「数字でドヤるな、経験でドヤれ。」レガシー型税理士業者への決別と、独立税理士の生存戦略
私が前職の税理士法人の創業者から聞いた言葉で一番記憶に残っているのが、「お客様は素晴らしい、お金を払ってくれる上に、色んなことを教えてくれる」という言葉です。
数字しか見ない「レガシー型税理士業者」の弊害
多くのレガシー型税理士業者は作業時間あたりの単価ばかり気にして、このクライアントからはこれだけの報酬しかもらっていないから、これだけの作業しかできないとか、このランクのスタッフしか稼働させられないとか、そんなことを言っているのが常です。
レガシー型税理士業者はクライアントごとに時間単価を計算し、その時間単価が事務所の目標よりも低い場合、クライアントに値上げを要請します。しかし、クライアントからすればその時間単価の根拠、つまりどのスタッフがどのような業務でどれだけ時間を使ったかなんて見えません。
そしてその時間単価が低くなっている理由は大抵、スキルの低いスタッフがあーでもないこーでもないと悩みながら記帳代行をしたり、クライアントに伝わりにくい一方的なコミュニケーションで資料要求や質問をしたり、あるいは専門外の業務を安請け合いしてしまったり、そういうスタッフ側の問題に起因します。
つまりはスタッフのスキルや判断力が不足しているから時間単価が低くなることが多いのですが、レガシー型税理士業者のマネージャー層はそのスタッフがクライアントとどのようなコミュニケーションを取っているかを見ていない、つまりは丸投げ放置、「あとはよしなに!」という放任スタイルなので、スタッフからすると自分のやり方が間違っていて、改善すべき余地があるということを知る由もありません。
しかし本来、事務所にとって一番大切なのは、自分たちがその作業時間を短縮するために、クライアントとの連携を両者負担なく行うためにどれだけ工夫と努力をしているのか、そして何より、そのクライアントから何を学んで何に活かしているのか、そうした「クライアントから教えてもらうこと」なのです。
それでもレガシー型税理士業者は自分の目でクライアントを見ることはなく、見るのはスタッフの作業時間と、クライアントからもらう金額、その時間単価だけです。レガシー型税理士業者はクライアントを見ていません。見ているのは数値だけです。
「数字のドヤ!」はもう要らない
さて、皆さまが顧客だったとして、そんな業者から単価が安いと言われたらどう思うでしょうか?ブチギレますよね?快くは思わないのではないでしょうか?残念ながら、税理士業界はそのような「レガシー型税理士業者」が跋扈しています。彼らが誇るのは「事務所の年商」「一人当たりの生産性(売上)」「顧問先の数」「年間の申告数」、そんな無味乾燥な「数字」ばかりです。
「○○○社を超える会社設立をサポート!」「年間○○○件以上の相続税申告!」「税理士顧問先○○○社からの依頼にスピード対応!」ドヤ!ドヤ!ドヤ!
もううんざりです。
本来、士業の仕事というのは法と制度の専門家として、クライアント一人一人(一社一社)をリスクから守り、トラブル対応を助け、高みを目指す背中を押していくことなのです。そこに「数字のドヤ!」は要りません。そんな「数字のドヤ!」は不毛で、無意味で、独善的、単なるマスターベーション、オルツ、みんなで大家さんです。
「ドヤ!」るなら具体的に
どのようなクライアントをどのようなリスクから守ったのか
どのようなクライアントのどのようなトラブル対応を助けたのか
どのようなクライアントのどのような挑戦をサポートしたのか
そういう体験談をアピールすることが本質です。そして、士業はそうした体験をクライアントと接する中でしか得ることはできません。しかし、レガシー型税理士業者はそういう体験を得ようともしません。単に、契約書で取り決めた画一的な最低限の作業を淡々とこなすだけです。
その姿はまるでロボット(いや今日日ロボットのほうがいい仕事をするかもしれませんが)、学習をしないロボットそのものです。だからレガシー型税理士業者に経験は蓄積されません。蓄積されるのは数字だけ。数字、数字、数字。だから数字しかドヤれないのです。空虚、虚構、ハリボテ。残念ながら、そういうレガシー型税理士業者がごまんといます。私がもし彼らを一堂に集めることができれば、彼らに向かってこう叫ぶでしょう。
数字でドヤるな!経験でドヤれ!
実績ゼロからの脱却:自ら「起業」して経験を作れ
さて、ここからは集客に困っている開業したばかりの税理士さんたち、独立しようか迷っている税理士さんたちのために、どうやって「経験でドヤるのか」、分かりやすい具体例を挙げます。まず、事業主が税理士を探すきっかけは大きく分けて次の2パターンです。
いままで税理士を入れず自身で申告をしていたが、事業規模が大きくなってきたのでそろそろ税理士を入れたい
いまの税理士のパフォーマンスに不満がある(レスポンスが遅い、説明が分かりにくい、帳簿を作るだけでレビューや提案もない)ので税理士を変えたい
ここで、開業したばかりの税理士がまずアプローチすべきは1の「初めて税理士を頼む事業主」でしょう。ただし、単に資格を振りかざすだけでは他の候補と差がつきません。しっかりと経験をアピールする必要があります。しかし、開業したばかりの税理士はドヤれる経験もない、そう思うかもしれません。でも、ドヤれる経験がなかったら、経験を作ればいいのです。
まず自分で開業届を出す!
