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スタッフ90人にAIを使ってもらうために、10分の勉強会で話したこと

ここまで、AIで事務作業を減らした話をいくつか書いてきました。

給与チェック。音声入力。名刺の分析。

ただ、これらには共通の弱点がありました。全部、私ひとりでやっているということです。

スタッフは90人以上います。私ひとりが速くなっても、事業所は変わりません。

そこで、10分の勉強会をやりました。この記事は、そこで何を話したかの全部です。資料の中身をそのまま書きます。

なぜ10分にしたか

介護の現場に、勉強会のための時間はありません。

シフトの合間、申し送りの後。集まれるのはせいぜい10分です。1時間の研修を組めば、来られない人が出ます。来られない人が出れば、「あの話を聞いていない人」ができて、結局広がりません。

10分で終わる。だから全員に同じ話ができる。

内容は、詰め込まずに削りました。伝えたのは3つだけです。

① 最初に「これは誰のための道具か」を話した

いきなり使い方から入りませんでした。先にこれを話しました。

うちの法人は「三方良し」を理念にしています。ご利用者良し、スタッフ良し、法人良し。

AIは、この中の「スタッフ良し」のための道具です。

  • 残業せずに帰れること

  • 記録に追われないこと

これも立派な「スタッフ良し」だと伝えました。そして、事務が減れば利用者さんと向き合う時間が増えるので、結果として「ご利用者良し」にもなる。

なぜここから入ったか。AIの話をすると、多くの人が最初に「仕事を取られるのでは」と身構えるからです。

だから資料にはこう書きました。

AIが人の仕事を奪うのではなく、人にしかできない仕事に時間を戻すために使います。

ここを飛ばして使い方の説明を始めると、聞いている側は最後まで警戒したままです。

② 使いどころは2つだけ見せた

たくさん見せると、何も残りません。2つに絞りました。

ひとつ目は、記録の下書き。

今までは、白紙を前にして一行目で止まる。言葉を選びながら、最初から文章を組み立てる。時間がかかります。

AIを使うと、単語のメモをそのまま渡すだけです。

入浴拒否 昨日も声かけで応じた 湯温ぬるめ希望

これを渡して「介護記録の文章にして」と頼むと、丁寧な下書きが出てきます。あとは読んで、事実と違うところを直す。

つまり、「書く仕事」が「直す仕事」に変わります。

白紙から書くのと、出てきたものを直すのとでは、心理的な負担がまったく違います。ここが一番伝えたかったところでした。

ふたつ目は、会議・お便り・掲示物。

  • 会議中のばらばらのメモ →「議事録にして。決まったことと宿題を分けて」

  • ご家族向けのお便り →「専門用語を使わず、やさしい日本語で」

  • 事業所に貼る掲示物 →「短く、読みやすく」

そして、こう付け加えました。

「気に入らなければ『もっと短く』『もっとやさしく』と言えば、何度でも書き直します。何回頼み直しても怒りません。」

これが意外と効きました。人に頼み直すのは気を使いますが、AIには気を使わなくていい。この一言で表情が変わった人がいました。

③ その場で実演した

説明だけで終えると、誰もやりません。実際に画面を見せました。

特別なソフトは入れません。 うちはGoogleのサービスを使っているので、いつものGoogleの画面から「Gemini」を開くだけです。右上のアプリ一覧から選べます。

やったことは4ステップです。

  1. Geminiを開く

  2. さっきのメモをそのまま打つ(文章になっていなくていい)

  3. 出てきた文章を全員で読む

  4. 「もっと短くしてください」と入力する → その場で書き直される

4番までで、かかった時間は約30秒でした。

3番で「完璧ではない」ことを全員で確認したのが大事だったと思っています。完璧でないと分かるから、自分で直す気になる。

ルールは3つだけにした

ここが一番悩みました。禁止事項を並べると、誰も使わなくなります。かといって何も言わないと事故が起きます。

3つに絞りました。資料の文言そのままです。

① 個人情報を入れない

  • ご利用者・スタッフの氏名、住所、電話番号は入力しない

  • 「A様」「80代の女性」に置き換える

  • ここは絶対です

② そのまま出さない

  • AIは平気で間違えます。もっともらしい嘘を書きます

  • 必ず自分の目で読んで、直してから使う

  • 最後に責任を持つのは人間

③ 迷ったら聞く

  • 「これ入力していいのかな」と迷ったら、一度止める

  • 管理者に確認する

  • それで叱られることは絶対にありません

3つ目を入れた理由は、②までだと「怒られそうだから使わない」になるからです。

止まって聞いたことを責められる職場では、誰も止まりません。黙って使って、黙って事故が起きます。「聞いても叱られない」と明言することが、実はルールの中で一番重要だと思っています。

宿題は「うまくいった話」を求めなかった

最後に、こう伝えて終わりました。

成功例だけを集めると、うまくいかなかった人が黙ります。黙った人は、二度と使いません。

失敗を持ってきていい場にしておかないと、声が大きい一部の人だけが使う道具になって終わります。

まだ結果は出ていません

正直に書いておきます。これはまだ始めたところで、成果は何も出ていません。

何人が実際に試したのか、記録の時間が減ったのか、それとも「よく分からなかった」で終わったのか。まだ分かりません。

分かったら、また書きます。うまくいかなかった場合も書きます。

ただ、10分で全員に同じ話をするという形にしたことだけは、間違っていなかったと思っています。長い研修を組んでいたら、まだ1回も開けていないはずなので。


介護の現場は、記録も請求も労務も、書類に時間を取られすぎています。ここを軽くしないと、本来やるべき仕事の時間が出てきません。

うちで実際にやったことを、失敗も含めて書いています。

千葉県柏市・我孫子市で介護事業をやっています。

https://note.com/wakiaiai_kaigo

※本noteは個人の発信であり、所属法人の公式見解ではありません。

うちで動いている道具のひとつを、仕組みごと公開しました。

勉強会でそのまま使えるスライドと台本を、別の記事にまとめました。

https://note.com/wakiaiai_kaigo/n/…


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