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研究者って、やっぱりすごい! ~國學院大學『源氏物語』講義レポ~

小田勝先生
「英語なんかでも反実仮想って習うでしょう。『私が鳥だったらあなたのところに飛んで行くのに』というやつ。
 あれ嘘ですよ。私が鳥だったらメス鳥のところに飛んで行きます。あなたのところに飛んで行ったら怪鳥です


國學院大學では毎年、夏期の公開講座が開催されているそうで、今年はちょうど『源氏物語』冒頭「桐壺」巻から学ぶタイミングであるとのこと。
6月に國學院大學での国文学会の公開講座にうかがった際、この夏の公開講座についても知りまして、このたび5日間しっかり学んでまいりました!


講座内容をそのまま書くとなると差し支えるかと思いますし、そんな精密に記憶する能力もありませんし……、ということで、特に腑に落ちた点や目からうろこの落ちた点など、Xへのポストを中心に覚え書きにします。
『源氏物語』がお好きな方、梶間和歌を応援したい方など、お楽しみいただけましたら。




研究者って、やっぱりすごい! ~國學院大學『源氏物語』講義レポ~

繁忙期? なにそれおいしいの?

6月に案内のチラシを頂き、これはと思い申し込み。
私がこれを学ぶことが世界にとって必要なのであれば、受講料は天が采配してくれるでしょう、という信頼のもといちまんえんを決済しました。ドキドキ


アルバイトの繁忙期にがっつり稼いで閑散期含めなんとか生活を回す、というやり方と決別して数年。
隠岐後鳥羽院和歌大賞の表彰式ツアーやコテンラジオサポーター限定のツアーに行った経験などもあり、

・アルバイトはあくまで趣味なので週2日まで
・勉強や創作の時間を最優先に
・お金のかかる講座なども、意義を感じてくださる読者の皆様の寄付を信じて可能なかぎり受ける
・要するに、お金を理由に自分の行動を変えない

ということで、このたびも5日間1万円の講座に申し込んだわけです。


その受講料、おととい無事引き落とされましたよ! 皆様、応援ありがとうございます!
ただ、この1万円が引き落とされたぶんはほかの生活費が圧迫されています。10月にはアパートの更新も控えています。引き続き、勉強代を含む生活費全般のご支援をよろしくお願いいたします


結果、受講して大正解の有意義な5日間でした。
あの日思い切って申し込んだ自分と、1万円の予定外の経費(出費)を無事支払わせてくださったすべての読者様に感謝!


1日目、小田勝先生

文法学者先生とは比べるべくもありませんが、梶間和歌、おそらく子どものころから文法や文の構造については平均より考えてきたほうだと思います。
「『水飲む』なのになぜ『水飲みたい』なのだろう? 」というようなことを延々と考えている子どもだった。
短歌添削や評の仕事をもらうと、歌そのものについてコメントする以前に文法が気になり、そちらについてばかり筆を割いてしまいます(ある程度は努力して内容にも触れています。ある程度は)

そんな私の興味関心にぴったり合致する講義でした。
ご本人は「文法の話ばかりするとおもしろくないかもしれないけれど」とご謙遜なさっていましたが、私には大変有難かったです。

単に私の関心事のご専門だから、というだけでなく、お話の仕方が本当におもしろくて。
こんな先生と大学時代に出会えていたら……と思わずにいられませんでした。


初めはこの5日間、午前中だけ、アルバイトのカレンダーに×を入れていたのですが、
「夕勤で22時とか23時に上がった翌朝9時半からの講義に行くのしんどいぞ。寝るぞ」と考え直し、5日間×と書き直しました。
それでなくとも早朝から汗だくになる夏場の、5日間の講義。食欲も細り体力も落ちています。アルバイトをゼロにして正解でした。


2日目、春日美穂先生&太田敦子先生

常陸宮家が没落したのは末摘花に経営能力がなかったから、というより、そもそも宮家が豊かなまま維持してゆくことは【困難なこと】だったのですね……。
名誉はあるが経済力はない。桃園式部卿宮亡きあとの女五宮や朝顔の心細さ、八宮の娘たちへの遺言など、さまざま思い合わせました。



3日目、津村昭宏先生

藤原兼輔
人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな

これを素直に「子を想う親心」と読んでよいのか……どうか。ドキドキ
たしかに、「子を想う親心」という前提でこの歌やこの引き歌を読んだ場合より、もっと穿った読み方をしたほうが、物語としては良く構成されているように見える気がします。



4日目、荒木優也先生&畠山大二郎先生

茂吉ィ!!!!!

