「雪朝望」詠の出来るまで ~和歌の推敲記~
隠岐後鳥羽院和歌大賞にて古事記編纂千三百年記念大賞を頂いたのを機に、梶間和歌、冷泉家時雨亭文庫に入会いたしました。
(大賞関係の記事はこちらに連載しております)
そちらの年4回の会報に、題詠の和歌を投稿するコーナーがございます。
初回投稿歌がこのたび無事掲載されましたので、
掲載歌、投稿歌、その形に至るまでの推敲の様子などをnoteにて公開いたします。
ご自身で和歌をお詠みになる方の参考や刺激としてはもちろん、
歌詠みさんでなくとも、いち歌人が歌を詠み、推敲する過程に触れてみたいという方はぜひお楽しみくださいませ。
「雪朝望」詠の出来るまで ~和歌の推敲記~
会報「志くれてい」掲載歌
雪折れに夢は途絶えてなかむれは踏ままく惜しき庭の朝明け 梶間和歌
「志くれてい」読者投稿のお歌は濁点を付さずに表記するようですので、私もそのように致しました。
参考歌
夢かよふ道さへ絶えぬ呉竹の伏見の里の雪の下折れ 藤原有家 新古今和歌集冬673
待つ人のいまもきたらばいかがせむ踏ままく惜しき庭の雪かな 和泉式部 和泉式部集171(和泉式部続集566、結句「庭の白雪」)
(題発表の時点では「雪朝望」、実際に歌の掲載された紙面では「雪朝眺」でしたが、前者のほうが題として馴染んでいるかと思われます)
おおまかな推敲過程
・題の発表とあわせて付された、冷泉貴実子先生の解説を読み込む
・「堀河百首」『新古今和歌集』『玉葉和歌集』『風雅和歌集』などで雪の歌、「雪朝望」題に近い歌を読み込む
・「雪朝望」題で用いるべき語や参考になるアイテム、景の構造などを把握する
・完成度を気にせず歌を詠む、詠みまくる
・推敲と削除を繰り返す
第1段階
野の末のすゑまでひとつ白妙にふるさと寒し雪の朝明け
晴れやらぬ雲にまがひて朝明けの山の端とほし初雪の空
山里は雪白妙にうづもれて末見え分かぬ煙たなびく
朝日影みがく野末に煙たちぬ朝餉のかまど賑はひぬらし
野も山もうづみ果てたる雪の朝にほそき煙ぞ賑はひにける
朝影に外面の山もひかりみちて煙さびしき雪のふるさと
野末まで日影に雪はみがかれて鳥しづかなる里のあけぼの
風冴ゆる朝の外面に竹さやぎ雲にまがへる雪の山の端
鳥の音も犬の声しもせぬ雪にほそき煙の昇る朝明け
あともなくさ庭は雪にうづもれて日影にみがく里の朝明け
雪折れに夢は途絶えてみわたせば踏ままく惜しき庭の朝明け
鐘の音もこほる朝けのながめより白みそめぬる雪のやまざと
立ちさわぐ波かと見えて朝日影てらす浦廻の雪の真砂地
山の端もふもとの里もひとつにて雪白妙の今朝のあけぼの
呉竹の伏見の夢はさめやらで雪白妙の里のあけぼの
仁徳天皇御製とされる「民のかまどはにぎはひにけり」、有家作「伏見の里の雪の下折れ」を踏まえたものが多いでしょうか。
その他、伏見院や京極為子など、京極派歌人の詠を着想のヒントとしたものもいくつかありました。
第2段階
野の末のすゑまでひとつ白妙にふるさと寒し雪の朝明け
山里は雪白妙にうづもれて末見え分かぬ煙たなびく
野も山もうづみ果てたる雪の朝にほそき煙ぞ賑はひにける
朝影にそともの山もひかりみちて煙さびしき雪のふるさと
野末まで日影に雪はみがかれて鳥しづかなる里のあけぼの
風冴ゆる朝のさ庭に竹さやぎ雲にまがへえる雪の山の端
あともなくさ庭は雪にうづもれて日影にみがく里の朝明け
雪折れに夢は途絶えてながむれば踏ままく惜しき庭の朝明け
鐘の音もこほる朝けのながめより白みそめぬる雪のやまざと
立ちさわぐ波かと見えて朝日影てらす浦廻の雪の真砂地
同想の歌のなかで完成度の低いものを削ったり、
冷泉家は京極家と仲がよかったとはいえ、和歌で犬の声は冒険しすぎかな、と考え犬の歌を削ったりしました。
初案から詞を少し変えたものもあります。読み比べてみてください。
第3段階
野の末のすゑまでひとつ白妙にふるさと寒し雪の朝明け
山里は雪白妙にうづもれて末見え分かぬ煙たなびく
野も山もうづみ果てたる雪の朝にほそき煙ぞ賑はひにける
朝影にそともの山もひかりみちて煙さびしき雪のふるさと
あともなくさ庭は雪にうづもれて日影にみがく里の朝明け
雪折れに夢は途絶えてながむれば踏ままく惜しき庭の朝明け
鐘の音もこほる朝けはひむがしの峰より白む雪の山里
立ちさわぐ波かと見えて朝日影てらす浦廻の雪の真砂地
「鐘の音」の歌を大幅に推敲。
推敲はあらかたできたかと考え、このあとはごりごり削除し2首に絞ってゆきました。
会報「志くれてい」投稿歌
雪折れに夢は途絶えてなかむれは踏ままく惜しき庭の朝明け
朝影にそともの山もひかりみちて煙さひしき雪のふるさと
もう一度、会報「志くれてい」掲載歌
雪折れに夢は途絶えてなかむれは踏ままく惜しき庭の朝明け 梶間和歌
和歌をお詠みになる方の参考になりましたら幸いです。

和歌の推敲記
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和歌にフルベットして生きる梶間和歌がつつがなく和歌創作、勉強、発信を続けるため、余裕のあります方にお気持ちを分けていただけますと、
私はもちろん喜びますし、それは日本や世界の未来のためにも喜ばしいことであろうと確信しております。
「この無茶苦茶な生き方を見ていると勇気がもらえる」
「こういうまっすぐな人が健康に安全に生きられる未来って、希望がある」
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なんて思ってくださいます方で、余裕のあります方に、ぜひともご支援をお願いしたく存じます。
noteでのチップ、メンバーシップ、その他様々な形で読者の皆様にご支援いただき、こんにちの梶間和歌があります。ありがとうございます。
特に2023年、令和5年隠岐後鳥羽院和歌大賞で古事記編纂1300年記念大賞を受賞し、表彰式を含む大会のツアーに申し込んだため、ツアー代金(9万円弱)と交通費を生活費と別に工面することになりました。
皆様のご支援のおかげでそちらのツアーに無事参加。
また翌年、城南宮・鳥羽殿賞を頂きまして、こちらの表彰式ツアーにも参りました。
すべて皆様の金銭的なご支援があってこそ叶ったことです。あらためて、心より感謝申し上げます。もちろん、お気持ちでの応援も大変うれしく思っております。
こうした応援のひとつひとつが私の器を広げ、より良い和歌仕事を世界にお返しすることにつながっております。
令和5年、6年分ともに、ツアーの様子はこのマガジンに連載しております。更新をどうぞお楽しみに。
今後とも、それぞれの領分において世界を美しくしてゆく営みを、楽しんで参りましょう。
この記事を書いた人


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