【毎週ショートショートnote】ファースト奇襲
恋愛にはファースト奇襲が大切だと、どこかで読んだ。
相手が心の準備をする前に、一気に思いを伝える。勢いがすべて。
それを信じた僕は、気になる彼女に勇気を出して告白した。
「好きです。付き合ってください」
彼女は驚いたように目を丸くして、それから小さく笑ってうなずいた。
胸が弾けるような音がして、僕は勝ったと思った。
その後の日々は順調だった。
並んで歩く帰り道も、休日の映画館も、どれもが新鮮だった。
けれど、ふと気づく。
僕が「観たい」と思った映画は彼女はすでに観ていたし、僕が「一緒に行きたい」 と調べたお店は彼女が前から知っていた。
まるで、僕の好みを先回りして用意していたみたいに。
ある日、理由を聞いてみた。
どうしてそんなに感性が合うのか、と。
彼女は笑って首をかしげただけだった。
その笑顔を見て、気がついた。
奇襲のつもりが、奇襲されていたのは僕のほうだったことに。
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