幻獣戦争 1章 1-2 不在の代償⑧
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序章 1章 1-2 不在の代償⑧
「……そうか」
「今度は私も付き合います。だから、余計な心配はなしです」
一樹は笑みを消し決意に満ちた顔で言う。佐渡島の時を気にしているのか? あの時一樹は負傷して後方に下がっていたからな。こいつが居ればひょっとすればあんなことにはならなかったかもしれない……意味のない仮定だな。
「ありがとう」
「覚えておいてください――私は貴方を見捨てない。他の人間が見捨てても、貴方が傷つき動けなくても、決して」
俺の言葉に一樹は覚悟を決めているのか言葉を続ける。
「――これからもよろしく頼む。一樹」
真友が帰ってきたのだ。こんなに嬉しいことは無い。
「ええ、任せてください。それと麗奈さんの事は知っていますか?」
そう話題を変え一樹は俺に訊く。
「何の事だ?」
「降格されて一等陸佐として貴方の幕僚に加わる件です」
俺の問いに一樹はそう答えた。どうやらある程度情報を持っているようだが、勇司のやつ俺には何も言わないんだな……
「そうかぁ。勇司のやつ結局手元におかせたいのか」
俺はため息交じりに思案する。幕僚においてもあいつが消耗するだけなんだよな。
「そうらしいですね。でも、彼女にも休養が必要ですよ」
心配しているのか一樹はそう告げる。
「お前から見てもそう見えるのか?」
「そうですね。貴方と同じようにぼろぼろです。一緒に戦わせるのは止めた方が良いかと」
俺がそう訊くと一樹は頷き断言する。
「……休養がてらに新人教育に回してみるか」
俺は考えをまとめ呟く。しかし、あいつの性格を考えると……
「中々良いポストですね。新人のレベルが格段と上がりそうだ」
「まあ、喧嘩になるだろうがやむを得ないか」
満足げに頷く一樹に俺は困り顔で述べた。
「そこはしょうがいないでしょうね。彼女からすればお払い箱と言われるようなもの、なんでしょう。そう言うつもりがなくても」
「そうだな、あいつは変なところで視野が狭くなるからな」
その意見に俺も同意する。昔から跳ねっかえりでツンデレのような奴だからな、麗奈は。
「彼女、頑張り屋さんですから――貴方と同じで」
「俺は我慢しているだけだ。ところで俺達の機体はどうなるんだろうな?」
そう言って微笑む一樹を俺は軽く否定する。いつも言いたいことを言わずに戦ってきたからな。
「10式が回ってくるらしいですよ。部隊全員最新装備になるらしいです」
「そうか。本部長、本気なんだな」
一樹はそう答え目の前の90式に目を移す。俺もそれにつられ90式に目を移した。
「いえ、若本さんが大分手を回しているみたいですよ」
俺の言葉に一樹はそう補足する。
「――なるほど。あいつが無双しているのが目に浮かぶよ」
「物資も大分無茶言ってかき集めて、九州内の軍事メーカーにも手を伸ばして技術陣を無理やり連れてきているみたいです」
冗談交じり呟く俺に知っている限りではと、付け加え一樹は言う。あいつがお得意の情報で相手を手玉に取っているのが目に浮かぶ。
「あいつは俺達を本当に最強にする気か?」
俺はそう疑問を投げかける。あいつは世界を救うと言っていたが……正直冗談かと思っていた。
「でしょうね。決して負けない。負けても諦めない不屈の師団にするんでしょうね」
「笑えないな」
自分がそう望むように一樹は言う。しかし、俺は冷淡に返す。そう、本当に笑えない――だって、あいつらは……
「だって貴方がボスなんですから。不屈の第13機械化連隊の再来です」
「そいつらは佐渡島で死んだ」
そう、自身に言い聞かせるように俺は答える。皆、俺を庇い、俺に託し、砲火に焼かれていった――今でもあの時の光景が目に浮かぶ。
「いいえ、まだ死んではいない。貴方が居る。貴方が生きている限り決して死なない。それに今度は僕らが居る。だから、決して負けない」
「一樹……」
鼓舞するように言う一樹に俺は力なく呟くことしかできなかった。
「どんな経緯であれ舞人、貴方は奇蹟を起こしたんです! だからもっと胸をはるべきだ! 貴方の事を笑う奴が居れば、私はそいつを絶対に許さない」
一樹は熱く断言する。胸を張れと、顔を上げろと言っているのだ。
「……ありがとう」
俺はそう絞りだすのが精一杯だった。我ながら涙脆くなったもんだ。
「――さて、食事でもどうですか?」
「……そう言えばそんな時間だな。行くか」
大きく息を吐き、一樹は俺の様子を見てまた話題を変える。俺は目頭を拭い外に目を向けた。いつの間にか夕陽が沈みはじめていた。
「ええ。行きましょう」
一樹は促すように頷き、俺達は食堂へ向かうため格納庫を後にした。
次回に続く
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