田舎には何もない、ではなく何も知らないだけ? 既知の日常の中に眠る未知を知る|設計者が語る!気仙沼の土木デザイン
あなたは、誰の管理する土地の上に立って暮らしているかを意識した経験はあるだろうか? 多くの人々が、そんな意識を持って生活していないと思われるし、それが極々当たり前だと思われる。
2025年6月8日。慌てん坊の夏がやって来たかのようなとても暑い日曜日。宮城県気仙沼市でほんのちょっぴり珍しいフィールドワークが行われた。主催者は、有限会社ハートビートプラン、ネイバース株式会社の2社である。
同2社は、前日に行われた「気仙沼まちなかエリアプラットフォーム報告会&大交流会」の主催者・気仙沼まちなかエリアプラットフォームの中心的な存在である。そのため、地続きのイベントのような雰囲気があった。
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「設計者が語る!気仙沼の土木デザイン」現地視察|既知の日常の中に眠る未知の情報を知る
土木学会デザイン賞受賞記念イベント「設計者が語る!気仙沼の土木デザイン」は、土木デザインをテーマに気仙沼市の現地で設計者による解説を聴きながら歩く珍しいイベントだった。
土木デザイン現地視察:気仙沼内湾ウォーターフロント・ないわん朝市

現地視察では、気仙沼内湾ウォーターフロントから始まり、宮城県と気仙沼市の管理の境界やまた設計及び完成後の管理面での役割の線引き、そして官民のせめぎ合いなどについて、企画段階から今に至るまでの解説を受けた。
加えて、内湾朝市運営側による内湾朝市や建造物・空間の管理に関する話を受け、普段何気なく歩いているこの場所が多種多様かつ複雑な権利関係の上に成り立っていることを知る機会となった。
日頃目にしている通路や石畳、芝生や階段にもそれぞれ存在理由や役割があり、その存在によって自分達の立っている場所が、今見える景観として成立していることを知るのは、新鮮であるとともに感慨深さを感じられる時間だった。
土木デザイン現地視察:神明崎・神明崎ふくふく・出船おくり

内湾ウォーターフロントを視察した後は、神明崎へ。丁度出船おくりの時間と重なり、出船おくりをしてから視察を開始した。

神明崎では、神明崎の歴史や猪狩神社・龍神社・五十鈴神社にまつわる話を伺った後に、神明崎ふくふくについて解説を受けている。とりわけ石垣の大規模修繕の話は、普段あまり聴ける内容ではなく、参加者の関心を強く惹いた。
また、社会実験として開始された神明崎のライトアップに関しては、実際にライトアップする際の費用や照明設備に関する詳しい内容が解説され、やはり普段あまり聴ける内容でなかったことから、多くの参加者が興味津々で耳を傾けていた。



土木デザイン現地視察:気仙沼湾横断橋(かなえおおはし)

現地視察の最後は、気仙沼湾横断橋(かなえおおはし)を訪れ、東北随一の大きさを誇る橋の建造工程や細部までこだわり抜かれたデザインの詳細について設計者より話を伺った。
日頃単なる道路として通行しているだけの橋であるが、その建造には様々な配慮や技術が詰め込まれ、その結果安心して通行できるようになっていることを改めて感じられる時間であった。
また、ライトの間隔や角度の一つ一つに多種多様な議論が重ねられ、厳しい制約の中で、より好ましい景観を生むべく細やかな設計が行われている事実は、こうした機会を通じて解説を受けなければ生涯知ることのない情報であり、真実貴重な時間を得られたと感じている。
田舎には何もないのではなく、我々が何も知らないだけでないか? 土木デザイントークを通じて知る宮城県気仙沼市の魅力


気仙沼湾横断橋を後にし、昼食を取って午後の部・プロジェクト説明とトークセッションをPIER7を受ける。


午後の部では、午前中の視察で語られた内容に加えて、スライド資料を元に土木デザインやプロジェクトそのものについて、広範な話が展開された。印象的な話としては、内湾ウォーターフロントの視察で感じられた内容。
「町中には凄く様々な境界があるが、それが分からないようになっている。それらが枠を超えて一つの場所になっている」
地続きの世界が、実は多種多様な境界で区切られていて、区切られた空間一つ一つに権利主体や管理主体があり、そうした枠組みが存在する一方で、その枠を超えて一つの場所が成立している。この事実についてだろう。
筆者は、2025年に入ってから空き家に関わっている。空き家を含む不動産を扱う事業にとって、この境界、境界で区切られた空間の権利主体・管理主体の存在は、非常に大きなものである。
一方で、そうした事業に関わらずに何気ない日々を何んとなしに生活している分には、境界にも区切られた空間の権利主体・管理主体にも意識が及ぶ機会はあまり多くない。今回のイベントを通じて、改めてそのことを知られたのは、印象的だった。
地方、とりわけ田舎には何もないと言われる。それは一定の事実である一方で、何もないと断言できるほど、我々は自分達が生活している町、それを形成する土地や建物、それらに紐づく何らかの主体や物語を知っているだろうか。
それこそ内湾ウォーターフロントを一つとっても複数の権利主体・管理主体が存在し、そうした人々の様々な事情によってその場が形成された物語がある。興味のない人々にとっては、それでも何もないと思うものだろうが、知れば見え方や捉え方が変わって、面白みを感じられるかもしれない。
何もないと感じるのは、何も知らないから。その可能性は低くない。土木デザインをテーマにしたイベントではあったが、境界という存在にまつわる様々な話を聴く中で、そうした既知の日常の中にある未知の日常を知られたのだ。それだけで、とても良い時間だったと感じている。
最後に、トークセッションの中で語られた「気仙沼市の内湾の辺りの雰囲気。海があって、飲み屋などがあって、山があって、チャペルみたいなのがあって、どこか日本じゃないみたいな。綺麗だなと。リアスの地形が美しいのかなと」その言葉、気仙沼市の美しさを物語る最高の言葉だと感じ、その素敵さがより多くの人々に伝わると良い。そう感じた。
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