青色申告承認申請も出す!
適格請求書発行事業者登録申請書を出す!
給与支払事務所設置届を出す!
会社も設立する!(株式会社がベスト)
社会保険の手続きもする!
信用金庫に行って融資を依頼する!
クラウド会計ソフトを自分のアカウントで使い倒す!
電子帳簿保存法を実践する!
ネットバンキングで納税する!
ホームページを自作する!分析ツールを入れる!
SNSでコンテンツを作って運用してみる!
事務所の賃貸契約をする!(レンタルオフィスでも)
これだけやれば、一通りの起業初心者が通るプロセスを経験したことにはなるでしょう。確かに初歩の初歩ではありますが、その初歩を踏み出していない競合と比べればその経験値は雲泥の差、ゼロとイチの差は無限の差です。そして、大抵の税理士法人や税理士事務所のいち担当者は、自分で事務所を持っているわけではないので、この初歩的な起業経験を持ちえません。
もうそこであなたは税理士法人の担当者レベルをリードできる、すなわち勝っているわけです。あとはその自身の経験に基づく自信を持って見込顧客にアプローチすれば、顧客側も必ずその自信を感じ取りますから、自然と顧問契約がついて来ます。顧客は本来的にはあなたの肩書や経歴を見たいというよりも、あなたの経験を見たいのです。顧客があなたに何を期待するのか、あなたの何を知りたいのかを鋭敏に感じ取ることが最初のステップであり、それなくしてはその顧客と豊かな関係を築いていくことはできないでしょう。
経験を「身体レベル」で言語化する
次に、2の「税理士の切替えを検討する事業主」にアプローチする時はこれまで述べた経験にプラスして、あなたの実務経験を凝縮してアピールする必要があります。税理士登録には2年の実務経験が必要なので、誰しもクライアントに税務業務を提供したり、企業や法人の決算・税務に関わったりした経験があるでしょう。
あなたがこれまでどのような事業者に何を提供してきたのか、その中でどのような苦労があり、どのような工夫をしてきたのか。その結果、その事業者にどのような利益をもたらしたのか。その経験を凝縮してすらすらと話せるように、頭でなく身体に叩き込んでおく。そのために経験を思い出し、レビューし、内省し、意味づけをし、言語化する必要があります。
うすっぺらなコンサルタントが吐くような耳心地のよいセリフを暗記するのではなく、生の、あなたの経験という一次情報を、あなたのことを何も知らない人に対して短時間で伝わるように、心を込めて言葉に編み、心に秘めるのです。経験の言語化、それを寝ても覚めても実行していれば、いざというときにその言葉が自然と口を突いて出てくるようになります。
ちなみに私の場合、税理士法人における9年の実務経験の中で、輸出入、運輸業、建設業、飲食業、製造業など様々な事業者と関わることができました。その経験の中で、単に画一的な最低限の作業をこなすのではなく、クライアントからの要望や相談に対して、専門の範囲内で自身とクライアントの両方が納得いくまで、調査し検討し言語化して、結論を出してきました。専門の範囲外のことは他の士業先生や先輩税理士に協力を仰ぎ、クライアントが納得するまでフォローしてきました。その経験が、いまの私の中に生きているわけです。肩書なんぞクソの役にも立ちません。とにかく経験、経験、経験こそが全てです。
リスクと挑戦こそが事業の本質
だからいま税理士法人に務めていて、将来独立開業を目指している人や、これから税理士業界に入ろうとしている人は、とにもかくにも業務を限定せず、経験値を積みまくる、失敗してでも挑戦して経験値を積むことが大切です。
むしろ失敗した方がよいです。会社はリスクを負うことを嫌うでしょうが、リスクを負わなければ経験は増えません。リスクを会社に吸収させられる。それが従業員のメリットです。従業員はそのメリットを最大限に活かすべきです(もちろん、経営者側は会社が吸収できるリスクの許容範囲を測定し、その範囲内で従業員の挑戦を許すべきです)。あなたがリスクを負って挑戦して得た経験は、リスクを負わずに安心してできることだけやって得た経験の何倍もあなたの自信と覚悟につながります。
なぜなら、リスクと挑戦が事業の本質だからです。多くの人は誤解していますが、安定は結果であって、目的ではありません。リスクと挑戦で勝利した結果が安定であり、その安定はいずれ必ず揺らぎます。だからリスクと挑戦を繰り返さなければ、事業は継続しないのです。
多くの経営者は当初はそれを分かっていたはずです。しかし経営者が何十年も経って現場に関わらないようになると、挑戦しないリスクを感じるアンテナが弱くなります。また取引規模が大きくなり従業員が増えれば、挑戦のリスクもまたそれだけ大きくなりますから、経営者は挑戦するリスクを過大に評価するようになります。経営者の頭の中で「挑戦するリスク > 挑戦をしないリスク」という不等式が成立しているのが、多くのレガシー型税理士業者、いや、大小問わず大企業病に冒された会社の実際なのです。したがって私のレガシー型税理士業者へのアンチテーゼは、税理士業界だけに留まる話ではないのです。
