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難病になった私が、介護の世界で「働く意味」を見つけた話

難病になった私が、介護の世界で「働く意味」を見つけた話

難病と診断されたとき、
これから自分はどうやって生きていけばいいのか、
正直わからなくなりました。

それまで当たり前のようにできていたことが、
当たり前ではなくなりました。

体調には波がある。
無理をすれば、あとから体に返ってくる。
前みたいに、気合いだけでなんとかすることも難しくなりました。

病気になる前の私は、
「働く」ということを、
どこか当たり前のように考えていました。

朝起きて、仕事に行って、
疲れたと言いながらも、また次の日も働く。

そんな毎日が、
ずっと続いていくものだと思っていました。

でも、難病になってから、
その当たり前が大きく変わりました。

入院して、治療を受けて、
少しずつ日常に戻っていく中で、
頭から離れなかったことがあります。

「これから、どうやって働けばいいんだろう」

生活をしていくためには、働かないといけない。
でも、体は以前と同じではない。

無理をすれば、また体調を崩すかもしれない。
でも、働かなければ生活できない。

その間で、ずっと揺れていました。

仕事を探すために、
ハローワークにも行きました。

自分の状況を正直に話しました。

難病があること。
体調に波があること。
無理をしすぎると、再発の不安があること。
それでも、働きたいと思っていること。

すると、返ってきた言葉は、
私が期待していたものとは少し違いました。

「うーん……難しいですね」

そして、
「もっと大変な人もいますから」
というようなニュアンスの言葉もありました。

もちろん、相手に悪気があったわけではないと思います。

ハローワークには、
いろいろな事情を抱えた人が来ると思います。

私よりも、もっと大変な状況にいる人がいることも、
頭では理解できます。

でも、そのときの私には、
その言葉がとても重く感じました。

自分なりに必死でした。

病気になって、
これからどうやって働けばいいのか分からなくて、
それでも何とか前に進みたくて相談に行った場所でした。

そこで、
「難しいですね」
と言われたこと。

そして、
「もっと大変な人もいる」
と言われたように感じたこと。

それが、思った以上に悔しかったんです。

自分のつらさが、
少し軽く扱われたような気がしました。

働きたいと思っているのに、
働く前から難しいと言われる。

病気になっただけで、
社会から少し距離を置かれたような気持ちになりました。

「やっぱり自分には、もう普通に働くことは難しいのかな」

そんな不安もありました。

でも同時に、
悔しさもありました。

「本当にそうなのかな」

「自分にできる仕事は、本当にないのかな」

「誰かに難しいと言われたからって、ここで終わっていいのかな」

そんな気持ちが、少しずつ出てきました。

もちろん、強気だったわけではありません。

不安の方が大きかったです。
自信なんてありませんでした。

それでも、
このまま何もしないで終わるのは嫌でした。

誰かに道を用意してもらえないなら、
自分で探すしかない。

そう思って、
自分にできる仕事を探し始めました。

体に負担がかかりすぎない仕事。
未経験でも始められる仕事。
生活のために続けられる仕事。

そうやって探していく中で出会ったのが、
介護の仕事でした。

正直、最初から
「介護がしたい!」
と強く思っていたわけではありません。

むしろ、未経験でした。

知識もない。
資格もない。
右も左も分からない。

そんな状態で、介護の世界に入りました。

最初は、とにかく必死でした。

認知症の利用者さんへの対応。
おむつ交換。
集団体操。
レクリエーション。
食事介助。
移動のサポート。
送迎の補助。

毎日、覚えることばかりでした。

利用者さんの名前を覚えるだけでも大変なのに、
一人ひとり性格も違います。

好きなことも違う。
嫌がることも違う。
声かけの仕方も違う。
距離感も違う。

昨日うまくいった対応が、
今日はまったく通用しないこともありました。

「これで合っているのかな」

