立春――心が春を見る ~京極派スペース テキスト版~
この記事は、X(旧Twitter)のスペースで毎週おこなっている
京極派スペース
(京極派和歌をテーマにした音声配信)
の音声をもとに、内容を整理し、読み物としてまとめたものです。
スペースでは特に台本も用意していませんし、話し言葉のまま思考を進めているため、
専門用語が多かったり、要点のつかみにくかったりする部分もあります。
本記事では
配信を文字起こしし、読みやすく構成を整理、
それとは別に簡単な目次を冒頭に付けました。
無料部分では
「この回ではどんなテーマを扱っているのか」
「どこが読みどころ・聴きどころか」
などがわかるよう、全体の見取り図を提示しています。
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立春――心が春を見る ~京極派スペース テキスト版~
今回のテーマは「立春直後の京極派和歌(玉葉集)」です。
京極派スペース「立春直後の京極派和歌(玉葉集)」
『玉葉集』に入集した立春やその直後あたりの京極派和歌をご紹介しました。
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) February 7, 2026
『玉葉集』入集歌だけで50分ぐらい使ってしまったので、『風雅集』のほうはまた次回にしますね。
今日もリアタイいただきうれしかったです!
アーカイブもお楽しみください。#京極派https://t.co/9N7IHu9erV
「立春直後の京極派和歌(玉葉集)」ガイド
1. 西園寺実兼「梓弓はる立つらしも」―—擬古の技法
万葉風をあえて作る
枕詞・終助詞・二句切れ
「かも」「もがも」などの上代語
「らし」の正しい使い方
2. 伏見院「春きぬと思ひなしぬる」――心が春を作る
京極派と唯識的視点
心の認識としての自然描写
3. 京極為子「かすみなれたる」――理とユーモア
擬人化された霞
「気色」の意味
京極派和歌は“理の歌”か
4. 後伏見院「春にしあれや」――万葉風の残響
二句切れ・「し」・枕詞
京極派の中での位置づけ
5. 京極為兼「霞の色は春めきにけり」―—為兼自讃歌
鳥の音=小鳥という京極派的用法
のどかという春の語
京極派の完成形
6. 伏見院「けふの春雨」――季節の進行を詠む
双貫句法(対句的表現)
必然的な「かな」
京極派スペース「立春直後の京極派和歌(玉葉集)」テキスト版
・ぜひスペースを聴きながらお楽しみください。
・文章だけでも読めるよう整えてあります。
・文字起こしデータをもとに整形しているため、読みにくい箇所や漢字変換などがあるかと思います(梶間がふだん仮名表記している副詞が漢字になっている、など)。ある程度整えてはありますが、諸々ご了承ください。
・本記事の書籍リンクにはAmazonアソシエイトを利用しています。
立春が今年2月4日でしたので、今回は立春後最初の京極派スペースになります。
なので、京極派の人たちの詠んだ立春の歌とかその辺りを紹介しようと思います。
西園寺実兼のこの歌が、『玉葉集』最初の、京極派歌人による和歌になりますね。
初春の心を
入道前太政大臣
梓弓はる立つらしももののふの矢野の神山霞たなびく
すごく古風な歌ですね。
これを聴いている令和の皆さんは
「和歌はそもそも古風なものだから、『古風な和歌』とはどういうことだ」
という気持ちになるかもしれないし、私も時々自分で突っ込むんですけど、それにしてもこれは古風です。
とても『万葉集』っぽいというか。
わざとそういう言い回しを使ったんでしょう。
まず二句切れですね。四句も緩やかに切れているかな。
少なくとも二句の句切れは明確。
二句切れ、四句切れは『万葉集』によく見られる句切れの形です。
「梓弓」は「春」を導く枕詞。「弓」は「張る」ので「梓弓はる……」と「春」を導く枕詞です。
枕詞という技巧は『万葉集』のころ多用されました。
もちろん『古今集』以降も使われますよ。使われますけど、そんなに多用されるものではない。『古今集』以降使うとしたら、ちょっと古風な雰囲気です。
『源氏物語』に末摘花という宮家のお嬢さんが出てきます。
ちょっとどんくさく、ちょっと頭の回転の遅い、ちょっと不美人なお姫様がいますけど、和歌も元々下手という設定なんですね。
しかも、宮家のお嬢さんで古風に育てられて、ふだん接する女房たちも年取った人が多く、感覚や常識が古風。
なので、彼女の和歌もちょっと古風なんですよ。
彼女は「唐衣」という枕詞と多用するというか、技巧をそのぐらいしか知らない疑惑があるぐらい……さすがにそんなことはないかな。でも、やたらと枕詞「唐衣」の歌を詠むんです。
『源氏物語』が書かれ広まっている、と史料で最初に確認できるのが1008年なので、書き始められたのは1000年代とか990年代とかその辺かなと想定されますけど、
『源氏物語』のなかの世界は、その書かれたころより50年ぐらい前を想定しているのではないか、と言われます。
そうすると、『源氏物語』の世界は950年ぐらい。
950年ぐらいの時点で「唐衣」とか「梓弓」とかいった枕詞を使うというのは……最先端ではない。
少なくとも「末摘花様はちょっと古い感じのお好みなんですね」という雰囲気ですよね。
950年の時点でそう。
『玉葉集』の編まれたのは鎌倉時代の終わりですから、そりゃもう、もちろん、という感じです。
擬古的な雰囲気を出すためにあえて使うということは、『古今集』以降の人も『源氏物語』より後の人も皆さんしますけど、『万葉集』のように枕詞を多用するということはないです。
中世の和歌では。(京極派の活動時期は中世です)
その中で「梓弓」を使っているということは、「あえてそういう雰囲気を出したかったんですね」ということです。
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