まず自分から「インサイドアウト」 #54
中国の古典『論語』に、こんな言葉があります。
「君子は諸(これ)を己に求め、小人は諸を人に求む」
「優れた人は問題の原因を自分に求め、そうでない人は他人に求める。」
とてもシンプルですが、コミュニケーションの本質を突いた言葉です。
人は、信頼や情報を得たいとき、つい相手に求めがちです。
でも心理学では「先に自分が開く」ことが有効だとされています。
これがいわゆる“自己開示効果”です。
自分のことを話してくれた相手には、
「自分も返したい」と感じるものです。
これは“好意の返報性”と呼ばれる、人の自然な反応です。
逆にいえば、閉じている相手に対しては、
こちらも心を開きにくくなるものです。
だからこそ——
「まず自分から」なのです。
■ インサイド・アウトという考え方
これはスティーブン・R・コヴィー氏の著書『7つの習慣』で語られる
「インサイド・アウト」の考え方にも通じます。
うまくいかない原因を、
上司・部下・顧客・環境のせいにするのではなく、
まず自分のあり方を見直す。
外を変えたいなら、内から変えるという考えです。

■ 欲しいものは「先に与える」
コヴィー氏は、インサイド・アウトをこう具体化しています。
• 幸福な結婚を望むなら、まず自分が良いパートナーになる
• 子どもに成長してほしいなら、まず自分が理解ある親になる
• 裁量がほしいなら、まず責任ある行動をとる
• 信頼されたいなら、まず信頼される人間になる
つまり——
欲しい結果を、先に自分が体現するということです。
言い換えれば、
信頼されたい → 先に信頼する
理解されたい → 先に理解する
多くの人が「逆の順番」で考えてしまう中で、
あえて順番をひっくり返す。
遠回りに見えて、これが一番確実な近道です。
■ すぐに結果は出ないという前提
とはいえ、すぐに環境が変わるわけではありません。
ここで思い出したいのが、やはりコヴィー氏が示した「農業の法則」です。
「蒔いたものしか、刈り取ることはできない」
農場においては、種を蒔いても直ぐに実るわけではありません。
また、台風などの災害などもありますので、絶対に収穫できるとも限りません。
それでも、種を撒かないことには収穫することはできないのです。
■ 小さな自己開示が、組織を変える
自己開示も同じです。
特にシャイな日本人にとっては、少し勇気がいる行為かもしれません。
でも——
組織の力は「どれだけ理解者を増やせるか」で決まります。
だからこそ、まずは小さくでもいい。
• 自分の考えを一つ伝える
• 小さな失敗を共有する
• 感謝を先に言葉にする
そんな“種”を蒔くこと。
結果を急がず、続けることです。
■ 自分から変わるという選択
その積み重ねが、やがて信頼になり、
互いに尊重し合えるコミュニケーションへとつながっていきます。
「自分を改めることを、他者に求めるより先に」
このシンプルな姿勢が、
組織の空気を、そして結果を変えていくはずです。
自分自身を振り返って、
「まず自分から」動けているかを考えてみたいと思います。