「この声かけでよかったのかな」

「自分はこの仕事に向いているのかな」

そんなことを、何度も考えました。

難病になって、
働ける場所を探して、
やっと見つけた仕事。

だからこそ、簡単には逃げたくありませんでした。

でも、気持ちだけで乗り越えられるほど、
介護の仕事は簡単ではありませんでした。

ある日、忘れられない出来事がありました。

いつものように利用者さんの対応をしていると、
ある利用者さんが突然こう言ったんです。

「あなた、何も分かってないね」

その言葉は、
思った以上に胸に刺さりました。

もちろん、悪気があったわけではないと思います。

認知症の症状もあります。
その人の言葉を、そのまま受け取りすぎてはいけないことも、
今ならわかります。

でも、そのときの私は、
まだ経験も浅く、
自分なりに必死にやっているつもりでした。

だからこそ、その言葉が強く響きました。

「やっぱり私はダメなのかな」

「この仕事、向いていないのかな」

そんな気持ちが、一瞬よぎりました。

難病になって、
自分の体に自信がなくなって、
それでも働こうとしていた時期でした。

だから、仕事の中で否定されることが、
余計にこたえたのかもしれません。

ハローワークで言われた
「難しいですね」
という言葉も、どこかで残っていました。

やっぱり自分には難しいのかな。
自分で見つけた仕事だけど、続けられないのかな。

そんなふうに思いかけました。

でもそのあと、
別の利用者さんがふと、こんなことを言ってくれました。

「あなた、頑張ってるよ」

たった一言でした。

でも、その一言で、
救われた気持ちになりました。

大げさに聞こえるかもしれません。

でも、あの言葉がなかったら、
私は介護の仕事を続けていなかったかもしれません。

介護の仕事は、きついです。

体力も使います。
気も使います。
人間関係で悩むこともあります。
利用者さんの言葉に傷つくこともあります。

でもその一方で、
利用者さんの何気ない言葉や笑顔に
救われる瞬間があります。

「ありがとう」

「助かったよ」

「あなたがいると安心する」

「頑張ってるね」

そんな言葉が、
ふとした瞬間に心に残ります。

私は、難病になってから、
自分の体の弱さを何度も感じてきました。

思うように動けない日もあります。
周りと同じようにできないこともあります。
無理をしたくても、無理ができない体になりました。

それは、悔しいことでもありました。

でも、介護の仕事を通して気づいたことがあります。

人は、完璧じゃなくても誰かの力になれる。

体が強くなくても、
器用じゃなくても、
最初から何でもできなくても、
目の前の人に向き合うことはできる。

それは、介護の仕事が私に教えてくれたことでした。

もちろん、きれいごとだけではありません。

介護の世界に入る前、
私はどこかで勝手に思っていました。

介護の仕事をしている人は、
みんな優しい人なんだろうと。

人を支える仕事だから、
きっと働いている人たちも優しい人ばかりなんだろうと。

でも実際には、
職場の人間関係で悩むこともありました。

言い方がきつい人。
新人に冷たい人。
忙しさで余裕がなくなっている人。
裏で人のことを言う人。

介護の仕事は、
人に優しくする仕事のはずなのに、
働いている側が疲れきっていることもありました。

その現実を知ったとき、
少しショックでした。

でも、今なら少しわかります。

介護職員も人間です。

毎日、人の生活に関わって、
人の感情に触れて、
人の命にも関わることがあります。

体力も使う。
気力も使う。
時間に追われる。
人手が足りない日もある。

余裕がなくなる日もあります。
優しくしたくても、優しくできない日もあります。

だからこそ、私は思います。

介護の仕事には、
技術だけではなく、
自分の心を守る力も必要なんだと。

続けるためには、根性だけでは足りません。

休むこと。
相談すること。
一人で抱え込まないこと。
できないことを、できないと言うこと。
自分の体調を無視しないこと。

難病を抱えながら働く私にとって、
これはとても大事なことでした。

無理をすれば、
頑張っているように見えるかもしれません。

