むちゃぶり!<とんでも>テーマの不意打ちを受けました
スケッチのテーマ選びについて:私の教室の場合
スケッチ教室で教えることは多々ありますが、決して教えることが出来ないものがあります。
それは、生徒さんが描きたいと思うテーマの選択です。
人はなぜ絵を描くのか? 古今東西この問いに対して多くの観点から議論されてきたと思いますが、おそらくこれはという回答はまだないのではないでしょうか。
個人的な意見ですが、人が何を描くのか、それは描く人のテーマの選択と選択した理由に関係していると思います。何かに心を動かされ、それを誰かに伝えたい、その表現手段の一つに「絵」がありそうです。
さて、そのテーマの選択ですが、初心者の場合、往々にしてなぜか描きたいものがわからないという人がいます。
私が想像するに、大人になると多くの名画を見ているせいか、「絵画」というものはこういうものだと固定観念があって、本人は日常生活でも色んな場面で感動し、心を動かしているのに、それがスケッチのテーマになるとは思っていないようなのです。
ですから、私の教室では、生徒さんが何に心を動かされるのか、何に関心を持っているのか、それを対話を通じて、ご本人に考えていただき、最終的に具体的なテーマを提案していただくことにしています。
さて、これからが本記事の本題です。
むちゃぶり!とんでもテーマの不意打ちを受けた
先日、生徒の一人Fさんに、話をしながら次に描くテーマを決めようとしていた時に、思いがけない「言葉」を聞くことになったのです。
その方は、府中市にある「都立浅間山公園」の雑木林に住む鳥や昆虫、また珍しい植物、花に関心を持ち、スケッチをはじめてからはそれらを描いてきました。
そこで、その関連で何かないかと話し合っていたのですが、突然
「草叢(くさむら)」を描きたい
という声が聞こえました。
私は、思わず聞き返しました。「草叢ってあの雑草のですか? 一本ではなく、集まりのですか? 本当にお好きなのですか」と。
Fさんは、「そうです」と断言します。私はもう一度確認しました。
結論を言えば、可憐に花咲く雑草ではなく、やはり名もなき雑草が集まっている単なる草叢だというのです。
こんなテーマを考えたことは一度もなかったと内心思いながら、wikimedia commons の写真を検索して、イメージにあう写真を選んでもらいました。
そしてFさんがこれです!と選んだ写真が以下です。

via Wikimedia Commons
まさに、どこにも目立つ花や葉っぱのない、雑草が寄せ集まった画像です。ちなみに、今調べるとこの画像は、インド西南部で撮られたものでした。日本で撮られたといっても不思議ではない、どこにでもありそうな雑草たちです。
試しに線描して見た
その日の教室では、この写真選びで終り、私は内心とまどいました。一体これを線描したらどうなることやらと不安に思ったからです。
その夜おそるおそる試し描きをしました。その結果を下に示します。

確かに中心となるへそは無いものの「あれ、いけるのでは?」というのが第一感想です。ごちゃごちゃしているものの、なにか抽象絵画にみえるのです。そして線も心地よい。この写真撮影者には悪いのですが、「写真よりも魅力的だぞ」と。
私はその感想の原因を考えてみました。
それは「植物の力」だと。
植物そのものの形態は勿論ですが、雑草と言う植物の持つ生命力も関係するのではないか。
そして、描いている時は、とても気持ちがよかったのです。その形態を描く行為自体が脳に心地よさをもたらしていたと思います。
実は最近、府中市美術館で開催中の「橋口五葉のデザイン世界」展を訪れたばかりです。そこで、思いかけず、橋口五葉がデザインの源泉にしていたという多くの植物を描いた「五葉百花譜」を知りました。
また、4年前に訪れた「杉浦非水 時代をひらくデザイン」展で見た「非水百花譜」も図録でときどき眺めています。
当然、伊藤若冲、歌麿、北斎、広重など江戸の画家達の花鳥画の実物をその後幾度も見ているのですが、なぜ彼らがこれほどまでに植物にこだわるのか、今回の試し描きで何かわかったようなきがしました。
それは、客観的な眼で詳細に観察し、解剖学的に描く西洋の植物画とは異なるものです。筆(ペン)を走らす身体の喜びではないのではと思うのです。
水墨画の花鳥画については、きちんと記事にしていませんので、もう少し考えてみたいと思います。
(おしまい)
参考
ちなみに、私がこれまで、草叢をどのように描いてきたのか、もちろん、草叢だけを描いたことは無いのですが、風景スケッチの中で、それなりの面積で描いたものを振り返ってみました。



右:六甲の沢
以上、下草や込み入った植物の群を描いていますが、あくまで主役ではないので、今回描いた線描とはまったく描き方や受ける印象が違うことがわかります。
前回の記事は下記をご覧ください。
