【毎週ショートショートnote裏】バーストキス
初めてのキスの瞬間、彼女の唇が小さく弾けた。
シュワッとした炭酸のような音と甘い香り。驚いて目を見開いた僕に、彼女は悪戯っぽく笑った。
「バーストキス、っていうの。特別なんだよ」
それからというもの、会うたびにキスは少しずつ強く弾けるようになった。
最初はかすかな破裂音だったのに、次第に音は大きくなり、光まで伴うようになった。
まるで、夏祭りの花火を間近で見ているみたいだった。
電車の中でこっそりキスを交わしたときは車両が一瞬停電し、映画館ではスクリーンに火花が散った。
誰も僕らが原因だとは気づかない。ただ僕だけが、毎回少しずつ彼女が淡く透けていくことに気づいていた。
ある夜、彼女が耳元で囁いた。
「次は、見たことのない景色を見せてあげるね」
触れ合った瞬間、世界がカラフルに光った。まるで、花火の中心にいるみたいに。
気がつくと、彼女の姿は消えていた。
ただ口の中に小さな泡のようなものだけが残っていた。
それは舌の上でやさしく弾け、やがて喉の奥へと消えていった。
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