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フェア・タックス構想とその可能性:所得課税から消費課税への転換

  • 本稿は私が2022年度に大学院の講義課題として提出したリアクションペーパーを元にしています。したがって情報が基本的に2年前となっていますことをご了承ください。

 世の中には、法人税、所得税、遺産税などを全廃し、消費課税で置き換える「フェア・タックス」という改革案があるということをご存知でしょうか?極論ではありますが、具体的にはどういうものなのか、興味を持ったため調べてみました。フェア・タックスについて国内で検討されている情報はインターネット上では見いだせませんでしたが、アメリカではフェア・タックスを提唱する活動がなされています。以下、その活動の主体と内容を調べた限りで記載します。

 Americans For Fair Taxation[1]は、1995年にヒューストンの3人の起業家により設立された団体です。所得課税を消費課税に置き換える運動を展開し、フェア・タックス法案を2021年の第117回アメリカ連邦議会の下院に提出しました。その主な内容は以下のとおりです。

  • 現行の所得税、給与税、財産税、贈与税の代わりに、課税対象の資産又はサービスを米国内で使用又は消費することに対し、全国売上税を課す。

  • 売上税の税率は2023年に23%となり、それ以降の年度は税率を調整する。次の資産又はサービスについては売上税を免除する

    • 中古・無形資産

    • 事業・輸出・投資目的で購入した資産又はサービス

    • 公共の目的で購入した資産又はサービス

  • 米国居住者は、世帯人数及び貧困ガイドラインに関する基準に基づき、毎月、売上税のリベート(家族消費手当)を受け取ることができる

  • 各州は、売上税を管理、徴収し、財務省に送金する責任を負う。

  • 税収は、(1)一般財源、(2)老齢遺族保険信託基金、(3)障害保険信託基金、(4)病院保険信託基金、(5)連邦補助医療保険信託基金に配分される。

  • 2025年以降、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)の運営には資金を出さない。

 つまりは、現状、アメリカの売上税は州ごとに0%~10%と異なっていますが、これを全国一律にして売上税以外を廃止するという案です。ちなみに売上税は小売業者から徴税する税であり、小売業者だけでなく製造業者や卸売業者からも徴税する消費税とは仕組みが異なります。

 売上税は23%と高くなりますが、一方で個人所得税や法人所得税はゼロになるためその分商品やサービスの税抜価格は安くなり、税込価格はさほど増加しないだろうという理論が前提になっています。また、個人所得税や給与税もないため、その分消費者にとっては手取りが多くなりますから、税込価格の上昇分も吸収可能になるということでしょう。

 また、注目すべきは所得の少ない世帯に対しては世帯人数に応じて売上税を補填するリベートを給付することです。商品やサービスについて売上税部分が大きくなり本体価格が下がったところに売上税部分を給付することで、低所得者層は今までよりも暮らしやすくなる可能性があります。このリベートはある意味ではベーシックインカムのような役割を果たすものとなるかもしれません。

 最後に、2025年以降はIRS(日本の国税庁に該当する機関)の運営資金を出さないとしているのは、恐らく全国一律の売上税導入とその他の税目廃止によって、租税の管理コストが極限まで減少することを想定しているのだと思われます。このような管理コストの削減は、折しも2024年12月にアルゼンチンのミレイ大統領が150種類以上ある税を6種類にすると発表したことを想起させますね。

 中里実教授も仰っているように、経済がグローバル化したことによって法人及び個人の所得税・資産税の課税が困難になっており、今後もその傾向はますます強くなっていくと想定されます。アップルもグーグルもアイルランドに拠点を構え、ダブル・アイリッシュ・アンド・ダッチ・サンドウィッチにより堂々と課税逃れをしていますし、個人の富裕層も海外に居住したり資産を移転したりして節税に勤しんでいます。この大きな流れを踏まえると、今はまだ極端かつ異端な意見でしかない「フェア・タックス」も、徐々にその見方が改められてくるかもしれません

 ただし、日本における消費税の現状について言えば、それが社会保障費の財源に充当することになっているうちは、単に「増大する社会保障費をできる限り賄うため」という狭い視野でしか議論がされない可能性があります。このくびきを断ち切って、税と社会保障のバランスを俯瞰して議論を進めないと、抜本的な解決策を練り上げることはできないように感じますね。


[1] Americans For Fair Taxation “FAIR tax” (https://fairtax.org, 2022/11/16最終閲覧)

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