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町と書店は似ているーー『田舎には何もない』を生む知識不足の構図|仙台ふららん「東北探訪 気仙沼ツアー」を通じて知る気仙沼市の有形文化財(建築物)の物語

町と書店は似ている。

『この町には何もない』そんな言葉が、田舎であればあるほど、多くの人々の口からこぼれ出る。しかしながら、どんな町にも物語がある。土地の成り立ちや建築物の成り立ち、そこで暮らして来た人々によって積み重ねられた歴史、そうしたもの全てが、等しく物語である。

我々が普段目にしている町の姿は、いわば本の表紙に過ぎない。ただ目にしているだけでは、表紙の内側に描かれている絵図も書かれている物語も何もかもが分からない。分からないから、あたかも何もないように感じるのだ。まさにただ本が置かれている書店である。

本は、表紙を開いて、その先にある絵図や物語に触れて初めて面白みを感じる。表紙を開かなければ、鮮やかな色が塗られただけの紙の束だ。町も同じである。目に見える建物や土地、人だけを見ていたら、その面白みは分からない。だから表紙を開くように、その中に存在する物語に触れる必要がある。

2025年6月に開催された「設計者が語る!気仙沼の土木デザイン」は、まさにそうした町にある物語に触れる機会だった。そして、2025年9月13日に開催された仙台ふららんによる「東北建築探訪 気仙沼ツアー」もまた、町にある物語に触れる機会だった。今回のnoteは、そんな「東北建築探訪 気仙沼ツアー」について書こうと思う。
※有料部分を読まなくても「東北建築探訪 気仙沼ツアー」で巡った場所についての話は読めます


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あまり知られていない宮城県気仙沼市の歴史的価値の高い建築物の物語を知る旅|仙台ふららん「東北探訪 気仙沼ツアー」

仙台ふららんによる「東北探訪 気仙沼ツアー」は、雨がパラパラと降る中での開催となった。気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ(pier7)に集合し、そこでスタートを切っている。

※2,500円とあるが、一部・二部各2,500円であり、合計5,000円であった

KNEWS(ニューズ)|民間観光案内所の紹介を伺う

Pier7にて、民間観光案内所であるKNEWSの紹介を伺る。KNEWSは、昨年までチャレンジショップにてお土産屋を展開していた、気仙沼市内の建設会社が運営している。

気仙沼市の顔とも言える内湾エリアは、多くの観光客の目的地であり、観光の目印のようなエリアになっている。仙台市から直通のバスの停留所があることもあり、多くの人々が内湾エリアに集まる。一方で、内湾エリアを訪れたものの、どのように周辺を巡って良いか分からず困る人々が少なくない。

事実、内湾エリアを構成する南町や魚町、八日町など、近隣の地域へと足を伸ばす人々は多いと言えず、そうした点が課題になっている。KNEWSは、そうした課題の解消に資する重要な存在である。KNEWSがオープンして以降、内湾エリアから近隣地域へと足を運ぶ人々が増えており、その存在感は増している。

Pier7:集合場所

男山本店店舗|東日本大震災による流出から復旧した気仙沼市を代表する酒造の一社

大正元年創業の気仙沼市を代表する酒造の一社である男山本店。東日本大震災では、一階部分と二階部分が流失し、三階部分が元の場所から離れた場所で見つかっている。その後、文化財保護の一環で、三階部分の部材の多くを再利用・修繕し、現在の店舗の三階部分として復元している。

男山本店|三階部分が東日本大震災以前の店舗を復元したものとなる
店内にある酒呑みのテーブル
現在、男山本店三階部分は展示場として利用されている
窓は上げ下ろし式

男山本店では、三階を探訪し、内側から復元された建物についてその様子を見るとともに、資料を元に復元の様子について知る時間を取っている。ちなみに男山本店では、柚子酒を販売している。日本酒が飲めない人にとっても飲みやすく、また女性からの評判が高い。

筆者も飲んだことがあるが、柚子の香りと程よい甘酸っぱさが口に広がる味が素晴らしく、注意しなければ一日で一本飲み干しそうになる美味しさであった。ふるさと納税の返礼品にもなっているため、ぜひ購入して味わって欲しい。


