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古本とレコードに囲まれた空間で過ごした新たな地縁の在り方を感じる年越しの夜|山猫堂 in 岩手県陸前高田市

地縁ーー住んでいる地域における人間関係等の縁故ーーというと柵や束縛が連想され、窮屈さや鬱屈とした感情が呼び起こされ、とりわけ地方と言おうか田舎が連想されそうだけれども、生きていれば、たとえ東京だろうと海外だろうと自然に生じるのが地縁であり、そこには本来的に柵や束縛といった要素は介在しない。

某教師ではないけれど、人という字が寄りかかる人間と支える人間とで構成されて見えるように、人間は生きていれば誰かしら他者と関わり合い支え合っていくのが常であり、独りで生きているように思えても、どうしたところで独りで生きられていない。

だから、生きていれば自ずと地縁ができていく。それを認識できているか、できていないかは人によるだろうけれど。そんな地縁が、昨今薄れていっていると言われて久しい。少子高齢化で人口減少が進む日本において、従来と変わらない密度での人間関係を、自身が生活する地域で維持するのが難しくなっているためと思われる。

地方の東京化とでも言おうか。未だステレオタイプに『田舎にはプライバシー』がないと叫ぶ偏狭な考えに囚われた人間はいるわけだけれど、現実問題として近所は年々遠くなり、会話を交わせるだけの人の数が減っている。恐らく現代においてプライバシーがないのは、田舎よりも東京の方でなかろうか。

東京のプライバシーを支えているのは、他人への無関心だけであるが、どうにも監視社会化している昨今では、その無関心ワールドも崩れつつあるように思える。ステレオタイプにSNSが悪いと言うつもりはないにせよ、SNSに毒された社会になっているのは一定の事実だろう。物理的に人間の目が少ない田舎の方が、プライバシーは守りやすいのである。

もっとも昨今の田舎は、他人の目よりも熊さんの目の方が気になるわけだけれど。ある日森の中でなくても出会えるのだ。エンカウントした瞬間がエンドになる熊さんの存在は、どれだけ刺激に溢れた東京都内であろうと決して味わえない究極の刺激である。何せ、出会ったが最期、打つ手がない。刺激というか死劇である。

さて、そんな地縁が目に見えて希薄化していっている地方だけれども、昨今は様々な人々による様々な取り組みによって、従来とは異なる新たな地縁の形が生まれてきているように思われる。それが今回のnoteで取り上げる山猫堂での年越しである。


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古本とレコードに囲まれた空間で過ごす年越しの夜|山猫堂 in 岩手県陸前高田市

2025年12月31日。岩手県陸前高田市の山猫堂にて、年越しが行われた。誤解がないように書いておくと、年越しイベントとして何か大々的に催しが行われたという話ではなく、人々が集まり年を越した話である。なお、2025年の本noteにおいて、恐らく最も言及された(登場した)山猫堂については、以下の記事を参照して欲しい。

山猫堂 in THE NIGHT
泊まれる古本屋の山猫堂には古本以外に可愛い雑貨も多い

大晦日の夜の訪れと共に、常連を中心とした数名が山猫堂を訪れ、各々持参した食べ物や飲み物を店内に並べる。店内奥には、この日に合わせたテーブルと椅子のレイアウトが敷かれ、参加者が飲食と歓談を楽しめる空間が広がった。

山猫堂年越しレイアウト
飲食を楽しめる空間 with トップガンの玩具
集まった飲み物やお菓子たち
産直はまなすからの頂き物

山猫堂年越しは、乾杯から始まり、訪れた常連たちや宿泊していたフランスからの留学生が各々自由に歓談しながら、美味しい料理などに舌鼓を打ち、日が変わる瞬間まで続いた。

踊り、イラスト、間違い探し、切り紙など大人と子供が入り混じり、自由に過ごす傍ら、音楽にまつわる話など様々な会話が飛び交った。古本や雑貨に囲まれた空間で過ごす年越しという日常の取り合わせは新鮮で、度々訪れてきた空間にこのような使い方もあったのかとハッとさせられた。

時計の表示が0:00に変わるのに合わせてクラッカーを鳴らし、その後陸前高田市小友町上の坊の寺社へと皆で赴き、除夜の鐘を鳴らした。一度鳴らすごとに数を数え、108回の鐘をつく。宵闇の中に響く金の音は荘厳で、神妙なものに感じられた。

スタッフと常連客、地域住民と移住を経た地域住民、この日初めて会った面識のない人々、家族ではないが他人でもない様々な関係性が入り混じりつつ、緩やかな縁で繋がった人々が年の瀬の夜を過ごす。

従来の地縁とは異なりつつも、それでいて従来の地縁と遜色ない色彩の関係性。そんな新しい地縁の在り方を感じられる時間だった。社会環境が大きく変わっていく中、人々が結ぶ縁もまた変容してきているのかもしれない。

陸前高田市小友町で除夜の鐘をつく
陸前高田市小友町で除夜の鐘をつく一向と地元の方々

山猫堂ではアーティスト・イン・レジデンス『モグAIR』開催中

今回年越しが行われた岩手県陸前高田市の山猫堂では、アーティスト・イン・レジデンス『モグAIR』を開催している。数名のアーティストが「空き家」をテーマにして、家・人・ものに触れ、制作を行う。2026年1月1日現在、1名のアーティストの作品が展示されている。古本やレコードに関心のある方々はもちろん、空き家をテーマにしたアートに関心のある方々もぜひ一度訪れて欲しい。

モグAIR2025
モグAIR2025作品の一つ
天井付近に掲示されたアート
モグAIR2025の制作物の蚊帳
モグAIR2025の制作物の蚊帳
モグAIR2025の制作物の蚊帳
モグAIR2025の制作物の蚊帳
モグAIR2025の制作物の蚊帳
モグAIR2025の制作物の蚊帳:リアルな貝殻が使われている
モグAIR2025の制作物の鏡の埋め込まれたほら貝
モグAIR2025の制作物の蚊帳を通して見た世界

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