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妖怪と蒸気機関

―同じ土壌に咲いた花

ふと思った。江戸の「妖怪革命」と、英国の産業革命は、実は似ているのではないか―。妖怪と蒸気機関。並べてみると、笑ってしまうほど噛み合わない組み合わせ。ただ、どちらも社会が安定し、次の段階に進む余力が生まれたことから始まった"双子"のような革命だ。人の意識をがらりと変えた点もよく似ている。同じ"種"から、まるで違う"花"が咲いた理由を探れば、次にどんな花が咲くのかも見えてくるかもしれない。

連載リンク「江戸の妖怪」シリーズ:「妖怪リサイクル―再び畏怖の対象へ

根を張るまで

「妖怪革命」は、民俗学者・香川雅信氏が著書『江戸の妖怪革命』で示した概念。法政大学理工学部教授・横山泰子氏の講座(※)でも触れられた。江戸時代、本草学や博物学の発達で、不思議は不思議でなくなった。妖怪は畏怖の対象から、絵双六えすごろくや手品の種となる娯楽キャラクターへと生まれ変わった。畏怖が、娯楽へと形を変えた瞬間だ。

18世紀後半、英国で蒸気機関などの技術革新により工業化が進んだのが産業革命だ。妖怪革命も産業革命も、社会の安定という土台の上に生まれている。江戸幕府の長期の泰平、名誉革命後の英国の政治的安定。どちらも戦いから創造へ、関心とエネルギーが向かった時代に起きている。安定とは、革命が芽吹く土壌と言える。

もっとも、その方向性は正反対。産業革命は、蒸気機関や資本によって「モノをつくる力」を革新した外向きの革命。一方、妖怪革命は、人の「恐れ方」そのものを変えた内向きの革命だ。片や世界を、片や人の心の中を作り変えたのだ。この違いこそが、二つの革命を分ける明確な分岐点となっている。

現代、再び妖怪革命は起こり得るだろうか―。不安は抱えながらも、社会はなお一定の安定を保っているように見える。その上、誰もがスマートフォン一つで、世界中の出来事や感情に瞬時に触れられる時代だ。技術と感情が、同じ画面の中で寄り添うように動いている。新たな革命の種は、もうかれているかもしれない。

芽吹きの兆し

すでに兆しはある。都市伝説や怪異がネットミームに姿を変え、やがてキャラクターとして消費されていく。その構図は、恐怖が牙を抜かれ、娯楽へと変わった妖怪革命そのものだ。かつて産業革命が蒸気機関という動力で世界を変えたように、現代の妖怪革命は、外と内、両方の"動力"を同時に手にして進んでいる。だが皮肉にも、今、本気で恐れられているのは、雷でも疫病でもない。もっと身近な何かではないか。

現代の妖怪―。それは姿の見えないアルゴリズムやAIなのかもしれない。
(続く)

(写真:『りすの独り言』トップ画像/妖怪革命と産業革命=AI作成)

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