ルイーゼさんとハンナさん〜Vの夢物語『桜の、終わりの始まり』を語る〜
【あらすじ】
ルイーゼさんとハンナさんはアンティークマーケットで買った人形たち。Violaの家には店で買ったビスクドールの子たちとアンティークマーケットで買った子たちとが半々くらいで暮らしている。
アンティークマーケットで出会った人形は、それまで過ごしてきた別の人生を漂わせており、いつも何か語りたがっているようだ。
Violaは滅多に見ないリアルな夢を見て、夫に話していた。人形たちはそれを聞いて、家族として好き勝手にそれを語り合う。
人形たちは意思を持って、いつも何かを考え、人間がいない時、語り合っているようだ。
Violaは特にお喋りが好きそうな二人の様子を見て、語り部として役目を与えたのだった。

▪️ある夜の話
L:「ねえねえ、ハンナ、さっきびっくりしたわよね」
H:「ほんとほんと。Oパパがワンコと一緒に寝室に行っちゃったから、油断してお喋りしてたら、Violaさんが、『ワンコのご飯の器を洗い忘れた』って戻ってきたのよね」
L:「びっくりして固まってたら、Vさんが部屋を出る前に、急にこっち向いて、『ねぇ、ルイーゼさん、ハンナさんと何喋ってんの? 』って言ったから、思わず声が出そうになっちゃったわよ(^◇^;)」
H:「その後、寝室からスマホ持ってきて、私たちの写真まで撮ってたじゃない? 『二人とも本当にお喋りしてるみたい♪ 』って。そういう余計な事は真剣なのよね」
L:「ね〜っ!」
H:「ね〜っ!」
L:「『Vさんの悪口』だとは言えないわよね〜」
H「怖いもんね〜」
L:「悪口っていうか、夢の話よ。『珍しい夢見た〜!』って騒いでたじゃない?」
H:「夢の話を詳しくされてもさ、Oパパは『へぇ』って答えるしかないから、『反応が薄い💢』って、Vさんぶつぶつ文句言ってたわよね」
L:「珍しくリアルな恋愛物だったみたいよ」
H:「向井 理、田中 圭、吉岡里帆、この三人がその名前で出てきたんだって。日本の俳優さんたち」
L:「向井さんってあの人よ。ほら、この前やってた『事件はその周りで起きている』でゲスト出演してた人。ドラマの中の刑事ドラマの俳優役で出演して、決め台詞の『グッジョブ!』を何度も言わされてた」
H:「あーVさん、あのドラマ大好きだもんね。毎シリーズ4話だけなんだけど、『今季No.1 !!! 永遠に続いてほしい!!! TVドラマはこれだけでいい』って騒いでた」
L:「でも、Vさん、向井さんより寧ろ笠松 将さんがやってた《宇田川刑事》の方が好きよね。クールドライの変わり者が好きだから」
H:「宇田川さんは、カッコ良いのに、仕事は効率重視で合理的で、バディの熱血な真野さんと会話が噛み合わなくて。私も好き」
L:「真面目なタイプは、人の目を気にしない超合理主義でドライな変な人に憧れるもんよね。自分はそんな風になれないからさ」
H:「‥‥まあね」
L:「吉岡里帆さんは、大河ドラマの先々週の放送のラストに出てきて、Vさん、ギョッとしたのよ。
『カルテット』の怪演が怖すぎて、いまだにどんな役やっても『信用できない怖い女』って思っちゃうんだって。ご本人は違うだろうって分かっていても」
H:「向井さんと吉岡さんは、最近観て印象に残ってたわけね」
L:「だけど田中 圭さんは? 唐突すぎない?」
H:「最近は忘れてたんじゃないの? 映画とか民放はずっと観てないから。」
L:「でしょ? だからその唐突感に驚いたんだって」
H:「隠れファン?」
L:「『これまでの人生で、向井 理も田中 圭のことも、真剣に考えたことなかったのに、夢に出た!!!』って騒いでたわよね。
Vさん、さっぱり系の醤油顔とか塩顔よりも、北欧系のハンサムが好きだもんね。
村雨辰正さんの顔見る為だけに、Oパパに付き合って毎週『趣味の園芸』観てるのよ」
H:「夢って不思議よね〜」
L:「ね〜」
▪️Vの夢 概要
題名:《桜の、終わりの始まり》
夢の中で、Vは30歳前後の女性「私」としての目で全体を見ている。
大きな神社があり、それに続く広い参道の両側には商店が並び、そのうちの一軒がVの家だ。
参道の並木道は、桜が満開となっていた。
両親からその店を任された為に、Vはこの街に戻って来た。
友人は同じ歳の吉岡里帆。親しくはあるものの、彼女が時折見せる激しい感情や、どこからか得てくる人間関係の情報通であることに、微妙な感情を抱いている。