でも、無理をしすぎて倒れてしまったら、
仕事は続けられません。

続けるためには、
頑張り方を変える必要がありました。

介護の仕事を続けていく中で、
私は介護福祉士の資格にも挑戦しました。

簡単ではありませんでした。

仕事をしながら勉強するのは大変でした。
体調が安定しない日もありました。
疲れて帰ってきて、参考書を開くだけで精一杯の日もありました。

正直、
何度も心が折れそうになりました。

「本当に自分に取れるのかな」

「今さら勉強して、間に合うのかな」

そんなことも考えました。

でも、ここまで介護の仕事を続けてきたからこそ、
形として残したい気持ちがありました。

未経験で入った自分が、
利用者さんに怒られたり、
救われたり、
失敗したり、
悩んだりしながら続けてきた日々。

その積み重ねを、
ちゃんと資格として証明したい。

そう思って、勉強を続けました。

そして、介護福祉士に合格したとき、
少しだけ自分を認められた気がしました。

難病になって、
働くことに不安を抱えて、
ハローワークで「難しいですね」と言われて、
悔しくて、
それでも自分で仕事を探して、
未経験で介護の世界に入って、
何度も向いていないと思って、
それでも続けてきた。

その積み重ねが、
ひとつ形になったような気がしました。

資格を取ったからといって、
急に立派な人間になるわけではありません。

今でも迷うことはあります。
失敗することもあります。
利用者さんへの対応で悩むこともあります。
職場の人間関係に疲れることもあります。

体調が悪い日は、
自分の体に腹が立つこともあります。

「もっと普通に働けたら」

そう思う日もあります。

でも、それでも、
あの頃の自分に言ってあげたいです。

「ちゃんと続いてるよ」

「逃げたわけじゃないよ」

「あなたなりに、よく頑張ってるよ」

働くということは、
ただお金を稼ぐことだけではないのかもしれません。

もちろん、生活のためにお金は必要です。

でもそれだけではなく、
誰かと関わること。
誰かの役に立てたと思えること。
自分の存在を少しでも認められること。

私にとって介護の仕事は、
そういうものを少しずつ教えてくれた場所でした。

難病になったことは、
今でもつらい出来事です。

できることなら、
病気になんてなりたくなかった。

病気にならなければ、
もっと違う人生があったのかもしれません。

でも、病気になったからこそ、
自分の弱さを知りました。

そして、弱さを知ったからこそ、
誰かの不安や痛みに、
少しだけ寄り添えるようになった気もします。

介護の仕事に出会ったこと。
利用者さんの言葉に救われたこと。
介護福祉士の資格を取れたこと。

どれも、病気になる前の自分には、
想像できなかったことです。

人生は、思い通りにはいきません。

むしろ、思い通りにいかないことの方が多いです。

でも、思い通りにいかなかった場所で、
思いがけない出会いや学びがあることもあります。

私は今でも、
強い人間ではありません。

体調に不安もあります。
将来の不安もあります。
仕事で悩むこともあります。

それでも、あの日の利用者さんの一言を思い出します。

「あなた、頑張ってるよ」

その言葉に救われた私は、
今度は誰かにとって、
そんな一言を届けられる人でありたい。

ハローワークで「難しいですね」と言われた私が、
悔しさをきっかけに自分で仕事を探し、
介護の仕事に出会い、
利用者さんに救われ、
介護福祉士という資格を取ることができました。

これがすごい成功物語なのかは、わかりません。

でも、少なくとも私にとっては、
自分の人生を少しだけ取り戻していく物語でした。

病気があっても、
不安があっても、
向いていないと思う日があっても、
それでも続けていく中で見える景色があります。

私はその景色を、
介護の現場で少しずつ見てきました。

そして今日も、
自分の体と相談しながら、
誰かの生活に少しだけ関わっています。

完璧ではないけれど、
それでもいい。

弱さを抱えながらでも、
人は誰かの力になれる。

そう思いながら、
私は今日も介護の仕事を続けています。


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