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「書くことで人は伸びる」再現性のある成長のつくり方 #90

人は時間とともに、物事を忘れます。
だから記録することは大切な行為です。

しかし「書くこと」の本質は、単なる記録ではありません。
それは、思考を整理し、理解を深め、さらに脳そのものの働きを高めるための行為です。

■書くことは、思考・言語化・伝達力を同時に鍛える


『7つの習慣』のスティーブン・R・コヴィー氏は、書くことの効果について次のように述べていいます。

「体験やひらめきを言葉にすることは、思考を明確にし、論理的に整理し、理解を深める力に影響する。
さらに、内面の思考を言語化することは、他者に伝わる形で説明する訓練にもなる。」

つまり書くことは、
* 思考を整理する
* 言語化する
* 伝達する
この3つを同時に鍛える認知トレーニングであるとも捉えられます。

■ 手書きは「複雑な認知運動」である


デジタルが普及した現代、
やるべきこと、買い物リスト、会議メモ——
私たちは、ほとんどの情報をPCのキーボードなどで入力しています。

かつて当たり前だった「手書き」は、日常から急速に消えつつあるといえます。

しかし、それは、時代の変化や単なる効率化では済まされない、認知の働きそのものに悪影響を与える可能性があるともいわれています。

研究によれば、ペンを持ち、紙に書き、文字を形にする行為は、単純な入力作業ではないとされています。

手書きの過程では、
* 視覚(文字の形を見る)
* 運動感覚(手を動かす)
* 触覚(紙とペンの感触)
* 音韻処理(音を文字に変換する)
これらが統合され、複数の感覚と運動が同時に働く「複雑な認知運動スキル」であり、
この多層的な処理が、学習や記憶を強く支えていると指摘されています。
(ナショナル ジオグラフィック日本版サイト 2024年10月7日公開より)

■ 手書きは脳の広範囲を活性化させる


例えば、2021年の研究では、成人に新しい文字を学習させた結果が比較されています。
* 手書きした人
* タイピングした人
* 見て覚えた人

このうち手書きを行った人は、
* 文字の認識が速い
* 名前の想起が容易
* 発音の習得も正確
という結果を得られています。

また、ノルウェーや米国など複数の研究でも、
「手で書いた方が記憶保持が高い」という傾向が報告されています。

神経科学の研究ではさらに興味深い結果が出ています。
手書き中の脳は広範囲にわたって活動する一方で、
タイピングでは限定的な領域しか活性化しないというのです。

これは、手書きが単なる入力ではなく、
脳全体を使う統合的な作業
であることを示しています。

また、学習や記憶に関わる脳波(アルファ波・シータ波)も、手書き中により活発になることが報告されています。

■ 書くことは「暗黙知を形式知に変える行為」


ここで重要になるのが、知識の性質です。

* 暗黙知:経験や勘に基づく、言語化されていない知識
* 形式知:言語化・数値化され、共有可能な知識

組織や個人の成長において必要なのは、暗黙知を形式知へ変換することでもあります。
そして、それを解決する、最もシンプルな方法が「書くこと」であるといえます。

■ 「ID野球」が示した、言語化による再現性


かつて、プロ野球において、野村克也氏が提唱した「ID野球」は、経験や勘ではなく、データと論理で勝負を捉える考え方でした。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」

結果には必ず理由がある。
だからこそ、それを言語化し、再現可能な形にする必要があるという考え方です。

この思想の中心にあったのが「記録」であり、「言語化」であったといえます。

■ 書くことで、人はなぜ成長するのか


書くことには2つの側面があります。
1つは「記録」。
もう1つは「思考の強化」です。

書くという行為は、
* 曖昧な思考を明確化する
* 抽象を具体に変換する
* 記憶と理解を定着させる
* 脳の多領域を同時に活性化する

単なるアウトプットではなく、思考そのものを再構築するプロセスになっています。

書くことで得られるものは少なくありません。
* 経験の再現性
* 思考の整理
* 理解の深化
* 伝達力の向上
* 記憶の定着

つまり書くことは、成長に必要な要素をすべて内包しているともいえます。

野村ノート

■ 書くことで人は伸びる


効率だけを考えれば、タイピングの方が速いのかもしれません。
しかし学習や思考の深さという観点では話が変わります。

手書きは、
* 注意力を必要とし
* 感覚と運動を統合し
* 脳全体を使う
その結果として、理解と記憶が強化されるのです。

どれだけ優れた経験も、言葉にできなければ再現性を高めることは容易ではありません。
そして、書くことは、その言語化を助けるだけではなく、思考そのものを鍛え、脳の働きそのものを変えていきます。

書くことで人は伸びる。

だからこそ書くことは、自分の思考を整理し、他者に伝わる形へ変換する訓練であり、「脳を鍛える最もシンプルな方法」であり、再現性のある成長のつくり方です。

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