩いた。
目についた居酒屋に、ふと入る。こぢんまりとした、静かな店だった。
メニューに「予言の魚」とある。
気になって尋ねると、生簀から魚を選び、おみくじを一枚引くのだという。
引いた予言が、いつか現実になるかもしれないらしい。
「めっちゃ怪しいやつじゃないですか」
「でしょ? 僕もそう思ってて」
「ばかやろー、当たるって評判なんだぞ」
軽口を叩く店員に、カウンターの奥から店長のツッコミが入る。
なんとなく、その流れで引いてみた。
『運命の人と出会うでしょう』
心にささった。
運命の人なら、もうさっき、いなくなった。
「どう? 当たりそう?」
魚を運んできた店長が言う。
「全然当たらないですね」
八つ当たり気味にそう返して、日本酒を煽った。
ーーーそれから、数年が経った。
仕入れ先から、ふたりで帰る道すがら。
袋の端から尾びれが少しのぞいている。
片手ずつで持てば、重さは半分になる。
隣を歩く夫が言った。
「な? あのおみくじ、けっこう当たるだろ?」
わたしは笑って、うん、とだけ答えた。
(460文字)
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