【創作大賞2026応募作・ファンタジー小説部門】Slit ㉑
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私は赤いスライムの中に戻った。
という事は、5日目が終わったという事だ。
「シンパン!シンパン!いるんだろう?時間がないんだ。すぐに出て来てくれないか?」
「時間がない?随分と急かすねえ。どうしたんだい?」
「僕がここに戻ったという事は、The Day 5が終わったという事なんだろう?」
「そうだね」
「だから、時間がないんだ。シンパン、お願いがある」
「なんだい?」
「ここに戻ってきたら、僕はいつもすぐに眠っちゃうだろう。そうじゃなくて、ゆっくりここで考えをまとめる時間が欲しいんだ、眠らずに」
「それは難しいな。回復の時間が必ず必要なんだよ」
「そこを何とかならないか?」
「無理だね。それはこのワールドのルールに反するからできない相談だ」
「でもね、僕の身になってみてくれよ。毎日、毎日、どこに飛んでいくのか、時間も場所も全く知らされる事なく、ヒズミの思惑で、僕はポンポン、ポンポンと色んなところに放出される」
「悪いが、ここはヒズミではない。ハザマだ」
「ああそうか、悪かったよ。ここは赤いもんな。でも、ハザマが僕を情け容赦なしに放出してるのは事実だろう?」
「それは仕方ないね。君には7日間しか猶予がないんだからね。どうしても一日の間で、色んなところへ行かされてしまう」
「それは分かるんだが、それでは色んな情報を得ても整理する暇がない」
「だが、それは明日起きてから、次のワールドに飛んだ後に考えるしかないんだ」
「それはそうなんだろうけど、頭の中が散漫になってしまって、考える事に集中できない。だから、頼むから、一時間でいい、一時間でいいから、ここでゆっくり考える時間をくれないか?」
「困ったね。ここには時間も空間も存在しないんだ。あるのはイシキだけなんだよ。今の君が肉体を無くしてる事で分かるだろう?」
「ああそうか…じゃあ、とにかく頭を整理する事に集中するので、それまでは放出しないで欲しいんだ」
「いかん、ちょっとばかりお喋りが過ぎてしまった。君はもう休まなくてはならない。だから、こうしよう、次に君が目覚めたら、考えたらいい。そして、ハザマには明日放出する先に全部、フラッシュのように出してもらうように話してみる。それでいいか?」
「出来れば、今から今日会った事をまとめたいんだが…」
「それは無理なんだよ。大体、君はもう眠いはずだし」
そう、私はもう眠たかった。
疲れた…
「分かった。君の言う通りにするよ。だから、次に起きた時はすぐに放り出したりしないでくれ」
「それは、この後、ハザマと話し合うよ。」
「お願いするよ」
「では、お休み」
「お休み」
私は寝た。
思った通りだ。
#6
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起きたが、私はまだ赤い空間の中にいた。
試しに「シンパン、いるのか?」と、声をかけると、シンパンは「おはよう」と返してきた。
まだ、絶対ではないし、そういう意味では何も証拠を得た訳ではないのだが、何故か私の中には確信めいたものが固まりつつあった。
それが何かは今はまだ言えない。
言うのはもう少し先だ。
「おはよう、シンパン。ありがとう、起き抜けからどこかに飛ばさずにいてくれて。でも、もういいんだ。今日と明日で全部解決するよ」
「できそうかい?」
「まあ、何とかなると思う。そこで、シンパン、二つ願いがあるんだ。この願いを聞いてくれたら、もう時間はいらないし、フラッシュで駆け抜けも必要ない」
「そうか、で、どうすればいい?」
「一つ目は、今日だが、白川さんに僕を会わせてくれないか?」
「君が彼女に会う?どこで?」
「僕は場所は問わないよ。会えればどこでもいい。何ならここで会ってもいいぐらいだ」
「ここ?ここは無理だ。ここは君だけのスペースだからね」
「じゃあ、A界でも、B界でも、どこでもいいから会いたいんだ」
「それは今は無理だね。君は既に肉体を無くしてるもの」
「ムソウを使って、肉体を無くした事かい?」
「そうだ。だから、君は今まで行った事があるパラレルワールドでは肉体を取り戻せない」
「そんな筈はないだろう?ムソウは無双の筈だぜ」
「それはそうなんだが…僕はムソウを使った事がないものだから、よく分からないんだ」
「ああそうか…それは分かるよ。じゃあこうしよう。僕が今まで行った事がないC界で僕は白川さんと会う。これなら、できるだろう?」
「それならできるかもしれないが、それは君がムソウを上手く使いこなせるかどうかにかかってると思う」
「どうすればいいんだ?」
「目を瞑って念じるのさ。ただひたすら念じるんだ。彼女と会うシチュエーションを…具体的な場所や時間なんかをね」
「分かった」
私は目を閉じた。
そして、雑居ビルにある彼女の店を頭のスクリーンに描き出し、カウンターの中で電子タバコを吸っている彼女の姿を思った。
ポン!
私は放出された。
次の瞬間、私は彼女のスナックが入ってるビルの前にいた。
夜が深いのか、周りには誰もいなかった。
季節は冬で、私はコートを着ており、大粒の雨の中で、傘も差さずに立っていた。
濡れて寒い。
私はビルの中に駆け込んだ。
