幻獣戦争②
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序章 絶望が希望に勝利した日――②
俺の呟きを裏づけるかのように、コックピットモニターの右側に左上半身が抉れ、コックピットが消失した10式戦略機が膝を屈している。自分自身の選択でかけがえのない上司を、英雄を失ってしまった。
俺が不甲斐ないばかりに、馬鹿な作戦計画を実行してしまったばかりに、こんな無様な結末を迎えようとしている……俺は……俺は……
「……クソォ……クッソォォォォォ!」
どうしようもない自分自身への怒りに自然と言葉が漏れ、スロットルレバーを握る腕に力籠る……このままやられるくらいなら――どうせ死ぬならぁ!
《――お前を道連れにしてやる!》
怒りで力が戻り、俺は状況を確認する。使える武器は兵装棚に格納されている74式近接大太刀と頭部バルカンポットのみ。敵大型幻獣との距離は既に数百メートル程度まで縮っており、全貌をコックピットモニター越しでも確認できる。
やつの甲羅のような背と脚と頭部から生えてきた火砲の集中砲火によりこちらは全滅――いや、戦域図にまだ味方のマーカー一つ残っている……誰だ!? 戦域図では左前方に表示されているな…‥俺は頭部メインカメラを戦域図の指し示す方向へ拡大。
計器類の故障でなどではなく、確かに砲火によって抉れた地表を、低空で大型幻獣に突撃する10式戦略機の背姿をコックピットモニター越しに視認できた。
『やらせはしないわ! 皆の希望を! 未来を! 奪わせはしない! ……舞人、生きて……生きるのよ! 舞人! 貴方が生きてさえいれば! きっと――生きて!』
戦域図の更新を待つまでもなく、俺はオープン回線で咄嗟に声を掛けようとするが、無線越しに女性の声が響く――間違いない。彼女だ。
『――ダメだ! だめだ黄泉! やめろぉぉぉぉぉ!』
無線越しに響かせた渾身の声に答えることなく、黄泉機は大型幻獣の集中砲火にハチの巣にされ、爆発。戦域図から最後の友軍機が消えた。
「ははっ、ははははハははハは――結局、何も守れずに終わるのか……」
突きつけられた現実に戻った力が抜けていく感覚に囚われる。やはり、このまま何もせずに死んでしまった方が、結末としてはふさわしいのかもしれない。しかし、旅立った仲間は俺を笑顔で受け入れてくれるだろうか?
せめて一矢報いるような真似をしておかないと、怒り散らして俺に八つ当たりをしてくるかもしれない。
「……あっけなくやられているくせに、人のことを言えるような死にかたしていないくせに、あいつら自分のことは棚に上げて責めてくるんだろうなぁ……責任を果たせって……責任か。軍人なら――与えられた責務を果たせ……ですよね。草薙隊長」
仲間達を死なせてしまった以上、勝てなくても可能なかぎり努力しなければならない。そんな軍人としての最低限の責任が俺に力を取り戻させてくれた。
「こちらの手札は近接のみ。敵は亀の姿をしているが、亀と同じ生態かはわからない。加えて、サイズは戦艦の数倍に匹敵する。コアの位置は――確か甲羅の中央部だったか」
上陸前の映像で確認した時まではそのはず……今もそうなっているかは不明だが、賭けてみるか。俺はペダルを踏みスラスターを点火。スロットルレバーを傾け突撃を開始する。奴が亀なら左右は視界良好で的になるだけ。
幸か不幸か、奴は俺の正面に位置している。ならばこのまま真っすぐ飛行して眼前で垂直に飛んでやれば目くらましくらいにはなるだろう。たどり着くまで生きていればの話だが……倒す事を前提に行動している自分に軽く苦笑する。まだ、敵との相対距離は数百メートル程度ある。
奇蹟でも起きないかぎり索敵されて撃破される結末しかない。お笑い草だ。勝てなくてもせめてこのくらいの事はしておかないと、後の続く者は解決策を導けないだろう。
まっ、これから死ぬ奴には関係ないか。俺は続けてもう一度苦笑するとペダルを強く踏み込み機体をさらに加速させた。
次回に続く
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