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逆風のなかの果実 ~第九章~

第九章: 反撃 – 水の一擲

ターゲットは津田

28日に行われた会議の後、磐田は津田が教育委員会との折衝役として不適任であると考えていた。彼は現場に寄り添うことはせず、的確な事務処理も期待できない人物だった。津田は、妻が有力者の子であることで出世したに過ぎないというのが、県内の農業教員たちの共通理解だった。そのため、磐田は津田を窓口にすることに強い疑念を抱いていた。
津田を早めにこの事案から退場させるために、磐田はひとつの作戦を練った。

和田のファインプレー

会議を受けて、頼りなかった和田がついに行動を起こした。
教育委員会に説明会の実施を要求したのだ。
さすがに、大規模校である緑野農業校長の陳情を教育委員会も無下にはできない。
教育委員会は早急な説明会の開催を通達してきたのだ。
 
これには磐田たちも驚き、安堵した。
説明会の開催は作戦上、非常に重要だったからだ。
しかし、3月中の開催は難しいとのことで、4月5日から順次開催することが決定した。
磐田たちは県内の全農業高校の職員を緑野農業に集めることを要望したが、それは難しかった。
そのため、津田が3日間かけて7校を回り、説明を行うことになった。

磐田の目論見

磐田は各校の農場長に、説明会での質問事項を依頼した。
それは、農業高校の農場を維持するために必要な経費の算出だった。
生産費、光熱費、修繕費、そして人件費などの金額を必ず確保してもらうよう、説明会で要望してほしいと伝えた。
ただし、水田維持にかかる経費は磐田がまとめて算出すること、説明会では水田管理に関することについて触れないことについて了承を得た。
 
磐田は津田に対して、県内の7校の農業高校の中で最大規模を誇る緑野農業の説明会を最後にするよう要望した。緑野農業は学科数が多く、扱う予算規模も大きいため、予算の算出に時間がかかるというのが表向きの理由だった。結果、緑野農業の説明は、7校の最後、7日の午後に行うこととなった。
津田は快く同意した。
彼は、緑野農業を除く6校に説明を行い、納得してもらえれば緑野農業も納得せざるを得ないと考えていたのだ。まずは外堀を埋めてから、緑野農業に当たろうと考えたのだ。

説明会開催

説明会では、4月の予算や告知済みのイベントの開催可否について多くの質問が飛び交った。
教育委員会からは、農産物販売禁止の決定は覆らないため、そのつもりで計画を立てるよう指示があった。
販売用の作付けが不要になるため、予算を現行の70%に削減するよう求められた。
この70%という数字は、山岡たちがある程度想定しており、書類の準備も進められていた。 

発熱する説明会

農産物販売禁止の理由について津田の説明は歯切れが悪かった。
原乳出荷事故を理由に挙げたが、畜産科を設置していない学校から大きく反発された。
また、少子化による生徒数の減少についても、緑野農業高校は地域で人気があり、高い競争率を誇っているため、根拠が乏しかった。
教育課程の見直しを理由にしても、すでに全校が提出した教育課程は教育委員会から承認を得ており、今さら何が問題なのかと追及され、津田は意見を持ち帰り、上席に確認した後、再度の説明会を開催すると約束させられた。
 
そんな中、最後に行われた緑野農業高校での説明会でも、他の学校と同様にイベントの可否や予算についての質疑応答が続いた。農産物販売禁止の理由については、「後日説明します」という言葉で終わった。

磐田の反撃

説明会が終わりに近づく中、それまで黙っていた磐田が口を開いた。
「水田の管理にかかる予算も当然確保してくれますよね?」
津田は答えた。
「もちろんです。ただ、販売用の作付けはなくなるので、前年度の70%を目安に予算を組んでください。」
 
磐田はこの瞬間を待っていた。
「例えば、水田に入れる水の料金も70%ですか?」
津田は
「そのとおりです」
と答える。磐田はさらに追及した。
「津田さん、水田に入れる水は水道料金ではありませんよ。水利費ですよ。使った分だけ払うのではなく、権利を買うのです。つまり、水を入れたら、水の量にかかわらず、水利費として約100万円の料金が発生します。知らなかったんですか?田植えの時期も迫っているのに、水田にかかる経費は確保してくれるんですよね?」
 
津田は困った様子で言った。
「この件については持ち帰らせてください。上席と相談して決めます。」
磐田は続けた。
「いつ回答をいただけるんですか?」
津田は
「遅くても1週間後には。」
と答えた。
 
磐田は言った。
「それじゃ、田植えを1週間遅らせろということですか。それは無理ですよ。」
この言葉を聞いた津田は反撃のチャンスだと感じ、大声で言い返した。
「磐田さん、あなたたちは農業教育のプロですよね。1週間田植えが遅れたからって、どうだって言うんですか?そのくらい対応できなくてどうするんですか?」

意見をぶつけ合う

磐田は津田の言葉を待っていた。彼が農業について何も知らないことは十分理解していたからだ。
「わかりました。1週間田植えを遅らせましょう。そうなると、8月に近隣の小学校や市役所と調整していた農薬散布の時期も変更しなければなりません。1週間散布時期をずらすと、ちょうどお祭りの日になりますね。津田さんからの要望ということで、関係各所と調整します。」
と磐田が言うと、津田の顔色が一気に青ざめた。
 
「ちょっと待ってください。散布時期をさらにずらすことはできないんですか?」
と津田が慌てて尋ねた。磐田は冷静に答えた。
「では、農薬散布が遅れて、地域の水田に病気が発生したときには、この会議録をしかるべき会議に提出しますが、よろしいですね。津田さんが農薬散布を1週間以上遅らせるよう指示したということで、間違いないですね?」
 
津田は焦りながら言った。
「ちょっと待ってください。上席に連絡を取ってみます。」
10分後、憔悴しきった津田が会場に戻り、
「水田に関わる予算は昨年度と同額にします。」
と発表した。
 
これを皮切りに、磐田は次々に質問を投げかけた。津田はその都度、席を外して電話で上席と相談した。そして最後に、
「予算については急なことなので、対応が難しいと思います。前年度と同額を通達します。また、次回の説明会には私ではなく、上席の川端が出席させていただきます。」
と告げた。

新たなる敵の出現

磐田は作戦通り、津田はこの件から退場し、上席の川端の引っ張り出すことに成功したのだった。
しかし、津田の代わりに現れた上席の川端は、2回目の説明会でとんでもない発言をするのだった。

新たなる敵の出現


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