41. 応用編 / くるまの中の象徴 / まとめ
わたしは機械屋の下地を持っています。動く機械を考えるのが仕事で力の流れに沿って太くしたり細くしたり、動きや造形の成立性を考えながら設計に投影させます。
De-sign / サインを減らすのがデザイン
図面上に描く線をわずかでも減らせないか、
部品の数を一点でも減らせないか、
組立の手数を一手でも減らす方法はないか、
思考を抜きに感覚的に組める様に出来ないか、
何度も試行錯誤する作業。
ドイツでの定義は贅肉を削るのが設計の仕事と教わります、日本だとムダ取りですね。
こんにちは、加来各論です。
そんな訳で今回は車の形にまつわる話のまとめです。
機械設計に対して商業デザイン、特に自動車はタイヤが4つ、人が座る搭乗者空間、出入する扉、エンジンルーム、外を見る窓、運転席からの視認性、安全要件、法規、そういった縛りの中で個性を出さないといけないので似通った形状に落ち着きがちですが、そこに差異を生んで魅力的な商品造形を開発するデザイナーさんのご苦労は並大抵ではないだろうと推察する訳です。いったい何枚のスケッチをゴミ箱に捨てる事か...。苦労はすれどやりがいのある仕事かと思います。そういった最適化の作業もAIに奪われる話を聞きますが…。

最近のクラッシュテストや公道走行試験はほぼ仮想空間で行われている話を聞きます。そうなると人員の大幅なダイエットが必要になりますね。大規模再編が起きそうな予感です。今はドラマの序章の様な気配もありますね…。
2回に渡って造形の例をご紹介しましたが如何だったでしょうか?
言っている事より在るものをそのまま読み解く、それがエンジニアリング。現物と象徴を絡めた考察と解釈なのでメディア情報とはズレるのは当然、エンジニアリングのプロの視点です。
守破離
基本を守る。
型を破り更に良いものがあれば取り入れる。
全てから離れて独自の道を作る。

年齢的にも離の構築が加来各論です。
ちなみに現在ある産業、都市、社会構造、社会概念は全て海洋族が作っていると考えて良いでしょう。
自動車の歴史ですが海洋族が作った産業ですから株主である王侯貴族への感謝を忘れる訳にはいきません。この場合の海洋族とは物を移動することで利益を生む交易、資源、リクルートの機能を有する集団です。具体的には東インド会社、バイキング、水軍、海賊等を示します。王侯貴族には王位継承権を担保する血筋、出自が大切、その中には伝統、歴史が重要な理由付けとなります。よって彼らはそういった出資者を尊重して歴史や伝統に関するアイコンをデザインの中に織り込みます、これは各論視点。
もちろん企業の上層にはそういった事を知る人もいるかも知れませんが一般から上がった者は知る由もなく特に語られることのない話。言われればそうか、位の話です。
車は薄板鈑金で作られます。初期の自動車は同じ薄板鈑金の甲冑製造技術からの転用と考えて良いでしょう。ローマ時代の西洋甲冑は肉感的で薄板からこの様なソリッド感の表現に成功しています。

15世紀イタリア
このような実が詰まったようなソリッド感を自動車で表現出来ないか、薄いシートメタルから生まれる塊のような造形への挑戦。

店主の限界は55℃、
それを超えると火傷します。
トヨタイズムさまより
そんなテーマが流行った時期が2000年に入ってからでしょうか。
それまでの車は平らな板を大きなアールで曲げてドアにして、強度を上げる為のキャラクターラインを1本通して...の様なデザインが多かったと思います。薄板に無理をさせないデザインでした。複雑な面を表現するのに薄板を絞ったり引っ張ったりすると破れますから成形不能という事になります。

トヨタ自動車さまより
複雑で繊細な鈑金形状の再現については恐らく3DCADの進化の影響で、製品設計~装置設計まで同じデータを共有する様になり仕事の先読みがしやすくなったところも一因かと思います。開発途中でプレス性も解析が進める事が出来そうですね。ウォーターフォール型でシリーズな仕事の流れからアジャイル型な流れに変化したのも大きく影響したでしょう。

フェイズ後期、完成前に
リリースするのでバグありきです。
ネット更新が可能なので後追いで改修が行われます。
市場に他所より先に乗り込むことを大義としています。
車の歴史を遡るに内燃機が開発される前の動力は馬ですから前身は馬車になります。自動車の出力は馬力(PS)表示でした。PSはドイツ語表記でPferdestaerke、英語でHorse PowerでHPとなります。現在は1999年の国際単位の統一でkW表示になっています。これに従わない俺は俺みたいな国もあります。インフラも絡む話なのでおいそれと変更も出来ないのも事実。国際工業規格はフランスに優位性があるのですが、理由としてメートル法を制定、度量衡制を取りまとめ、軍事技術である航空宇宙、原子力、鉄道などで優位性を持っています。3DCADもシートメタル系はフランスですね。イタリアはソリッド系が得意。
馬車は平時になると「権威の見える化」のツールとして利用されます。国王が新しい領地に赴く際に一目で解るアイコンが必要なのです。それが豪華で立派な馬車です。「あれが新しい王様に違いない。」噂話をさせるほど立派である必要がありますから、前後に列をなす騎馬隊も付けないといけませんね。

騎士の馬は自前で約1000万円程、牛が40頭分、立派な農家なら3軒分、馬が戦死すれば没落の種となります。
更に平時には下賜され「大衆車」「自家用車」と称して一般にも広がります。下賜されたものはやがて時がくれば献上となります。
昨今の車のトレンドはキャラの立ったソリッド系ムキムキデザインからシンプルスクエアボックスデザインへの移行が始まっています。色も地味目、馬車に寄せているような気配もあります。次の人類のライフテーマは購買所有ではなくシェアの様ですから所有欲を煽るデザインは不要という事でしょうか?

さて今日はこの辺で。
馬車の製造メーカーについても調べないといけませんね、やること沢山。
結論 / Conclusion
王侯貴族の「権威の見える化」の道具、
それが下賜され量産されたものが大衆車。
注意 スキ大歓迎、リンク歓迎、禁不許可転載複製、応相談、少人数出張座学承ります。
*写真はトヨタ2000GTのレストア風景です。オーストラリアのレストア工房より。腕のいい職人がイギリスからオーストラリアに移住したのでしょうか。
