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5年間の花、九条左大臣女 ~京極派スペース テキスト版~

この記事は、X(旧Twitter)で毎週おこなっている

京極派スペース
(京極派和歌をテーマにした音声配信)

の音声をもとに、内容を整理し、読み物としてまとめたものです。


スペースでは特に台本も用意していませんし、話し言葉のまま思考を進めているため、
専門用語が多かったり、要点のつかみにくかったりする部分もあります。

本記事では
配信を文字起こしし、読みやすく構成を整理
それとは別に簡単な目次を冒頭に付けました


無料部分では
「この回ではどんなテーマを扱っているのか」
「どこが読みどころ・聴きどころか」
などがわかるよう、全体の見取り図を示しています。

文字起こしを整理した全文は、有料部分に掲載しています(一部無料です)
じっくり読みたい方はぜひご覧ください。


無料部分、有料部分、いずれも音声を聴きながら理解を深めたり楽しんだりする補助として、ご活用いただけたらと思います。


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5年間の花、九条左大臣むすめ ~京極派スペース テキスト版~

今回のテーマは「九条左大臣女の「心のままに」」です。


京極派スペース「九条左大臣女の「心のままに」」

2026年3月11日放送


「九条左大臣女の「心のままに」」ガイド

1. 京極派の基本思想

  • 「心のままにことばの匂ひゆく」

  • 伝統的和歌観との対立

2. 九条左大臣女の特異性

  • 摂関家の貴女きじょ

  • 記録の残らない理由

  • 5年間の活動

3. 御子左家の系譜と京極派成立の背景

  • 二条家・京極家・冷泉家の分裂

  • 為兼ためかぬと二条家の対立

4. 九条左大臣女の登場とその意味

  • 為兼との関係性

  • あの・・九条左大臣女」が加わることのインパクト

5. 二条派から見た九条左大臣女

  • 二条派系勅撰集への多数入集の理由

  • 身分と実力

6. 正安元年五種歌合――京極派の「完成形」の先取り

  • 模索期における先導者

  • 正安元年の歌の『玉葉集』『風雅集』入集の意味

7.推定される死去

  • 『玉葉集』入集数から見える「過去の人」化

8. 九条左大臣女の歌風

  • 古典摂取の革新性

  • 物語の自然描写を純自然観照歌に

9. 「実景をそのまま詠む」こと

  • 見ているようで見ていない問題

10. 京極派と人生

  • 雑に生きているかぎり成功しない歌論

  • 和歌や人文学は手段ではない

11. 九条左大臣女の歴史的意義

  • 九条左大臣女にとっての「心のままに」

  • 京極派発展への先駆的貢献

  • 幸福な人生とは

12. 春の歌の紹介

  • 濃厚で骨太な春の歌

13. 前期京極派のなかでの存在感

  • カラフルな前期、水墨画的な後期

  • 九条左大臣女の位置づけ


京極派スペース「九条左大臣女の「心のままに」」テキスト版

・ぜひスペースを聴きながらお楽しみください。
・文章だけでも読めるよう整えてあります。
・文字起こしデータをもとに整形しているため、読みにくい箇所や漢字変換などがあるかと思います(梶間がふだん仮名表記している副詞が漢字になっている、など)。ある程度整えてはありますが、諸々ご了承ください。
・本記事の書籍リンクにはAmazonアソシエイトを利用しています。


今日は九条左大臣女という女性の紹介をしようと思います。


以前、前期京極派女性歌人の紹介をしたことがあるんですね。
1回の配信で4、5人の前期の女性歌人をまとめて紹介しました。

その時に九条左大臣女のことも紹介しているんですけれども、
私この方の歌がとても好きで、また彼女の立ち位置が前期京極派の中でも結構面白いので、
今回、配信1回使ってこの方について紹介してみようと思いました。

いま春なので、彼女の詠んだ春の歌も紹介できたらと思います。


京極派とは「心のままに詞の匂ひゆく」ことを第一とする和歌グループですが、
九条左大臣女の「心のままに」とはどういうことだったのか。


最初に復習しますね。

中世日本の伝統的な和歌の詠み方、 今私たちが「二条派」と呼ぶ当時の主流派の和歌の詠み方においては、
「人の心をそのまま詠むのが歌ではない。歌に詠むべき心というものがあって、 それを選んでいい具合に歌にするんだ」
という、すごく雑に言うとそういう常識があったんですね。

それに対して京極為兼ためかぬや、為兼と仲良しの持明院統の皇族やそこに連なる貴族、つまり伏見天皇とその周りの人たちが、主流派のやり方には飽き足らなかった。

為兼はなかなか個性の強い人間で、
「そうじゃない。歌ってそんなんじゃないんだ」
ということを言いました。

「『心のままにことばの匂ひゆく』ように詠むのが良い歌だ。
歌って本来そういうものだ。
良い心と良くない心を分けるとか選ぶとか、そんなんじゃない。
詞を使ってありもしない心をこねくり回して作り上げて『これが歌だ』とやるのは違う」

という、こちらも雑に説明しましたが、そんなイメージの主張をしまして、
それに対して春宮時代の伏見天皇やその仲間たちが賛同し、色々試行錯誤をしていった、
そんなグループが京極派です。


九条左大臣女というのは、その京極派の前期の、おそらく比較的初期からいた方なんじゃないかな。

はっきりと活動の残っているのが5年間だけらしいんですよ。
その5年間でものすごい活躍をして急に消える。

女性なので、あまり記録が残っていないんですね。


同じ女性でも、例えば永福門院は記録からわかることがかなりあります。

彼女は天皇の奥様になって、その後いろいろな政争もある中で持明院統の最年長者になる時期もあるし、
すぐ近くに義理の息子のような存在として花園院という、細々と日記を書く方がいたので、永福門院についても彼が色々書き残している。
また、永福門院の実家である西園寺家の公宗きんむねの妻である名子さんも日記に色々書いてくれまして、それらが永福門院研究の手がかりになっています。

加えて彼女はけっこう長生きしたし、歌を詠んだ期間も長いので、そういうこともあって研究のなされやすいところがあります。

けれども京極派にかぎらず女性歌人は、全員が全員天皇の奥さんになって記録がたくさん残って、ということではない。
なかなか記録の残らない方も多いです。


九条左大臣女は、生まれがとても良い。
摂関家のお嬢さんで、しかも摂関家の別の家に嫁ぐので、
天皇の中宮になったわけではないけど、当時の女性としては最高に近い貴女ですね。

摂関家に生まれ、摂関家から摂関家に嫁いだ。
女房勤めをするには身分が高すぎたせいで、逆に記録の残りにくかった部分があるのかな。
女房は日記を書いたりしますが、この方はそういうこともない。
残っているわずかな記録や歌から人生のいろいろなことを計算したり推測したりしないといけない方です。

そんな中で、彼女は5年間だけ京極派歌人としてものすごい活躍をして消えてゆく。
歌の実績を見るとそういう不思議な方です。


京極派は、京極為兼が前期の中心であり、言い出しっぺですね。

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