【創作大賞2026応募作・ファンタジー小説部門】Slit ⑥
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飛び込んだ先は、乳白色のスライムの中だった。
しかし、べとつかず、身体にまとわりつく事はないようだ。
右手を上げて、顔を触ってみた。ぬめっていない。
息はできる。
前を見通そうとしてみたが、乳白色は濃くて何も見えない。まるでホワイトアウトの吹雪の中のようだ。
目を凝らしてみると、うっすら先に飛び込んでいった女の背中が見えたような気がした。
私は彼女を追って前に進んだ。
周りのスライムの弾力が強く、すごく動きにくかったが、わしわしと掻き分けて、ちょっとずつ前に進んだ。そうしてるうちに、周りの白い色がだんだん透明に近づいていってる事に気がついた。
さらに進むと、完全な透明になり、前に進んでいた女は、白いドームのような空間で立ち止まっていた。
私はさらに進んだ。
プイ…
私は不意にスライムから飛び出た。
そして、女の前に倒れ込んだ。
ふにゃふにゃとした、まるで白いマシュマロを敷き詰めたような感触の床に横たわっている私に、彼女は「上手くいったわ」と、言った。
その言葉が、私の胸に火をつけた。
「上手くいっただと?お前、何でうちのかみさんを殺した?大体、お前は何者なんだ?」
そう言いながら、私は足元が不安定ながら、何とか立ち上がり、女の襟元を掴みながら、怒鳴った。
「お待ちなさい!」
と、誰かが私に向かって言った。
女性の声だが、目の前の女ではない。
ドーム状の天井の白の光量が上がった。
ハレーションを起こすぐらいに眩しい。
すぐに光量は落ちた。
そして、天井に美しい女性が映し出されていた。
「鵜塚喜一郎さん、待って、待つのよ。今、起きてる事は私から説明するから。まず、彼女を放して。彼女は仕方がなかったのよ」
「仕方がない?どういう事だ?」
「あなたをここに連れてくるためには、こうするしかなかったの」
「何が何だがサッパリ分からん。第一、ここはどこなんだ?」
「ヒズミよ」
「歪み?何の歪みなんだ?」
「時空の歪み。並び立つ世界の境界線」
「パラレルワールドか?」
「そう」
パラレルワールド!
マジで言ってる?
本当にあるって言うのか?
俄かには信じられない…
そりゃそうさ。
無理だ。
だが、この空間は異常だし、信じられない事に、私は今、何だか分からないヤツと、変に噛み合う会話をしている。
全く、どうなっている?
「それで、あんたは何者なんだ?」
「バンニンよ」
「番人?」
「そう、バンニン。交通整理役でもあるし、裁定を下す裁判官でもある」
「それで、番人のあんたが現状を説明してくれるんだな?」
「詳しくね」
「聞こうか」
「いいわ。話してあげる。白川さん、あなたはあっちに言ってて。私が全部この人に話すから」
「分かりました」
女は、私から少し離れた。すると、いきなり姿が見えなくなった。
白川?
聞いた事ある名前…
思い出せない…
「話す前に、あなたはそこに仰向けに寝転んで下さる?」
「どうして?」
「そうすると、私を見上げなくてよくなるから首が痛くならないじゃない」
「なるほど」
私は上手く膝まづき、横になった。
罠だった。
横になった途端、私は気が遠くなった。
