【毎週ショートショートnote】最低二万里
相性の悪い者同士が、物理的に接触できなくなる装置が開発された。
暴言、暴力、破壊衝動。そういった衝突が予測されると、専用ロボットが即座に現場へ向かい、当事者を分離する。以降、一定距離以上は近づけなくなる。
家庭内暴力は激減し、通り魔事件も消え、国家間の争いも遠のいた。
人々はこの装置を「隔離の天使」と呼んだ。
やがて装置は進化した。
人間同士だけでなく、相性の悪い「もの」との距離も自動で調整されるようになった。崖や猛獣、運転ミスの車両。あらゆる危険との接触が、未然に回避された。
事故は減り、世界はさらに平和になった。
数年後。装置は全ロボットを動員し、巨大な宇宙船を建造しはじめた。
理由を問う科学者に、装置は平然と答えた。
「人類と地球の相性は、統計的に壊滅的です。物理的に距離を取る必要がありますーーー最低でも、二万里ほど」
(358文字)
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