それでも「頑張れ」と言いたい #52
現代では、メンタルヘルスへの配慮から、「頑張れ!」という言葉を、むやみに掛けてはいけないと言われることがあります。
確かに、その通りだと思います。
すでに限界まで努力している人にとって、「もっと頑張れ」という言葉は、励ましではなく、プレッシャーになってしまうことがあるからです。
だからこそ、相手の状態を考えずに「頑張れ」と言うことには、慎重であるべきなのだと思います。
それを前提として、それでも私は、努力している人にこそ、「頑張れ!」と伝えたいと思っています。
なぜなら、「頑張る」という行為そのものには、結果とは別の、大きな価値があると思うからです。
そしてもう一つ、大切なことがあります。
それは、頑張ることと、自分を壊すことは違うということです。
■ 心のコップは、人それぞれ
人の心には、それぞれ大きさの違うコップがあると思っています。
同じ仕事量でも、余裕を持ってこなせる人もいれば、それだけで心がいっぱいになってしまう人もいるということです。
だからこそ、誰にでも同じように「頑張れ」と言えばいいわけではありません。
もちろん、時には、無理をしなければならないこともあります。
もう一歩だけ踏み出さなければならないときもあります。
自分の限界を少し超えて挑戦することで、初めて見えてくる景色もあります。
しかし、注いだ水があふれてしまうほど、自分を追い込み続けてはいけません。
「いつも八分目から少し上」くらいを意識することが私は大切なのではないかと思います。
少し余裕を残しながら、もう一歩だけ挑戦してみる意識です。
そして、もう一つ大切なのが、そのコップそのものを大きくする努力です。
昨日は八分目で苦しかったことが、今日は少し余裕を持ってできるようになる。
以前なら諦めていたことに、もう一度挑戦できるようになる。
苦しい状況に直面しても、冷静に考えられるようになる。
それは、心のコップが大きくなったということです。
つまり、「頑張る」とは、ただ無理をすることではありません。
自分の今の力を知り、その範囲で一歩踏み出すことです。
そして、その一歩を積み重ねながら、自分自身の器を少しずつ大きくしていくことです。
それが、本当の意味での成長なのだと思います。

■ 努力は必ず報われるのか
そもそも、「頑張る」とは何でしょうか。
夢や目標の実現を願い、そのために努力し続けることだと考えています。
しかしながら、現実はそれほど甘くありません。
どれだけ努力しても、必ず報われるとは限りません。
一生懸命勉強したのに、試験に落ちる。
必死に練習したのに、試合で負ける。
仕事に全力を尽くしたのに、評価されない。
夢を叶えるために努力を続けても、夢そのものを諦めなければならないことさえあります。
どれだけ頑張っても思い通りの結果にならないことだってあります。
そんなとき、ダメな自分を責めてしまうこともあるのかもしれません。
しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。
努力したことと、結果を必要以上に結びつけてはならないということです。
仮に望ましい結果が出なかったからといって、その努力まで無価値になるわけではないのです。
スポーツの世界などでよく言われる言葉があります。
「努力した者がすべて報われるとは限らない。
しかし、成功した者は皆、すべからく努力している。」

■ それでも、成功者には共通点がある
残念ながら努力すれば必ず成功する保証はありません。
むしろ、努力だけではどうにもならないことが現実です。
自分ではコントロールできない要素が、結果を左右することもあります。
それでも、成功を目指すのであれば、努力という過程を避けて通ることはできません。
この考え方は、スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』で語られる「農場の法則」にも通じるものがあります。
農場には、即効性のある成功法則などありません。
種を蒔く。
肥料を与える。
水をやる。
雑草を取り除く。
成長を支える。
そうして、時間をかけて、ようやく収穫を迎える。
当然ですが、種を蒔かなければ、収穫は絶対に訪れません。
しかし、ここで大切なのはもう一つの事実です。
どれだけ丁寧に育てても、台風や天候などの不可抗力によって収穫が叶わないこともある
それでも、種を蒔かなければ、何も始まらない。
これが「農場の法則」です。
■ 人事を尽くして天命を待つ
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があります。
何事も、まずは、やるべきことをやり切る こと。
人間の能力には限界があります。
できる限りの努力をした後の結果は、人の力だけではどうにもならない部分もあります。
だからこそ、努力したのであれば、焦らず、結果は運に任せる。
運を勘違いしている人がいます。
運とは努力した人だけが得られる権利だと思っています。
努力もせず、頑張りもせずに待っていても、運は訪れません。
そして、その結果がどうであっても、後悔や自己嫌悪にとらわれる必要はありません。
現実を受け止め、また次へ進めばいいのです。
諦めてしまったら、そこで本当にすべてが終わってしまいます。

■ 思うは招く
北海道の植松電機の植松努さんの有名なスピーチに
「思うは招く」という言葉があります。
努力しても、すぐに結果が出ないことはあります。
それでも、努力した人は確実に成長しています。
努力が無駄になることはありません。
仮に今は失敗に見えても、その経験はきっと未来の成功につながる大切な軌跡になるはずです。
そして、そうした経験の積み重ねによって、少しずつ心のコップも大きくなっていくのだと思います。
昨日できなかったことが、今日はできる。
以前なら苦しくて立ち止まっていたことに、今は向き合える。
それは、目に見えないけれど、確かな成長です。
だからこそ、努力する前から
「どうせ無理」
と言ってしまうのは、とてももったいないことだと思うのです。
できるかどうかは、やってみなければ分からない。
叶うかどうかは、挑戦してみなければ分からない。
少なくとも、「無理だ」と決めつけてしまえば、可能性はそこで消えてしまいます。
■ だから私は「頑張れ」と言いたい
私は、努力している人にこそ、努力の価値に気づいてほしいと思っています。
頑張っていることの価値に気づいてほしいと思っています。
夢を信じて努力し続けることは、いつか成功を招く力となるはずです。
だからこそ、決してネガティブになるのではなく、あえてこう伝えたい。
「頑張れ!」
そして、頑張ったことを形にするために、どうか妥協しないでほしい。
あとは ― 願えば、招く。
