【創作大賞2026応募作・ファンタジー小説部門】Slit ⑪
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2022年6月19日(日)
またも瞼に、年月日が表示された。
なるほど、これがデフォルトなんだな。
2022年6月?
はて?何があったんだ?
考えてるうちに、私は放出された。
ピンポン!
インターフォンが鳴っている。
スマホを見た。朝の10時26分。
日曜日だぜ。朝から誰なんだ?
1回、2回…3回目に、私は仕方なく起きて、応答する事にした。
インターフォンの画面を見ると、瑞希と同じぐらいの年恰好の女の子が大きく映っており、後ろには、同じような年頃の女の子が二人いた。
「はい」
「あっ、すいません。鵜塚瑞希ちゃんの家ですよね?」
「そうですが、あなたは?」
「私、同じクラスの村上梓と言います。瑞希ちゃん、金曜日に学校お休みだったんで、みんなで誕生日プレゼント持ってきたんですけど…瑞希ちゃん、いますか?」
そうだ、今日は瑞希の13歳の誕生日だ。
中学に入ってから初めての誕生日に、プレゼントを持って来てくれる友達がいるのか…
エスカレーター式の学校とは言え、もうそんなに仲良くなっているのか…
それにしても、瑞希が休み?
あれか、発作が出てるのか?
瑞希は幼少期に喘息だったため、今でも時々発作が出る事がある。
という事は、瑞希は今、部屋にいる?
「そうですか…ちょっと待って下さいね。瑞希に声をかけてみます」
「分かりました」
私は、瑞希の部屋に向かい、ドアをノックした。
「瑞希、いるか?」
「何、パパ?」
「同じクラスの村上さんって子が、友達二人と一緒に、お前の誕生日プレゼントを持ってきてくれたんだそうだ。出るかな?」
「ええ、出ない。あの子らウザいんだよ。パパ、私、具合が悪いって言って、断って」
「いいのか、友達の厚意を無にして?」
「あの子らのは、厚意なんかじゃない。嫌がらせよ。とにかく、あの子らを追っ払って、パパ!」
「ああ、分かった」
私は、瑞希の部屋の前からリビングに戻り、インターフォンへ戻ろうとした。すると、向こうは向こうで揉めてる声が聞こえてきた。
「芽衣、あんたがさあ、瑞希のところはお父さんもお母さんも仕事が忙しくて、日曜日もいない事が多いって言うから、信じてきたんだよ」
「だって、瑞希ちゃんがそう言ってたんだもん」
「梓、仕方ないじゃん」
「早紀ちゃん、仕方なくないよ。どうするんだよ?」
「もう、帰っちゃえばいいじゃん」
帰すか!
ここに飛んできたのには、理由がある。そして、その理由は、今起きてる事のはずなんだ。
私は話し始めた。
「皆さん、待たせてごめんなさいね。瑞希ねえ、熱があるらしくって、出られそうにないんだよ」
「そうですか…じゃあ、瑞希ちゃんが、学校出て来てからにします」
「いや、それはわざわざ来てくれたのに、悪いじゃない?僕が今から下りて行くから、プレゼントだけでも受け取っておくよ」
「いや、結構です。サヨナラ…」
インターフォンは切れた。
私はベランダに出て下を見た。
女の子が三人で、駅の方へ走って行くのが見えた。
私は、瑞希の部屋の前に戻り、もう一度ドアをノックした。
「何、パパ?」
「友達は帰ったよ」
「そう。良かった」
「友達って、村上梓さんは苗字を言ってくれたんだが、芽衣さんと早紀さんの苗字は何?」
「何で?」
「一応、知っておこうと思って。ママにも伝えとかないといけないし」
「芽衣ちゃんは白川、早紀ちゃんは野村」
白川!
白川芽衣
そうかあ…逃した魚は大きいかもしれない。
でも、瑞希の同級生なんだから、待てばきっとチャンスは来るはずだ。
「ありがとう。瑞希は、しんどい?」
「夜明け前に薬を飲んだから、もう落ち着いてきてる。ママは出かける時に、昼過ぎには帰ってくるって言ってたから、帰ってきたら一緒に病院に行くの」
「そうか…パパは、昨日も仕事で遅く帰ってきたので、気がつかないでごめんな」
「いつもの事だから、大丈夫だよ。それより眠たくなってきたの。パパ、もういい?」
「ああ、いいよ。パパは部屋に戻って着替えてくるよ。苦しくなったら、パパを呼んでくれよ」
「分かった」
私は自分の部屋に戻った。
すると、私の枕一杯にグレーのバスタオルが広げられていた。
なるほど、ここはこれで終わりなのか…
私はベッドに横たわり、バスタオルに頭を載せた。
フュイ!
私はまた、スリットを抜けた。
