ベトナムの“覆う文化”と日本のUVカットパーカーの進化【後編】
前回の記事ではベトナムの日差し対策の上着、アオ・チョン・ナン(Áo Chống Nắng)の話について書きました。
今回は【後編】として、ベトナムのアオ・チョン・ナンの変化と、日本で普及し始めているUVカットパーカーについて考えたことを書いていきます。
変わるベトナムの街のアオ・チョン・ナンの風景

ベトナムであの派手なアオ・チョン・ナンをきたバイクの光景を眺めていた時代から、十数年後。状況は少しずつ変わってきてきました。
まず日本です。
この10年ほどで日本の平均気温もさらに高まり、ついに最高気温が40度以上の日に「酷暑日」といった新しい呼称が与えられ、警戒されるレベルに達しています。
気温上昇や紫外線への警戒の高まりとともに、日本のUV対策は冒頭で書いた“装備型”へも進化してきました。
もともと紫外線カット加工など機能面で優れていた日本のUVカットパーカーですが、デザイン面も進化を遂げ、口元や手元まですっぽり覆うデザインや、つば付きフードなど、まさにアオ・チョン・ナンのような、実用性>見た目 重視のUVカットパーカーが一般的になりつつあります。
近年は顔周りを完全に覆う怪しげなデザインがSNSで話題になったり、おしゃれなファッション誌でも、働く女性やママの「機能的なアイテム」として紹介されたりするまでに市民権を得つつあります。
一方のベトナムです。
アオ・チョン・ナンの文化は健在ですが、街の景色は少し変わりました。かつて主流だった色柄の厚手タイプは減り、日本で見かけるようなUVカット機能を備えた素材で、薄く、軽量なタイプが増えています。白黒やグレーといったシンプルな色合いのものを着る人も多くなりました。

背景には、日本を含む海外の大手衣料品チェーンの進出や素材技術の流入などの影響があるのかもしれません。実際、現地の友人たちも軽くてUV加工されたシンプルなパーカーを愛用するようになっています。
そしてもう一つ、夏のベトナムの路上のバイクの光景を変えたのが、バイクタクシーの配車やフード宅配サービスの普及です。路上では、それぞれのサービスのロゴが入った長袖ジャンパーのバイクの存在感も増しました。

日差し対策から見える、国をまたぐ変化

ベトナムの「合理的に覆う面積を増やして日差しを遮るデザイン」、日本の「機能としてのUVカット技術」。それぞれが国境を越えて混ざり合い、結果として同じような日除けウェアが両国で広がってきているように見えます。
気候そのものも変わってきました。
かつては「東南アジア=暑い国」という感覚を持つ人も多かったと思いますが、今の日本の夏はそれに近づきつつあります。
日差しへの対策という、ごく身近なテーマを通して、
ほんの10年だけでも、気候の変化や、モノや技術の移動、そして生活スタイルの変化が静かに重なり出しているのを感じます。
近年、ハノイやベトナムの都市の路上は以前よりも落ち着いたトーンに整えられつつあります。 ただ、私にとっての「ベトナムの夏」の原風景は、やはりあの混沌とした色柄のアオ・チョン・ナンのバイク集団。形や素材は変わっても、あの日差しに抗うたくましい色彩と躍動感だけは、いつまでもベトナムの日常の中に息づいていてほしい。
そんなことを願いながら、過去の写真を見返しています。
【前編はこちらです】
