人間の体のすごさ。神が作りし物と思うわけだ。
週末になると、気分転換を兼ねてロードバイクで川沿いを走る。
風を切りながら、景色を眺めて、自分のペースでペダルを回す時間が好きだ。
プロのレースを見ていると、選手たちがジェル状の補給食を口にしている。
「あれだけ長い距離を走るのだから必要なんだろうな。」
そのくらいにしか思っていなかった。
正直、自分には関係のない話だと思っていた。
脂肪なら、十分すぎるほど蓄えている。
少しくらい食べなくても、エネルギー切れなんて起きるはずがない。
そんなふうに考えていた。
ところが、少し長い距離を走っていたある日、突然、脚が動かなくなった。
疲れたという感覚とは違う。
ペダルを踏もうとしても、まったく力が入らない。
「あれ?」
もう少し頑張ろうと思っても、体が言うことを聞かない。
まるで、アンパンマンがお腹を空かせて力が出なくなる、あの状態だった。
近くのコンビニに立ち寄り、甘いパンとスポーツドリンクを買った。
少し休憩して口にすると、不思議なくらい体が軽くなった。
さっきまで動かなかった脚が、また普通に回り始める。
人間の体とは、なんとも不思議なものである。
あとから調べると、体には「すぐ使えるエネルギー」と、「蓄えてあるエネルギー」があるらしい。
脂肪は大量にあっても、すぐには使えない。
だから、すぐに使える燃料が底をつくと、体は危険だと判断し、これ以上動かないようにブレーキをかける。
なるほど。
あの突然の失速は、故障ではなかった。
体からの警告だったのである。
それを知ったとき、妙に感動してしまった。
体は、自分が意識しなくても、常に命を守るために働いている。
心臓は休まず動き続ける。
呼吸は寝ている間も止まらない。
傷は勝手に治っていく。
熱が出れば、体は戦っている。
空腹になれば、食べろと教えてくれる。
そして、危険なところまで来れば、強制的に止めてくれる。
あまりにも精巧にできている。
こんな仕組みを見ていると、ふと考えてしまう。
誰が、こんな体を設計したのだろう。
もちろん、誰かが図面を描いたわけではない。
長い時間をかけて、生き延びた仕組みだけが残り、今の人体になったのだろうけど。奇跡だよね。
それでも、初めてハンガーノックを経験した私は、ただ素直に驚いた。
人間は、自分の意思で生きているようでいて、実は体に生かされている。
そんな感覚になったのである。
普段は当たり前すぎて意識しない。
だからこそ、こういう小さな出来事が、その当たり前のすごさを教えてくれる。
ロードバイクは、景色を見せてくれる乗り物だと思っていた。
でも今回は、景色ではなく、自分の体の中を見せてもらったような気がした。
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