記憶のスパイス
ー東京ワンコイン(弐)
奥さんが立てたプランはお得感にあふれ、内容もユニーク。日本有数のスポットではないものの、それぞれにちょっとしたサプライズをもたらしてくれて良い。例えれば、美味しいB級グルメを食べた感じ。急場しのぎの計画のため、奥さんは船堀タワー(東京都江戸川区)が「東京3大タワー」の一つと知らなかったそうだが、あらためて調べて補足すると輝きが増した。他方、個人的に道中の小さな"やらかし"が記憶の良いスパイスになった。写真に夢中で舌打ちされたり、地元グルメを食べ損なったり、スマートフォンが電池切れになりそうだったり。楽しい思い出の1ページ。
連載「東京ワンコイン」シリーズ:「(壱)川沿い散策コスパ良し」
金魚アートと舌打ち
都営新宿線・船堀駅(同江戸川区)には、壁面に金魚のモザイクアートがある。江戸川区は金魚の養殖が盛んで、実は「金魚の日本3大産地」としても知られるという。中でも、船堀は佐々木養魚場(同)や堀口養魚場(同)など、名の知れた養魚場があり、存在感が際立っているそう。ことし(2025年)の子どもの日は鯉のぼりをあまり見かけない印象。そのため、25年は鯉ではなく金魚で我慢しようと、たっぷり壁面を眺め、スマートフォンのシャッターを切った。もちろん、無料。撮影中、夢中になり過ぎて知らないお婆さんの進路を邪魔したらしい。背中越しに舌打ちが聞こえた。
買いそびれた「金とと」
船堀駅前にある和菓子屋「御菓子処・玄舟庵(船堀店)」ー。おにぎりを準備してくれた奥さんに感謝を込め、子どもの日を踏まえて柏餅を食後のデザートに買おうと、こっそり「食べログ」で調べていた。つぶあん、こしあん(各税抜き200円)をそれぞれ購入。ただ、ぬかった。柏餅に意識を取られ、この和菓子屋の名物まんじゅう「金とと」を買わずじまい。後になって気付く。コストを抑えられたと敢えてあきらめる。このまんじゅうは江戸川区の地場産業である金魚養殖にちなみ、金魚をかたどった和菓子らしい。甘さ控えめ・ゴマ風味が絶品とか。パッケージが可愛く子ども受けしそう。
気付かぬままの千本桜
小用を足すため、いったん別れたわが夫婦。用が済むと、奥さんからLINEを通じて指令があった。「新川西水門跡に集合!」とか。電池容量の残りが心許ないスマホ。電池消費が多いグーグルマップは開きたくない。船堀タワーから眺めた新川西水門跡の記憶を頼りにしぶしぶ歩き出す。船堀駅から1km程度の距離で助かった。新川にぶつかると、川沿いの遊歩道を歩く。青空に柔らかな日差しと爽やかな風。沿道の新緑の木々が美しい。実は、この道が718本のサクラの木が並ぶ「新川千本桜」で知られる場所だとはつゆ知らず。西水門跡を後に、スマホを片手に手を振る奥さんの姿が見える。
手を振るフリして動画を撮っている。やめれ。金取るぞ。(続く)
(写真:『りすの独り言』トップ画像/新川沿いの遊歩道=りす撮影)
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