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角星(かくぼし)|120年の歴史に裏打ちされた酒造の建物と会社の歴史について知る

清酒の両國や純米酒の水鳥記で知られる角星の建物もまた、東日本大震災によって大きな被害を受け、文化財として復元された建築物である。角星では、代表取締役社長の斉藤氏より、東日本大震災からの復旧の歩みや当時の様子、また角星の建物の歴史について話を伺った。

角星のお店
角星の二階は展示場になっている
建物の変遷などを伺う
東日本大震災の年の1月に撮られた写真
壁の構造が見えるようになっている
天井裏の様子が見られるようになっている
矢羽根やお宮が2ずつある
床の中が見られるようになっている
角星を代表する水鳥記のラインナップ
創業当初と今の移り変わりが見られる電話番号一番は今でも保有しているとされる

角星の製造工場は、元々は店舗と同じ敷地内にあったとされる。東日本大震災以前にそれが太田地域に移ったが、東日本大震災で痛み、現在は鹿折地域にあるとのこと。内湾エリアにあった店舗は東日本大震災で被災し、大きな被害を受けたが、文化財復旧の一環で復元された。それが今の店舗である。

東日本大震災以前の店舗の屋根瓦、看板などを再利用したとのこと。復元にあたっては、図面がなかったため、東日本大震災の年の一月に撮影された写真を元に割合で割り出して再建する形が取られた。このとき復元にあたったのは、神奈川県横浜市の文化財修復の知見を持った設計会社とされる。

ちなみに東日本大震災で被災した店舗の建物は、大正、昭和の大火を経て建て直されたもので、東日本大震災時点で築80数年程度だったようだ。大火を経て、和船を解体して生まれた木材を利用して建てられた。東日本大震災後の町の復旧過程で、いち早く再建を達成し、住民たちから街の復興の希望の象徴のように扱われた。

斉藤社長を当時を思い出しながら、そうした声をかけてもらったことが、早く再建して良かったことだと語っている。ところで、角星を代表するお酒の両國だが、名前の由来は陸中・陸前の二国を意図されているとのこと。商品名の由来を聴く機会は中々ないだけに、貴重な時間だった。両國、水鳥記とは異なるが、角星も柚子酒を提供している。ぜひ購入して味わって欲しい。


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RSTで昼食

角星を探訪し終えた後、昼食の時間となった。筆者はRSTで談笑しながら昼食を取っている。このとき、カムチャッカ半島地震により、津波予報が出されたことを知った。雨は、勢いを増し、大雨と呼んで良い程の激しさになっていた。一週間ほど前、気仙沼市は豪雨による浸水被害等が出ていたこともあり、薄っすらと緊迫感が込み上げる。

エビピラフ|とても美味しい
ウインナーコーヒー
雨の勢いが増した

小野建商店|歴史的な意義を持つ数々の財が収められた蔵を探訪する

昼食後、小野建商店を訪れる。大正5年に創業した小野建商店には、昭和25年に創建した立派な土蔵があり、国の登録有形文化財に指定されている。こちらの土蔵も東日本大震災で大きな被害を受けた後、文化財保護の一環で修復されている。

小野建商店


小野建商店土蔵
美しいそばちょこ
歴史を感じられる美しい時計が壁に並ぶ
武将を象った人形や七福神の人間など、色鮮やかな人形が並ぶ
壮観
今ではとんと見られなくなった長持も歴史を感じさせる
美しい表札
土蔵の二階へ
二階にも歴史のある財が並ぶ
漁船で使われていた漁具たち
カツオ漁で用いられている針
サメの顎骨が並ぶ神棚
亀のオブジェ
屋根は、マグロ船の船体とされる
霧笛
気仙沼市を訪れてきた船の表札。歴史的な事件に関わっていた人々が関与している船もあるなど、一つ一つに物語がある

小野建商店では、代表取締役社長の小野寺氏が案内してくださった。まず土蔵を含め建物に関して、様々な意味を持った意匠が凝らされていることが語られている。たとえば、雨樋を支えているのはカモメなど海をモチーフにした意匠であり、鶴などが描かれているのは、子孫繁栄、商売繁盛などを意図してのもの、などである。

