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インボイス制度下の仕入取引リスクと仲介偽装の罠

 前回の記事では形式的な輸出者(名義貸しの輸出商社)を通じた輸出取引における税務上のリスクについて説明しました。今回は同類のリスクが輸出取引だけではなく国内取引においても発生し得るという事例を説明したいと思います。


仕入税額控除にはインボイスが必要

 現在ではインボイス制度にもとづき、消費税の仕入税額控除を行うためには適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の発行した適格請求書(インボイス)が必要です。

 インボイス発行事業者であってもインボイス発行事業者以外の者(免税事業者や消費者、登録を受けていない事業者)に支払った商品やサービスの代金については仕入税額控除ができないため(実際には2029年9月まで一部の控除を認める経過措置が取られています)、そのような場合にはインボイス発行事業者は支払った消費税のぶん損をする構造になっています。

取引の仲介者を挟むケース

 さて、実際の現場では仲介者を通じて個人や免税事業者などインボイス発行事業者以外の者から仕入れを行うことがあります不動産取引金地金取引を想像すると分かりやすいかもしれません。

 仲介者は仕入先のプライバシーや機密の保護、手続き円滑化のために間に入りますが、この場合には仲介者は取引される商品やサービス自体に係る売上・仕入を計上することはありません。

 下の図で言えばB社は仲介者に過ぎず、実質的な仕入者はA社です。この場合、仕入先はインボイス発行事業者ではないので、A社は仕入税額控除を行うことができません※。したがってA社は支払った消費税のぶん損をします。

中間の仕入先によるトラップが有り得る

 ここで、中間の仕入先が取引の実態を偽装することで、自己に利益をもたらそうとすることがあり得ます。以下の図では中間の仕入先はB社、最終の仕入先はC社です。C社がインボイス発行事業者でない場合、B社は仕入税額控除を行うことができません。このままではB社は支払った消費税のぶん損をします。

 そこで、B社は故意に売上・仕入を計上せず、A社とC社の取引の仲介者を偽装することで、売上に係る消費税の納付を回避することを企みます(当然違法行為です)。B社が仲介者の立場になると、A社の実質的な仕入先はC社となるので、C社がインボイス発行事業者でない場合、仕入税額控除を行うことができなくなります

 とはいうものの、A社からはB社がどのような会計処理・税務申告をしているかは見えませんから、A社はB社からインボイスをもらって仕入税額控除を行っています。

 ここでB社に税務調査が入ったときに、当局がその得意先にあたるA社の会計処理・税務申告を確認することがあり、B社が仲介者の立場であることが認められれば、A社の仕入税額控除が否認される可能性がああります。

 こうした言わば「仲介偽装」は金地金など仕入先の利幅が小さい取引において行われることがありますが、インボイス制度が施行されてまだ2年足らずであることを考えると、将来は建設業や加工業など様々な分野でこうした工作が行われる可能性も否めないように思えます。

 まっとうな事業者が仕入先の違法行為のせいで不利益を被ることは看過されてはいけない事態ですが、インボイス制度下においては直接の仕入先だけでなく、さらにその先の仕入先に関しても理解を広げ、自社を含む商流の全体を把握して取引を行う必要があるということでしょう。


※ なお、A社が古物商として商品を仕入れている場合や、不動産会社として販売用の土地や建物を仕入れている場合は一定の条件を満たせば特例が適用されますのでこの限りではありません。


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