マクロス主砲論
1.宇宙戦艦ヤマトにおいて波動砲は主砲ではなかった
『宇宙戦艦ヤマト』というSFアニメ作品は、その後にも次々と続編が制作され、21世紀に入って久しい2012年には、完全リメイク版となる『宇宙戦艦ヤマト2199』も公開されて、現在でも後続シリーズが制作され続けている人気作品です。
正直に言えば、初代『宇宙戦艦ヤマト』のTV版放映が1974年と、相当に昔の作品なので、元々のファン層はたぶん、筆者よりも10歳は年上の方々だと思います。
しかし、今では想像もつかないでしょうが、ビデオテープ(死語)もDVDも、もちろんインターネットなど影も形もなかった時代です。
主に夕方の時間帯に何度も何度も、くりかえし放映される「再放送」を観ることで、筆者を含む当時のキッズたちはアニメを履修していたのです。
このヤマトという宇宙戦艦には、艦首にあの有名な「波動砲」という必殺武器を備えているのですが、お話の中ではいつも「波動砲」と呼ばれるだけで、「主砲」とは呼ばれません。
「主砲」と呼称されているものは別にあり、いわゆる船の甲板部に並んでいる「三連装砲」(ショックカノンという、衝撃性と熱エネルギー性を併せ持つビーム砲を放つ)のことを、「主砲」及び「副砲」と呼んでいました。
まあ、元々、初代『ヤマト』の設定は、太平洋戦争時に撃沈された「戦艦大和」を宇宙船に作り替えたというものですから、過去の「戦艦大和」と同じ呼び方、扱いをするという意味もあったのでしょう。
当時キッズであり、ミリタリー知識も歴史知識も何も持ち得ない身でしたので、その作中の呼び方には何の違和感も持ちませんでした。(そもそも波動砲が、エネルギー充填という一種の様式美を必要とする、いわば「非通常兵器」扱いだったことも関係するかもしれません)
2.そうか、主砲ってその艦船で最も強力な砲撃武器のことなんだ
こうして、幼少の頃から主に小学校低学年くらいまでの時期に、上記の『宇宙戦艦ヤマト』をはじめ、『銀河鉄道999』等の松本零士作品のブームを体験して。(『ヤマト』は純粋な松本零士作品ではないという意見も一部にありますが)
その後、『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』といった富野監督作品を、やはり夕方に放映される「再放送」枠で履修していき……。
やがて、小学生高学年頃に、『超時空要塞マクロス』に出会うことになります。
『マクロス』に関しては、それはもう色んな側面から語ることができるのですが、ここでは「主砲」についてです。この『マクロス』では、初代作はもちろん、シリーズ全般にわたって、宇宙船の艦首から強力なビーム砲を放つ描写が多用されるのですが。
例えば……。
TV第1話「ブービートラップ」において、ブリッジクルーのクローディアが、いくらガスコンロのスイッチのようなレバー(※注1)を操作しても効かず、「主砲が、作動します!」と言った後に。
もしくは、劇場版(愛・おぼえていますか)でグローバル艦長が「撃てぇ!」と言った後に。
全長1200メートルという大きさを持つマクロスの巨大な艦首部分が二つに割れて、その間隙を荷電粒子(的な何か)がスパークしていき、それが最高潮に至った瞬間、前方へ大出力の光線がビームとなって放たれます。(TV第1話では、そのビームは海を割り、そのまま大気圏外、はるか向こうの宇宙空間にあった異星人(後にゼントラーディ軍とわかる)の大型戦艦に直撃し爆散させます)(※注2)
小学生だった筆者は、この『マクロス』を観て、初めて「そうか、主砲ってその艦船で最も強力な砲撃武器のことなんだ」ということを知りました。
そしてこうも思いました。「だったら、ヤマトの波動砲も主砲なのでは?」
3.マクロスが後世の作品に与えた多大な影響
この『マクロスの主砲』描写は、後のさまざまな漫画、アニメ、ゲーム作品に影響を与えているのではないでしょうか。
筆者の頭に思い浮かぶものだけで言っても、下記のような作品が挙げられます。(注意:筆者の想像も含みます)
『アウトランダーズ』(漫画・真鍋譲治著。オリジナルビデオアニメ化)
『銀河お嬢様伝説ユナ』(レッドカンパニー原作のゲーム。オリジナルビデオアニメ化)
『機動戦艦ナデシコ』(XEBEC制作、佐藤竜雄監督によるTVアニメ。劇場化他)
本当に今、パッと思いつく作品だけを挙げたので、調べればもっとたくさん出てくると思います。(宇宙船の艦首から最も強力な「主砲」を放つという描写は、本当に多くの作品に見られるようになりました)