この他、土蔵内に収められている財、漁具の一つ一つについて、詳細な解説を頂いた。歴史があるだけに、歴史の教科書でしか触れられなかったような話の数々が飛び出してくる。まさか身近な場所に、教科書で見るような遠い歴史の話が存在すると思いもしなかっただけに、驚きの連続だった。何より、普段歩いていた場所に、これほどまでに美しい蔵が存在したことに驚いている。まだまだ知らないことが多い。そう感じられる時間だった。

千田家住宅母屋・石蔵・土蔵を見る

千田家住宅母屋・石蔵・土蔵を見ながら歩く。再建中とされるが、現在はバイクで気仙沼市を訪れた人々が休憩する姿が見られるなど、建物としての息吹を感じられる光景が広がっている。

千田家住宅母屋
千田家住宅・蔵

武山米店|言葉を失うほどに見惚れる和室に目を奪われる

武山米店は、東日本大震災で3mの津波の被害を受けたものの部材が残ったことから、その部材を生かした復旧が行われた。東日本大震災後の復旧に伴う土地整備により、従前と全く同じ形での再生が難しかった一方で、石蔵は動かせなかったことから、母屋をずらして再建したそうである。

母屋が建てられたのは昭和4年、石蔵は更に古く大正時代のものとされる。再建した母屋は、従前の建物よりも採光が工夫され、以前は暗かった空間に明るさが灯ったと5代目の武山氏は語った。

また、子供の頃に何気なく遊んでいた建物の造りが、実は珍しいものであったといった話もあり、外からは中々見られない建物の真価は、中からもまた見えにくいものだと感じた。ちなみに現在、火曜日・水曜日・木曜日におこわ販売を実施しているとのこと。ぜひ武山米店を訪れ、建物の美しさとともにおこわの美味しさを味わって欲しい。

武山米店
石蔵の前
廊下を渡り和室へと赴く
美しい和室|建物の形が特殊なため、畳も特殊な形になっている
美しい和の造形
美しい和の空間|採光の工夫が凝らされている他、掛け軸の掛けられた空間の砂壁は、東日本大震災以前の砂壁の材が利用されているとされる
蓄音機
廊下の床にも採光の工夫が凝らされている
現代では珍しい振り分け階段
風情の感じられる光景
石蔵の中には釜の展示
自転車の展示
石蔵の二階部分
手づくりおこわ
大粒の栗が入った贅沢なおこわだった

気仙沼ハリストス正教会・復活会堂を見る

気仙沼市役所を経て、気仙沼ハリストス正教会・復活会堂を訪れる。宗教組織は建物を大切に扱うという解説が印象的な一幕であった。教会は、昭和の大火を経て、昭和8年に建設されたものであり、現代ではあまり見られない造形が見られる。

気仙沼市役所庁舎
気仙沼ハリストス正教会・復活会堂

気仙沼市八日町・三日町・古町・新町の地形を見て回り、太田地域を探訪する

くるくる喫茶うつみで第一部を終え、第二部として地形を巡る探訪を実施した。地形を巡る探訪では、くるくる喫茶うつみを起点に、八日町から三日町へ赴き、古町と新町の境界にて元々海だったエリアについて知り、最後に太田地域で旧赤線地帯及び現存する当時の建物を巡っている。

現在インディゴ気仙沼が利用している建物
暗渠などに関する解説を聞きながら歩く
北野神社の参道
この辺りが昔は海だった
気仙沼市役所庁舎|大昔の学校がそのまま利用されている
気仙沼市役所庁舎裏手
太田地域
王将ビル

太田地域を探訪し、くるくる喫茶うつみにて解散、その後は懇親会となった。筆者はここで仙台ふららん「東北探訪 気仙沼ツアー」を終えている。ここからは、「東北探訪 気仙沼ツアー」についての感想を書こうと思う。良かった点、改善が必要と思われた点について、感想ではあるが、可能な限り客観的な見解を書こうと思う。

仙台ふららん「東北探訪 気仙沼ツアー」の感想 | 良かった点・改善されると良い点

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