【第二部】谷英美パーティ編。
「#なんのはなしですか」には、ある女優がいる。名前は「谷英美」。1999年より、金子みすゞを描いた一人芝居『空のかあさま』を続けている活動的で情熱的な方だ。笑顔はチャーミングだが、一体なんのはなしなのかわからない。そんな谷さんがある大きな挑戦を始めた。それは、金子みすゞの「ほんとう」を描くための伝記の出版である。そのファンパーティに、コニシ木の子、えむのマイトンと出席した。
谷さんついて少し触れようと思う。彼女は、「#なんのはなしですか」路地裏出版初のKindle「これで、いいのだ編」に寄稿されている。タイトルは「これは小説です」である。
実際の彼女は弾けるような笑顔に少しの天然と明るいオーラが印象的で、気さくでフラット。出立ちも美しい。経歴だけを見ると「なんのはなしですか」にいるのが不思議に思えたが、会ってみるとそれがストンと腑に落ちる。
当日のコニシ木の子編はコチラ。
わたしが思う、“コニシ木の子”と、”谷英美”の共通点。一人芝居という逃げ道のない主戦場で、表現を追う姿
一人芝居には逃げ場がない。
25年近く『空のかあさま』を続けている精神力には脱帽する。谷さん自身が詩の解釈を深め、表現に命を乗せて演じ続けている。場所は違えど、何かを深く追い求める姿、そして人を温かく巻き込みながら活動を続ける姿は、コニシ木の子と重なる部分が大きく、わたしから見れば、みすゞ同様に谷さんもコニシ木の子も、ROCKである。(そして、これは全てわたしの想像です。なんのはなしですか)
25年演じ続けた女優が、33年止まっていた時計を動かす。金子みすゞの「本当」を綴る、魂の伝記。
「詩人を舐めてもらっては困る」
わたしは、この文言に静かに震え、彼女の活動を応援することを決めた。伝記を出版するためにクラウドファンディングを立ち上げ、その支援の輪は広がり、107%に到達している。この伝記への関心の高さと、谷さんが役者として、また素のままに培ってきた「人と人をつなぐ力」を感じる。
その影には、「ラジぽて縁結び」のディレクターである白井さんが、企画・設計面で深く関わっていることも見逃せない。
わたしは、素人の書き手として、ただ思う。
表現者は、いつだって孤独で、だが、いつだって独りではない、と。
パーティ会場に到着。 ⸻文明の利器(Google Map)よりも、一人のディレクター。

本題に入ろう。我々は、パーティ会場に辿り着いた。ディレクター白井さんのナビゲートのお陰である。迷わないという「異常事態」に、少しだけ物足りなさを感じているのは、この二人も同じはずだ。
不毛の絶景を忘却させる、谷英美の芳醇なハグと借りてきた京大生。
扉の先は、谷英美。柔らかいハグの先に、ギュッと力がこもる。引力、加速。私の心拍数は、迷わず彼女へ着払いだ。
案内された座席の錚々たる顔ぶれに、縮こまる我々。ナックルヘッドさんが挟み込むという、圧倒的なオセロで幕が開く。ラジオで聞いていたその先、憧れの延長線上にいるという現実。
斜め向かいには、神妙に固まるマイトン。借りてきた京大生ほど、面白くて不憫なものはない。
「なんのはなしですか」が溢れる会場と動揺するコニシ木の子。
緊張を解くべく、わたしは案内パンフレットに手をのばした。可愛らしい谷さんの写真に安堵したのも束の間、「縁のご紹介」の欄に戦慄する。


「変態は褒め言葉」♡エリ〜さん。じゃないよ!笑
どこか落ち着いた、ちゃんとした大人たちの中で、わたしはついに「変態看護師」としてデビューした。簡単な自己紹介の時、谷さんは言った。
「モスキートエリさん、変態看護師です♡」 ⸻こういうところだぞ、谷さん。
集まる視線に、わずかな違和感を覚える。 気のせいだろうか。最高である。駄菓子菓子、その時、わたし以上に小さくなる存在を見つけた。コニシ木の子である。必要以上にウロチョロする彼を、わたしは遠目に眺めていた。
谷さんの朗読と、コニシ木の子のアンサー
俳優、コニシ木の子、最後の大仕事である。
わたしたちは、二人が辿ってきた時間を、目の前で覗き込んでいた。「通信」というかたちで積み重ねられてきた記録には、確かに、二人の人生が詰まっている。
谷さんの朗読は圧巻だった。
そして、それに応えるコニシ木の子の姿に、胸を打たれる。総合表現エンターテイメント。その深層と広がり。わたしたちは、ヘラヘラと笑いながらも、とんでもない場面に立ち会っていたのかもしれない。「表現」を受け止める覚悟と覚悟の、キャッチボール。ここには、確かにそれがあった。

目の前には、本物の女優がいる。
谷さんを愛する集い。 ⸻魂を運ぶ表現者、谷英美の真髄。
谷さんの活動は、とにかく広い。
ひとつの出来事から枝が伸び、気づけば遠く離れた場所で花が咲いている。その広がり方は、ラジオの電波が届く距離さえ軽々と越えていく。けれど、当の本人はどこまでもあっけらかんとしている。その軽やかさが、逆に底知れない。

ホンモノの女優。それは空気を一瞬で変える魔法だ。
朗読会から生まれたつながり、彼女を支える人たち。その輪の中にいる人々は、損得ではなく、ただ「谷英美」という現象に、静かに惹かれているように見えた。執筆に至るまでの壮絶な道のりや、その背景を知るほどに、私の知らない谷さんが増えていく。それは、少しだけヤキモチを妬くほどに、濃密な時間だった。

そして、はじめてその演目を目の前で目撃したとき、わたしは思考を一度閉じ、ただ酔いしれた。
マイトンは静かに泣いている。特技、「号泣」の文字が、うっすらと過る。
コニシ木の子の姿は見えないが、きっと何かを感じている。わたしは、谷英美を、何も知らなかったのだ。言葉ではなく、身体の細胞ひとつひとつで語るその姿は、何かを「演じている」のではない。
彼女は、どこか遠い場所から、大切な何かを運んでいる。「魂を運ぶ人」それは、谷英美でなければ辿り着けない表現のカタチだ。

一見交差することがないようにも思える「なんのはなしですか」。それは、平和への願いと、谷英美が思い描くほんとうの真実へ導く、魔法の合言葉なのかもしれない。
”詩人を舐めてもらっては困る。”
そして、この女優も、同じことが言えよう。彼女のこれからの活躍が、益々楽しみである。

LINEの交換を願い出たわたし。

「なんのはなしですか」谷さん、ナックルヘッドのおふたり、ありがとうございます。可愛い。

内面は全員とっ散らかっているに違いない。

谷英美さんと、みすゞをモチーフにオーダーした作品。

ほんとうに、ありがとうございました。
第三部へつづく。
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