12万字くらいの小説を書く方法
前置き
カクヨムで開催中のコンテスト、カクヨム恋愛小説大賞【ナツガタリ'25】応募作が完結しました。
ちょっと珍しいであろう、オスマン帝国風の世界観の作品です。煌びやかかつドロドロとした権謀術数、その中でしたたかに活躍する賢いヒロイン、契約結婚の夫との仄かなロマンスと色々な要素を詰め込みました。夏休みやお盆休みに一気読みしていただけると嬉しいです。
さて、恋愛小説大賞の中でも「異世界で働く女性の恋」部門に応募した本作、コンテストの規定文字数は8万文字以上~12万文字以下のところ、119,781文字で完結しております(誤字脱字の修正や、表現の微調整によって最終的に多少上下するかも)。規定文字数を目いっぱい使ってきっちり完結させたところは、ちょっと得意になっても良いのではないかと思っています。
12万字は、公募では目安になることが多いボリュームでもあり、どうプロットを組めば規定にぴったり収まる物語を構想することができるのか、は需要があるかもしれないので、今回は私のやり方をご紹介してみます。
コンセプトを決める
ログライン(物語の要素・要点を3行程度にまとめたもの)、テーマ、想定読者、作者が考える物語のウリなどを書き出しておきます。後々何度も見返すことになる、作品の柱となるところなので基礎として最初に置いておきます。
この時に、ざっくりとキャラクターの設定や世界観を書き出しておくのも良いでしょう。
話数のイメージを固める
最大何話使えるか、のイメージを把握します。
私の場合、1話3500字前後を目標に書くので、そうすると33話で115,500字、エピソードによって字数が溢れることを考えると30話ちょっとで構想すべし、となります。
1話3500字は私がイメージしやすい&Web連載なら1エピソードにそれくらいのボリュームが欲しい、という数字なので、ジャンルや好みによってはもっと多くても少なくても構いません。
また、Web経由でない公募の場合でも、細かい目盛りのイメージを持っておくと全体ボリュームのコントロールがしやすいと思うので、あくまでも私の場合は、と念押ししますが、全何話の物語なのかを念頭に置いて進めています。
起承転結を設定する
三幕八場構成もよく言われますが、八場分を最初に考えるのは結構面倒くさいし、尺が長くなりがちなので、最近は起承転結または起承承転結でまず簡易プロットを考えています。ここは二、三段階踏んで段々詳しくしていきます。
例えば「後宮の女商人~」だと、最初の起承転結プロットはこのレベルです。
起
ヒロインとヒーローの出会い
承
何か事件が起きる&解決する
転
承よりも大きな事件が起きる&解決する
結
何か良い感じに〆る
少しだけ肉付けするとこんな感じ。
起
奴隷のヒロイン、ヒーローに自分を売り込む。
ヒロインは後宮で極秘の任務を見事に果たし、ヒーローにその手腕を認めさせる。また、母后に取り入る。
ヒーローとヒロインは契約結婚する。
承
母后と対立する寵姫が何らかの事件/陰謀を起こす。
ヒーローとヒロインは無茶ぶりに応えて商人ならではの平和的な手段でそれを解決する。
問題解決の過程でふたりの絆が深まる。
転
寵姫が逆襲をしかける。
幽閉された皇子を巻き込んだ陰謀に発展するが、ヒロインたちは陰謀を逆手に取って皇子を自由の身にする。
ヒーローは敵国に対して、ヒロインは因縁のある寵姫に対して勝利を収める。ふたりは相手への想いを明確に自覚する。
結
ヒロインとヒーローは心を通わせ、今後も共に生きることを誓う。ハッピーエンド✨
第二段階でも、陰謀や、その解決策の具体的なアイディアはまだ固まっていません。「見事に」「何らかの」「無茶ぶり」など非常にふわっとしたワードが並びますが、今はこれでOKです。
この段階で大事なのは、物語全体の流れや起伏、見せ場を把握することです。起承転結の各項目で必要な展開を考えることで、「どうやって手腕を認めさせるんだ……?」「陰謀がふたつくらい必要なのか」「陰謀を逆手に取ることで皇子を解放する方法とは何ぞ」「恋愛要素をどうにかしてぶち込まないと」等々、煮詰めなければいけない事項、満たさなければいけない要素がクリアになってきます。
詳細プロットを考える
(ここでも「後宮の女商人~」執筆に当たって作った詳細プロットを開示しようかと思いましたが、同じ情報の繰り返しになるので&長くなるので割愛します)
上記で決めておいた「起承転結」に沿った具体的なエピソードを考えていきます。コンセプト→起承転結と、ここまでで書き出したことを物語の骨格として、自然な肉付けをしていく、とも言えるでしょうか。詳しめのあらすじというか、公募に添付する梗概よりも少し詳しいかな、くらいの情報量で物語の最後まで記述します。(実際には、最後のほうはとてもざっくりふんわりになりがちなのですが、努力目標として)
なお、最終的に採用しなかった設定・エピソード案や、補足説明のメモ書きも裏や余白に大量にできますが、取っておきます。
ここまでくると具体的にどの場面・どの視点から物語を描いていくか、また、具体的なエピソードや描写もイメージしながら書いていきます。その中で、適宜、コンセプトや簡易的な起承転結に立ち戻って物語上の要請を満たすものを考えたり取捨選択したりしていきます。
たとえば、広義のロマンスものとして(恋愛小説大賞に出すので)盛り上がりに寄与するエピソードかどうか。史実を元にした政治エピソードは、私としては楽しく興味深いのですが、恐らく想定レーベルの読者には面白くないだろう、など。
