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【第86回】ビジネス書との出会い:実力だけで勝てると思うな。きれいごと抜きの「出世」の教科書。『「権力」を握る人の法則』

この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。



書籍と著者

本日ご紹介するのは、スタンフォード大学ビジネススクール教授ジェフリー・フェファー氏による世界的ロングセラー**『「権力」を握る人の法則』**(原題:Power: Why Some People Have It—and Others Don't)です。

著者は組織行動学の権威ですが、その主張は極めて現実主義(シビア)です。 「リーダーシップ論の多くは、リーダーが『どうあるべきか』という道徳ばかり説いている。しかし現実の組織は、そんな綺麗事では動いていない」 こう一刀両断し、実際に組織で影響力を持つための技術を赤裸々に明かした、現代のマキャベリ流・処世術です。


導入:最大の敵は「公正世界仮説」

あなたが仕事で正当に評価されない最大の原因。 それは、あなたの能力不足ではなく、あなたが「公正世界仮説」を信じているからかもしれません。

  • 公正世界仮説とは:

    • 「世界は公正な場所であり、正しい行いをしていれば、いつか必ず報われる」という思い込み。

著者は言います。 「成果を出していれば出世できる、などという幻想は捨てろ」 データによれば、仕事のパフォーマンスと昇進の相関関係は驚くほど弱いのです。 むしろ、「上司との関係」や「セルフ・プロモーション(自己宣伝)」の方が、昇進にははるかに強く影響します。

「そんなの不公平だ!」と嘆いても現実は変わりません。 ルールを嫌うのではなく、ルールをハックする側にならなければ、あなたは永遠に「都合のいい働きアリ」で終わってしまいます。


本書の核:権力を手繰り寄せる技術

では、どうすれば組織の中でパワーを持てるのか? 本書には具体的な戦術が並びますが、特に重要な3つを紹介します。

1. 謙虚さは美徳ではない

前回までの「心理的安全性」の文脈では「謙虚さ」が鍵でしたが、個人のキャリア戦略においては逆です。 「自分の実績を、臆面もなくアピールせよ」 人は、あなたが言った通りの人間だと認識します。謙虚に振る舞えば「自信のない人」だと思われ、堂々と振る舞えば「能力のある人」だと錯覚されるのです。

2. 「資源」を握る

権力の源泉は、誰も持っていない「資源」をコントロールすることにあります。 予算、決裁権、あるいは「情報」です。 社内の誰と誰が繋がっているか、重要人物は何を求めているか。このネットワークの中心に位置取りし、情報の結節点になること。これがあなたを不可欠な存在にします。

3. 上司を管理する

「上司のご機嫌取りなんてしたくない」と思うかもしれません。 しかし著者は、「上司を気分良くさせることは、あなたの義務であり、最強の生存戦略だ」と断言します。 上司の評価こそがあなたのキャリアを握っています。上司が何を望んでいるかを徹底的に分析し、それを満たすこと。これをサボって「仕事の質」だけで勝負するのは、防具なしで戦場に出るようなものです。


毒を食らわば皿まで

この本を読んで、嫌悪感を抱く人もいるでしょう。 「そんな社内政治に明け暮れるなんて、私の美学に反する」と。

しかし、著者は最後にこう問いかけます。 「あなたは、権力を持たずに、世の中を良くできると思っているのか?」

第85回『なぜ悪人が上に立つのか』で見た通り、私たちが権力を避ければ、空いた椅子には「悪人」が座ります。 そして、彼らが組織を破壊します。

本当に組織を良くしたい、心理的安全性のあるチームを作りたいと願うなら、まずあなたが「権力(パワー)」を握らなければなりません。 理想を実現するために、あえて泥をかぶり、清濁併せ呑む。 それこそが、大人のビジネスパーソンの責任ではないでしょうか。


まとめ:演じることから始めよう

権力者のような振る舞いは、性格ではありません。「技術(スキル)」です。 最初は演技でも構いません。 背筋を伸ばし、堂々と発言し、重要な会議の最前列に座る。

「権力なんて欲しくない」と斜に構えるのはやめましょう。 それは、戦うのが怖い自分への言い訳に過ぎません。 この本を読んで、「良い人間が、強い権力を持つ」。 そんな未来を、あなたから始めてみませんか?


▼ 合わせて読みたい(過去の連載より)

今回の『「権力」を握る人の法則』は、これまでの理想論に対する「現実的な手段」を提示する一冊です。


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