特に有名な『ナデシコ』の「グラビティブラスト」などは、もろに影響を受けているように思えます。
4.初代マクロスTVシリーズもリメイクしてほしい
以前、リメイクの話題を記事として書きましたが。
(下記、リンク)
この中で、『銀河漂流バイファム』をリメイクしてほしいと言いましたが、『超時空要塞マクロス』の初代TVシリーズも、本当ならリメイクしてほしい作品です。
1980年代という時代にあって……。
当時、ミリタリー分野でも人気があった可変翼戦闘機『F-14(トムキャット)』に似た戦闘機が、異星人の体格に合わせたロボットに変形するという斬新なギミック。
主人公と恋愛関係となる相手がアイドル(※注3)であったり、しかも、少女漫画のような三角関係まで描いていたり。(しかも、その三角関係の果てに主人公が選ぶのが……(※注4))
一方で、地球人の知らない宇宙では、異星(もしくは異性)文明同士の戦争が続いているといったハードSFとしての設定があったり。(TV版、そしてマクロスシリーズの主ストーリーに出てくる監察軍のことは、今でも筆者はよくわかっていません)
この時代にして、画期的だった面は、挙げればたくさんあるのですが……。
何と言っても、TVシリーズは作画崩壊がひどすぎました。
もっとも、制作側もそれを不本意に思っていたのか、後に制作された劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』では、現在でもファンからは「当時の手描きセルアニメーションの最高峰」との評価もあり、CG技術等を多用するようになった現在では、同じ作品は二度と作れないのではないかと言われるほどの、高いクオリティに仕上がっています。
なお、当作品で一躍有名となったシンガーソングライターの飯島真理ですが(※注5)、当時はアニメ界から名前が売れることについて、複雑な心境もあったと聞きます。
もしも現代なら、アニメ作品の主題歌を唄ったり、声優として出演する機会があるとなれば、それこそ買ってでも出たいと言う人の方が、おそらく圧倒的に多いことでしょう。
これも、当時の時代背景を考えさせられることだと言えます。
(つまり、アニメ業界、アニメ作品というものが、まだまだ子供向けという認識で、一般作品よりも一段も二段も低く見られていた時代だったのです)
5.おわりに
今回は、マクロスの主砲という、ニッチな側面で記事を書いてみました。
このような文章に需要があるかはわからないのですが、少しでも応援していただけるなら、筆者としても嬉しい限りであります。
6.脚注
(※注1)
正確に言えば上下は逆なのですが、どう見てもガスコンロに思えます。
(※注2)
当時としては、このビーム砲の描写は素晴らしく、SE(サウンドエフェクト)とともに、後世のSFアニメーション作品に影響を与えたと推察しています。真空であるはずの宇宙空間にあって、直撃していない艦までもがエネルギーを浴びて爆散している描写も、色々な想像を視聴者にもたらしていると言えます。
(※注3)
おそらく、当時のアイドルのイメージは、松田聖子を代表するような1970年代から1980年代のアイドルです。作中では「リン・ミンメイ」として、声を飯島真理が担当しました。作中では実際に、アイドルとして唄う描写が多数出てきます。「私の彼はパイロット」「愛は流れる」等。(「私の彼はパイロット」は後続のマクロスシリーズでもカバーされていきます)
(※注4)
ここでは、結末まではネタバレしなくないので、言いませんが。作中のアイドル「リン・ミンメイ」と、主人公の上司である「早瀬未沙」については、当時のファンの間でも、ミンメイ派、未沙派とで分かれていたように記憶しています。
(※注5)
飯島真理は、作中の「リン・ミンメイ」役のCVを担う他、実際に作中のミンメイが歌唱する楽曲もすべて唄い、現実世界においても、マクロス関連のレコードアルバムを多数出していました。当時として、「声優が歌も唄う」のではなく、「本職のシンガーソングライター(作詞作曲も手掛ける歌手)」である飯島真理が、声優もやっていたという形だったので、歌の実力も、もちろんプロだったのです。(『愛・おぼえていますか』がッヒットした際には、当時の歌番組、「ザ・ベストテン」や「ザ・トップテン」にも出演を果たしています)
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