「後宮の女商人」と題する以上は、各イベントは強引にでも商売・交易・売買と結びつけるロジックを考えておかなければならないでしょう。また、起承転結のそれぞれを章と考えた時、その中での起伏があるかどうか。次の展開へのヒキがあるかどうか。
つまりは、最初に決めたコンセプトに反しない展開になっているかどうかを考えながら、物語全体のバランスを整えていきます。
話単位プロットを整える
下準備も最終段階です。「実際に執筆した時に、どの場面を何話=何字かけて書くか」のイメージを固めます。この時、最初に設定した全〇話に収まるかどうか、溢れそうならどう圧縮していくかも検討します。
私は書いてみるとだいたい少しずつ文字数が溢れていくので、余裕をもって作っていきます。ストーリーそのものは進展しない、キャラ掘り下げのための会話メインのエピソードなど、場合によっては1、2行で終わることもあります。(意外と文字数が膨らまなくて……な人もいるかもしれませんが、それは多くのエピソードを詰め込めるということで羨ましい気がします)
具体的には、詳細プロットで決めた内容を小分けにして、1話ずつ割り振っていきます。詳細プロットよりもさらに細かい内容になるので、「この情報はこのタイミングで入れておくべき」「ヒロインの~~という心情の変化を入れる」「あのエピソードをここで回収する」といった布石・伏線・重要な描写はこの時にメモします。詳細プロット検討時にできた大量のメモから、使えそうなエピソードを拾ったりもします。
形式としては、例によってあくまでも私のやり方ですがこんな感じ。
1-1(一章第一話の意味)
ヒロインの過去。顔に傷を負ったところを女商人に拾われる。傷ものでも至宝に仕立てるのが後宮の女商人の手腕だ、と言われる。
現在。女商人のすごさの話。でも不審死を遂げた。たぶん政敵による暗殺。養女格だったヒロイン、傷ものの奴隷として女商人の息子に虐げられているが、怯まない。何か考えがあるっぽい描写。
1-2
奴隷仲間にも心配風に嘲られるヒロイン。だが、養母は彼女の行き先も考えていたはずだと余裕を見せる。
ヒーローの登場。ヒーローの祖国は養母を暗殺した疑惑の国とは対立している。国際情勢の説明をここで軽く入れる。
柘榴石の取引をするはずだった、と言われて、名乗り出るヒロイン。彼女の名は柘榴石、私こそがお約束の品です、どうぞよろしく。ヴェールを取って顔の傷を見せる。
1-3
ヒロインが身の上(偽)を語る。後宮に収められるために磨き抜かれたながら、閉じ込められるのを嫌って自ら顔を焼いた奴隷が私。傷ものどころか、皇帝が手に入れ損ねた至宝!
ヒーロー、完全には信じないが、見どころアリと判断してヒロインを買い取る。商談成立、ヒロインは自らの売り込みに成功する。商人として最初の成功を収めた喜び。
冒頭で述べた通り、1話3500字目安で考えているので、その字数内で描写できるであろう情報を簡単に書き出していくイメージです。1話内で物語に進展があったり、次話に続くヒキを意識できたりするとなお良いですが、これも努力目標で。
これを物語全体にやっていくと、「やべえ、後半駆け足になる……」「あっここで日常エピソード入れる余裕がありそう!」などが分かってきます。また、章立ても同時に考えるので、「この辺でいったん区切っておくか」などの判断も可能になります。
「後宮の女商人~」で言うと、起承転結の「承」に話数を要することが判明したので、起承承転結の構成にしたりしました。カクヨム版での二章が承①、三章が承②にあたります。
また、承②が終わった段階で残り8話しか使えないことも分かったので、転の部分は7話で事件を解決、結のエピローグは1話で済ませないと……! という制約の中で構想しました。結構ギリギリ&ハラハラでしたね。
でも、終盤を書きながらハラハラドキドキするよりは、最初に検討を済ませておいたほうが安心だし、全体的にバランス良い構成にできる可能性は高くなるのではないかと思います。
書く!
ここまで考えると、書くべきことは決まっているので執筆はかなり楽になります。まあ、どの道こまかな描写で立ち止まったり、調べ物が出て来たりするわけですが。書き出してみると「あっ繋ぎのシーンが必要だった」「2話のつもりが1話に纏められちゃった」「この場面書いても書いても終わらない……」など、色々不測の事態も起きるのですが。
とはいえ、プロットを細かく決めておくことは地図的な意味合いでも重要だと思います。たとえば「全〇話中の×話の段階ですでに△万字費やしてるのは拙い」といったスケール感の把握がやりやすくなるため、「じゃあ冗長な場面はないか」「以降の展開で圧縮できそうな箇所はないか」などを意識して、都度都度プロットを修正しながら書くと、なんだかんだで想定した文字数に収まる話が出来上がるのではないか、と思います🙌
上記では一連の流れのように書いていますが、執筆する中で詳細プロット~各話プロットを修正・再構成するのはよくあることです。その時はコンセプト・ログラインまで立ち返って物語のテーマから逸脱していないかは意識しますし、逆に、どこかで詰まった時にコンセプトを見直すことで方向性を確かめることもあります。要は芯を太く真っ直ぐ持ちつつ、臨機応変に、ということになるかと思います。
目下、新作のプロットを練っている最中なので、自らの指針にするためにもやり方を言語化してみた記事でした。どなたかの参考になれば幸いです。
2025/08/16追記
プロットの前段階として、どうやって案を出しているか、の記事も書いてみました。よろしければこちらもどうぞ。
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