そして、あなたが顧問先を獲得できたとしても、それはゴールではなく、長い旅の始まりに過ぎません。クライアントは事業主です。事業主とは、事業を営む人のことを言います(進次郎構文)。前述したように、事業はリスクと挑戦の繰り返しです。あなたはクライアントが事業をする中で出くわすリスクと挑戦に対し、最大限のサポートを提供すべきです。もちろん、そのテーマは税務や会計だけに留まるものではないでしょう。そこで、「異業種連携」が重要になるわけです。
同業者と群れるな、異業種と連携せよ
だから開業税理士が契約獲得に悩んでいる暇があるのなら、連携しやすい異業種の集まりに顔を出したほうが良いです。逆に、その段階では、同業種の集まり、特に顧客獲得に悩んでいる同業者の集まりに顔を出すことはあまり意味がないでしょう。暇なうちに、異業種の専門家とのつながりを作っておくのが重要です。「顧問先拡大の秘訣!私はこうやって顧問先を拡大しました!」みたいなセミナーが山ほどありますが、ぶっちゃけそんなものに顔を出すより異業種の専門家との会合に顔を出した方が100倍意味があります。
そんな1時間やそこらの、何十人も集まるセミナーで得られる情報はキレイな資料とありきたりな美辞麗句だけであり、今の時代、そんな情報は生成AIに要求すればすぐに出てきます。そんなものに価値はありません。重要なのは経験、生の声、1次情報です。そんな機微な情報を、「マ○ーフォワー○」や「fre○e」が主催する大々的なセミナーで伝えることは難しいのです。講演する側も誰が来るのか把握できないですからね。
クライアントのためにスキルを磨き続ける
そして異業種との連携を強化するのと同じくらい重要なのが、あなた自身のスキルを磨いていくことです。あなたのクライアントをリスクから守り、挑戦を助けるためのスキルを磨いていくこと、それが大切です。私も日々、スキルを磨くため、研修に参加したり、記事の監修をしたり(お金ももらえて知見も整理できるのでお勧めです)、書籍やオンラインコンテンツで学習したりしています。
私はクライアントさまが会社を設立したり、事務所を設置したり、従業員を雇用したり、店舗を増やしたり、新事業を展開したり、海外に子会社を出したり、他社をM&Aしたり、連結決算したり、IPOをしたり、そうした長い事業の旅を歩んでいく、それをずっとサポートしたいと考えています。だから中小企業が直面する手続きや制度の学習はもちろんのこと、中堅・大企業向けの会計・税務に関しても学習を進めていますし、それらに関わる機会も得ようと狙っています。当然のことながら、クライアントに置いていかれれば待っているのは契約解除の結末ですから、私も必死でレベルアップしなければいけません。だから顧問契約の獲得はゴールではなく、長い旅の始まり、アリアハンに過ぎないのです。
レガシー型にならないための5つの指針
さて、いつも以上に乱文になってしまいましたが、本稿の趣旨をまとめると次のようになるかと思います。
数字よりも経験を積むことが大切
自分で開業し会社を設立・運営して経験を得よ
自分の経験を凝縮し、身体レベルで言語化せよ
連携しやすい異業種の集まりでコネクションを作れ
クライアントのために必死にスキルを磨け
この方針を心に刻んで一日一日を大事に過ごせば、レガシー型税理士業者なんぞまったく相手になりません。あなたは簡単に彼らを吹き飛ばし、自然とあなたのクライアントは増えていきます。しかし忘れてはなりません、それはスタートであってゴールではないのです。それを見誤った瞬間、あなたはレガシー型税理士業者の仲間入りです。そうなればあなたは逆に吹き飛ばされるほうになるでしょう。
ゆめゆめ、油断なさらぬことです。リスクと挑戦の連続が事業であり、開業を決めた瞬間、あなたは事業主のひとり、真剣勝負に参加する一員なのですから。しかし、真剣勝負を生きた人生、それは何ものにも替えがたいでしょう。一生は一度きりです。人間だれしもいつかは霧散し、後に残るのは、あなたが関わった人たちとの関係性だけです。事業主として生きることは、多くの人々と、豊かな関係性を築くことができる道のひとつである、確実にそういえます(もちろん、他にも道はたくさんあります)。さあ、挑戦するなら良い時代です。きょうから開業の準備を始めませんか?弊所が何でも相談に乗りますので、どうぞお気軽にご連絡ください。
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