同じく友人の田中 圭。真っ直ぐで不器用、少し慌て者。正直で親切な世話好きの好人物なので、Vは友人として好感を持っている。
ある日Vは、田中 圭と吉岡里帆の知人だという、
向井 理を紹介された。
穏やかで優しく、口数が少なく、どこか微かに悲しげな表情を見せる向井は、気になる存在となった。
皆で集まった時、その場を盛り上げてくれる田中と吉岡。口数が少ない向井とVは訊き役に回っていた。
時折、向井が話す言葉にVは耳を傾けた。向井は向井で、Vが話す時はじっとVを見つめ、一言一言を聞き逃すまいとするかのようだった。
【途中いろいろあったけれど省略(忘れた)】
ある日、Vの店先に向井がやって来る。いつも会うのは、吉岡や田中と一緒の時なのだが、その日は彼一人。特に用がある様子でもなく、ふらりと現れた。
客が少ない日であった為に、店のソファーに座り、Vは向井と向かい合って長い時間話をする。静かな時間が流れる。
帰りがけ、Vは向井に尋ねる。
「今日は何かこちらにご用があったんですか」
「お話ししたくて」
Vは少しだけ胸の高鳴りを感じたが、それ以上の気持ちを話す事なく、向井は帰って行った。
そんな事が何回か続いたのだった。
【途中はまた省略(あやふや)】
桜の花が少しずつ散り始め、風に舞っている。
ある日、Vのところに吉岡がやってきた。
しばらく話しているうちに、突然吉岡は黙り込んだ。
「どうかした?」Vが声をかけると、
吉岡はカッと目を見開き、Vに激しく言い寄った。
「あなたが帰って来たせいで、大事な友人の田中を失い、ずっと好きだった向井を奪われた」
吉岡は激しくVを罵っている時、いつの間にか田中が戸口に立っており、吉岡を諫めた。
田中は泣き笑いのような表情を浮かべ、Vを眺める。吉岡は燃えるような感情を抱えたまま、去って行く。
『田中は良い人だ、良い友人だ』と、Vは頭の中で繰り返しながら、店の奥に入る。
後ろから田中が近づく。Vは背中に、思いもよらなかった田中の鍛え上げられた胸筋を感じる。
けれどもVが思い浮かべるのは向井の顔だけだ。そこにいてほしいのは向井だ。
田中もそれは分かっている。しばらくして、田中は何も言わずに店を出て行く。
【場面は向井の家に変わる。】
Vと向かい合う向井。
向井は、既に吉岡がVに話した内容を知っていた。田中の気持ちも知っていたようだ。
だが、それ以上を口にする事もなく、向井はVに近づく。Vもそれを望んでいる。
吉岡の激しい感情を浮かべた目と田中の切なげな顔が頭に浮かんだが、Vは今は向井のことだけを考えていたかった。
* 夢はここで終わる
L:「こんな感じの夢だったみたいよ。Vさんは夢の中で、向井さんとの間にその後起こる、あんな事もそんな事も、受け入れる気持ちだったんだって。
Oパパに話した夢の話は、三人の登場人物の話だけだったけど」
H:「さすがに言えないわよね〜あんな事とかそんな事になりそうだったなんて」
L:「Vさんが『田中 圭が細マッチョ』って知ってたって話はリアルよね〜。何かの番組で観たのね。
というか、それ以外の田中 圭情報は、昔観たドラマのままね。不器用な憎めない正直者。切ない演技が上手い人だわ」
H:「吉岡里帆がカッと目を見開くのは怖いわね〜」
L:「怖いわよね〜『カルテット』の時みたいよね」
H:「Vさんは、夢の中の向井 理が、『事件はその周りで起きている』のグッジョブ! ポーズの楽し気な雰囲気でもなく、『とと姉ちゃん』の時の定住感のない風来坊、でも時々頼りになる叔父さん役でもなく、『ゲゲゲの女房』の水木しげる役の、戦争で左腕を失い、極貧の中でも漫画を描き続けた飄々とした演技の様子でもなく。
夢の中で、『こんな向井 理は初めて』と思ったんだって。静かで、でも実は情熱的で、Vだけを愛する」
L:「でも、もしそのまま夢が続いてたら、Vさんも向井さんも、吉岡さんに刺されてたわよね〜」
H:「ありそうよ😱 刺しに来る‥‥やりかねない、吉岡里帆‥‥」
L:「役者さんって大変ね。うっかり怪演しちゃうと、インパクトが強すぎて、ずっとそのイメージを引きずられてしまうって。名演技だったってことだけなのに」
H:「あるわね〜」
ルイーゼさんとハンナさんは、皆が寝静まった部屋で、いつまでもお喋りを続けたのだった。

—完—
⭐️ルイーゼさんとハンナさんについてはこちらの記事でどうぞ。
⭐️ 二人の名付け親はブウスカさん🎻