そして嫌いなのに正しく理解している(と専門の研究者に言われる)塚本邦雄の偉大さ。
(塚本の歌についてはなんともいえませんが、文章は比較的好きです。あと歌の好みが比較的近いです)


後半の実演タイムも大変興味深かったです。
博物館でもなんでも、実物にはたしかに威力がありますが、それをよくよく受け取るには適切な解説が必要だったりする。
講義後、きれいな衣装に寄って来る大勢のご婦人方からの質問にもいちいち答えてくださいました。ありがとうございました。



5日目、竹内正彦先生

講義そのものもおもしろかったのですが、個別に質問させていただいたことへの回答が大変示唆深く、長年の疑問が氷解してゆきました。



人文に敬意を、豊かさを

このたびの講義をご担当くださった先生方、國學院大學のスタッフの皆様、本当にありがとうございました。


研究者ではない、歌人(和歌実作者)という立場から和歌本を執筆している身ですが、そんな私でも基本にはこういう考えを持っています。


和歌本でも、源氏本でも、学者でない方の書いたり講義したりしたものですばらしい本や講座は……それはもちろん、ありますよ。
ありますが、ひとつにはその割合、ひとつにはその深みの問題があって、やはりそれだけ・・では大いに偏るというのが個人的な感想です。

・短歌の歌人による和歌本に、学会では数十年前に常識となっていることがまったく反映されていない
・百人一首しか和歌を知らない素人が百人一首から和歌を語ろうとする
・インフルエンサー(?)が、『源氏物語』の全容を大まかにでも把握しているとはとても思えない「週1ペースで各巻を解説します」という宣言をする

こんなこと、学者先生の本や講義ではあり得ません。


もちろん、学説の対立はあるでしょう。
しかし、「鎌倉時代の和歌はほとんど題詠」ぐらいの常識もなしに鎌倉時代の和歌について議論をしたり論文や本を書いたりする研究者はいないのです(と信じたい)


ひとりの先生について和歌史や『源氏物語』を学ぶということは、私の人生ではありませんでした。
ただ、独学でこれらを学び、自分でも和歌本を執筆するくらいになって、改めて「研究者は偉大だよ」「先行研究は偉大だよ」という当たり前のことを噛み締めています。

自分個人の感性で歌を詠んでも自分の数十年の人生しか頼れないが、和歌史の末に自分がいることを自覚したうえで歌を詠めば千年以上ぶんの蓄積の力を借りることができる。

勉強も、なんでも、そうなんだよな。
ニュートンも「巨人の肩に乗ってこそここまで来られたのだ」と言ったではないか。
なぜニュートンより知性も感性もいまいちな凡人が、その凡なる個人の力でなにごとかを成し遂げようとするのか、私にはよくわかりません。


『源氏物語』や和歌に関してさまざまな本が、ブームも手伝って出版されましたし、これからも出るでしょうね。
かわいいキャラクターの解説してくれる入門書、○○に喩えた入門書、10分でわかる○○、もちろん意義はあるでしょう。しかし、それらでなにかを知ったような気にならないでほしい。

私は、学べば学ぶほど、また自分でも教える立場になり時が経つほど、研究者の方々のお仕事の偉大さに頭を垂れずにいられなくなりました。

ごくまれに学会という場に顔を出すことがありますが、
「研究者の方々がこのように真摯に研究、議論しておられるからこそ、私は数千円出すだけで本が読めるのだなあ」としみじみします。

基本的にはものを減らしていたい人間ですが、本だけは、いますぐ読めなくても買ったりもらったりしてOKということにしています。
人文系の本、すぐに絶版になるんだもの! こんなに貴重なものが……。


私は和歌に人生を捧げ、すべては無理でもなるべく多くの記事や作品を無料公開し、お金の部分は読者の皆様からの寄付に頼ることに決めています
そんな私を金銭的に応援することは、人文知が正しく評価される未来、人文知に関わる人が経済的に(も)豊かに生きられる未来の実現に貢献することである、そう信じています。

ですので、私を応援してくださる方が同じように、研究者の先生の本にお金を払ったり、思いを馳せたり、してくださったらうれしいな。
「和歌さんのAmazonウィッシュリストから本をプレゼントすると、著者さんにはお金が行くし、和歌さんには本が行くから、ダブルでうれしいの」なんて言ってくださる読者様もいます。ありがとう。


日本仏教という分野で偉大な研究成果を上げながら、20以上の大学に応募して雇用されず、アルバイトで研究費や生活費を賄い続け、2016年、43歳で命を絶たれた西村玲先生。
厳密な分野は異なりながら、同じ人文系のこととしていつも心に引っ掛かっています。

そんな悲しいことの二度と起こらない日本にしたいじゃないですか。


人文には意味がない、人文は金にならない、なんて言っている側のリテラシーが本来問われるべきなのですが、
わめいても正論を説いても残念ながら効果はないので、合理的に、いまこの瞬間できることをしてゆきましょう。


改めまして、このたびの7名の先生方、國學院大學のスタッフの皆様に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

来年以降も受講できるよう、いっそう励みます。引き続き応援よろしくお願いいたします。


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今後とも、あなたはあなたの領分において、私は私の領分において、ともに世界を美しくしてゆきましょう。


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